レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2005年07月01日
- 登録日時
- 2022/12/11 16:39
- 更新日時
- 2023/01/24 09:51
- 管理番号
- 遠野-2005-11
- 質問
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解決
遠野三山の祭神はなにか。
- 回答
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遠野三山は早池峰山、六角牛山、石上山で、それぞれの祭神は、早池峰神社の祭神は瀬織津姫、六角石神社の祭神は少彦名命と住吉四座(天照大神、宇佐明神、底筒中筒、神功皇后)、石上神社の祭神は富津魂命、伊邪那美命、倉稲魂命になる。
- 回答プロセス
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<所蔵資料からの調査>
【遠野三山】
「遠野くさぐさ 第一束」p15~p16 「來内村の神跡」より
里老相傳ふ昔伊豆大権現飛び來りて來内村に降臨し此処に鎮座ましましぬ(今伊豆神社と称す)後三女神を生み給ひしが(社地の梺に御産畠と呼ぶ地あり是其の誕生の址なり同しく少しく隔てて鍋田と呼ぶ水田あり元と泉の湧きたる処ここにて産湯を奉れる址なりと)此姉妹の三女神を早池峯六角牛石上の三山に鎮めまゐらす事となり(後略)。
「遠野物語」(大和書房 1972) p67 第二話(神の始)より
四方の山々の中に最も秀でたるを早池峰と云ふ。北の方附馬牛の奥に在り。東の方には、六角牛山立り。石神と云ふ山は附馬牛と達曾部との間に在りて、その高さ前二つよりも劣れり。大昔に女神あり、三人の娘を伴ひて此高原に来り、今の来内村の伊豆権現の社ある処に宿りし夜、今夜よき夢を見たらん娘によき山を与ふべしと母の神の語りて寝たりしに、夜深く天より霊華降りて姉の姫の胸の上に止りしを、末の姫眼覚めて窃に之を取り、我胸の上に載せたりしかば、終に最も美しき早池峯の山を得、姉たちは六角牛と石神とを得たり。(後略)。
上記の内容より、遠野三山は三人の女神が鎮座する早池峰山、六角牛山、石上山になる。
【早池峰山】
「定本附馬牛村誌」p420より
大同元年三月八日、来内村(今の上郷村の内)の藤蔵と云う猟師がこの山に猟にきて頂上に近い岩窟に泊ったところが、(中略)金色の光明目も眩むばかりの神霊の形相を拝した。 (中略) 同年五月四日、家を次男に譲って長男と共に大出に居を移し、早池峰山に登り五日に地をトして七尺余の神宮の建立に取りかかり、同年六月十八日に落成して遷宮を行った。
「定本附馬牛村誌」p292 本社早池峰神社の項より
草創は大同元年(八○六)で、来内村(今の上郷村の内)の猟師藤蔵(後に姓を始閣とす)が早池峰山頂に於いて神霊の霊容を拝して発心し、山道を開いてその年の六月十八日山頂に一宇を建立して神霊を祀ったのがこの神社の始まりである。(後略)
「遠野郷(遠野・宮守)のお寺とお社の沿革概要と日本仏教宗派別便覧」 p26より
早池峰神社の祭神は瀬織津姫
【六角牛山】
「遠野市史 第四巻」 p202~p203 六角石神社の項より
青笹町中沢字高屋の六角牛山のふもとに鎮座し、祭神は少彦名命で、例祭日は旧八月十五日である。「上閉伊郡志」によれば、大同年間(八○六~八○九)六角牛山を開き、六角牛の神霊を祀ったのが始まりで、次いで斉衡年間(八五四~八五六)円仁(慈覚大師)が宮寺として善応寺(真言宗、今は廃寺)を建て、法弟を別当にした。のち摂津国(兵庫県)一ノ宮の住吉四座の神を合祀したので俗に”住吉の社”と呼んでいる。(後略)
「上閉伊遠野釜石大槌神社誌」p82より
(前略)明治五年(一八七二)青笹村社となり社名を六角牛神社と神社局に届け出たところ、六角牛は寺の山号であるからふさわしくないと却下され、六角石神社と改称。早池峰山・石上山の二山の神と共に遠野三山と称せられる。
「遠野郷(遠野・宮守)のお寺とお社の沿革概要と日本仏教宗派別便覧」 p33より
六角石神社の祭神は少彦名命と住吉四座(天照大神、宇佐明神、底筒中筒、神功皇后)
【石上山】
「遠野市史 第四巻」 p186~p187 石上神社の項より
綾織町鵢崎(みさざき)字砂子沢の石上山のふもとに鎮座し、祭神は富津魂命(経津主命)でのち伊邪那美命、稲倉魂命をあわせ三柱である。(中略)文治年中(一一八五~一一八九年)、阿曾沼広綱(民部丞、藤原姓)が頼朝から閉伊郡を賜わり、入部の際勧請したという。 (中略) 石上はわが国の古い民間信仰の石神が転訛したものではないか、と考えられる。明治四十二年(一九○九年)三月、熊野神社(砂子沢鎮座)ならびに稲荷神社(石上神社付近に鎮座)を合祀した。
「遠野郷(遠野・宮守)のお寺とお社の沿革概要と日本仏教宗派別便覧」 p23より
石上神社の祭神は富津魂命、伊邪那美命、倉稲魂命
- 事前調査事項
- NDC
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- 神衹・神道史 (172 8版)
- 神社.神職 (175 8版)
- 参考資料
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- 伊能嘉矩 編著. 遠野くさぐさ 第1束. 遠野市立博物館, 2001. (博物館資料 375)
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柳田国男 著 , 柳田, 国男, 1875-1962. 遠野物語. 大和書房, 1972.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001219185-00 -
附馬牛村誌編集委員会 編 , 附馬牛村 (岩手県). 定本附馬牛村誌. 附馬牛村, 1954.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001222150-00 - 正一剛 編. 遠野郷(遠野・宮守)のお寺とお社の沿革概要と日本仏教宗派別便覧. 正一剛, 1985.
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遠野市史編修委員会 編修 , 遠野市. 遠野市史 第4巻. 万葉堂書店, 1977.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001493976-00 -
谷川健一 責任編集 , 谷川, 健一, 1921-2013 , 伊能, 嘉矩, 1867-1925. 日本民俗文化資料集成 第15巻. 三一書房, 1994.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002377500-00 , ISBN 4380945294 -
岩手県神社庁. 上閉伊「遠野・釜石・大槌」神社誌. 岩手県神社庁上閉伊支部, 2021.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I031948702-00
- キーワード
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- 遠野物語
- 神社 -- 遠野市
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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資料によって、石上神社の祭神は「稲倉魂命」(『遠野市史』『上閉伊「遠野・釜石・大槌」神社誌』)、「倉稲魂命」(『遠野郷(遠野・宮守)のお寺とお社の沿革概要と日本仏教宗派別便覧』)または両方(『綾織郷土誌』)記載されている。
遠野くさぐさは、「日本民俗文化資料集成 第15巻」(谷川健一 三一書房 1994)にも収録されている。
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000325576