レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年09月19日
- 登録日時
- 2023/10/29 13:21
- 更新日時
- 2024/02/05 11:53
- 管理番号
- 武蔵浦和-1-00170
- 質問
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解決
欧米にも日本の九九と同じようなもの(九九にあたるもの)があるのか知りたい。
- 回答
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欧米には、掛け算はもちろんあるが、「九九」にして覚えるようなことはない。
10×10や12×12といった「掛け算表」があり、それを見ればいいという考え方である。(10×10や12×12となるのは、欧米が10進法や12進法の考え方があるから。)
語学的にも、日本のような語呂合わせができるものではないので、掛け算表を25×25まで丸暗記することもあるが、「掛け算は覚えるものではなく“掛け算表”を見ればいいだけ。」という考え方のようである。
参考に回答プロセス中の〇がついた資料を提供した。
- 回答プロセス
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・所蔵資料を“かけ算”“九九”で検索
△411.1『かけ算には順序があるのか』高橋誠/著 岩波書店 2011年
p72~ 歴史上現れた九九 その3「西洋型(半九九)」
〇410.4『世界でいちばん素敵な数学の教室』永野裕之/監修 三才ブックス 2022年
p116 Q:「九九」は、世界共通なの?
A:語呂とリズムで覚えるのは日本独自の風習です。
p118「9×9までの「九九」を学校で習うのは、日本のほかにはあまりありません。」との記載あり。
・webcatplusで“世界のかけ算”を検索
○411.1『二桁のかけ算一九一九』かえるさん/[ほか]著 ライブドアパブリッシング 2005年
p110~111 米英九九事情「アメリカとイギリスでは、かけ算は二桁まで覚える。といっても、12×12まで。(略)英語にはこれといった暗記法の決定版がない。かけ算表は英語で「マルチプリケーション・テーブル」。1970年代にはアメリカでかけ算ソングも作られた。ABCでテレビ放映され人気となったその曲のタイトルは、ずばり「マルチプリケーション・ロック」」
p112 「2005年春、韓国で19×9の掛け算を覚えるための「19段ソング」というCDが売れているという新聞報道」
p114~115 仏独九九事情「フランス語で数を数えることはできるし、フランスにもかけ算はある。フランス語のかけ算は日本と同じく一桁どうしのかけ算がポピュラー。米英と同じく、とくに語呂で覚えるという方法はないらしい。ドイツには、他の国とちがって、大小2つのかけ算表がある。小学校低学年では、1から10までの数字どうしのかけ算で、日本の九九とほぼ同じ。高学年ではさらに、(略)20×10まで覚えることになる。」
・上記の『二桁のかけ算一九一九』に出てきた「大谷泰照」氏の著書を所蔵資料で検索
〇830.7『日本人にとって英語とは何か』大谷泰照/著 大修館書店 2007年
p20~「たとえば3×3=9は、…英語では Three times three is(are) nine.と読む。英語では一般的にそのための特別の省略・簡略化を行わずそのままの文章式を暗記するのに対して、(略)何らの簡略化もほどこさない長い英語の文章式の九九をそのまま覚えさせられている。(略)55%の学生が12×12まで、3%が13×13まで、さらに3%が15×15まで、そして18%が25×25までという気の遠くなるような九九を教わっている。(略)イギリスやカナダにおいても事情は大差がない」
・webcatplusで“欧米”“九九”を検索
〇830『英語で解く算数』イーメディア/編著 三修社 2004年
p20~21「英語では、日本の九九にあたるかけ算の表をthe multiplication table と言います。アメリカでは、「ピタゴラスの表」という12×12までのかけ算の表があります。」とある。その他「ボエティウスの表」という10×10の表(欧米かどうかの表記なし)があることと、「ドイツやフランスにも、かけ算の表は存在し、20×20に及ぶものもある。」との記述あり。英語での言い方の例文あり(2×1が2→Twice one are twoなど)。
・webcatplusで“ポエティウスの表”、“ピタゴラスの表”、“ドイツ&かけ算”で検索したが、質問にあう資料なし。
・webcatplusで“フランス&かけ算”→市外の図書館に次の資料があったので、相互貸借で借用
△『数の世界(学習科学図鑑シリーズ9)』矢野健太郎/著 藤田正純/絵 小学館 1967
p111 フランス農民のかけ算
P111~112 指を使ったかけ算の方法と図解。
・“ピタゴラスの表”をインターネットで検索
○410.4『数学が好きになる七つの話』船山良三/著 実教出版 2022年
p26~ ヨーロッパに「九九」はあるか
「イギリスの小学校の「さんすう」の本を調べたら、縦に1から10まで区切った升目に、積を書き入れた表が掲載してあった。わが国の「九九」のように、「ニニガシ」「ニサンガロク」という「ことば」による表現は見当たらなかった。(略)イギリスには、「九九」と同じものはないといってよい。ところで、12×12までの表もあるという。(略)イギリスといえば「ヤード・ポンド法」の保守国である。「ヤード・ポンド法」には12進の単位が多い。」
p31~ 「ピタゴラスの表」とは何か
「和伊辞典では、九九の表を「ピタゴラスの表(tavola pitagolica)」と訳してある。ギリシアの学問を研究していたボエティウスが著したラテン語による算術の入門書「算術教程(De institutone arithmetica)」は、イタリア半島のラテン世界で「ボエティウスの算術」と称して、大いに珍重されたもので、15世紀に重版したこの本には、インド・アラビア数字を使った「掛け算表(1×1から10×10まで)」が記載されている。」
p34に「図6 ボエティウスの掛け算表(1488年本)」が載っている。
p38「アメリカでは、掛け算は「表」を見てやればよい。「表」の数値を全部暗誦させるのは、無茶な教育という見解をもつのである。
○安藤毅「「九九」の拡がり」『北星論集(経)』第41号 March 2002 p79-101
「https://hokusei.repo.nii.ac.jp/records/1121(2023.11.18最終確認)」で全文閲覧可能。
p94~ 9.ヨーロッパの算術書 ウィッドマンの「掛け算表」の図あり。
p100 13.むすび 「ヨーロッパでは、その言語の構造が「九九」を唱えて覚えるのに適合しないこともあって、それが庶民に浸透するのはかなり遅れた。」
・算数に関する児童書の書架をブラウジング
△K411『数と計算(わけのわかる算数のはなし)』馬場良和/著 さ・え・ら書房 2002年
p52 九九 「かけ算のもとになるのは九九です。九九は千年以上もむかしに中国から日本に伝えられました。」との記載あり。
p55 「インドの小学校では二十までの九九も習うそうです。また12進法がいろいろな場面で残っているイギリスでは、12のだんまで習うとのことです。」
・“ピタゴラスの表”をgoogleブックスで検索
〇410『アリスと悟空の数学旅行』榊忠男/著 銀林浩/編 国土社 1995年
p62 イギリスの教科書の九九の表(『ピタゴラスの表』と呼んでいる)が載っている。
- 事前調査事項
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質問者の話では、「アメリカでは0から12であり、和英辞典では、単語ではなく文章で紹介されていた。」とのこと。
- NDC
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- 数学 (410 10版)
- 英語 (830 10版)
- 代数学 (411 10版)
- 参考資料
- キーワード
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- 九九
- かけ算
- ピタゴラスの表
- ボエティウス
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000340330