レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年12月22日
- 登録日時
- 2023/01/29 16:30
- 更新日時
- 2023/02/27 20:53
- 管理番号
- 県立長野-22-192
- 質問
-
解決
廿日出逸暁(はつかで いつあき)元千葉県立図書館長と乙部泉三郎(おとべ せんざぶろう)元県立長野図書館長に、個人的な親交があったか知りたい。「座談会 館界の敗戦前後」『図書館雑誌』第59巻第8号のp.36-45によると、二人は松本喜一(まつもと きいち)元帝国図書館長の両腕と呼ばれたらしい。
- 回答
-
当館資料を調べたが、廿日出逸暁と乙部泉三郎との個人的な関係は確認できなかった。昭和16年1月に長野県内で行われた研究会等に、講師として招いている。
『県立長野図書館三十年史』県立長野図書館編・刊 1959 【016.21/ケン】p.63-64の「読書指導への動き」の中で、昭和15年9月26-27日に行われた北信五県図書館事業研究会に、松本喜一帝国図書館長が列席し、講演があった。この内容は、『読書信州』第35号 1940 p.201-203に掲載されている。
さらに、昭和16年1月22日に行われた読書運動のあり方を研究する県下図書館事業研究会では、常会、青年団に対する図書館活動についての協議のほか、廿日出千葉県立図書館長の「新体制下の図書館」という講演があったと書かれている。この研究会の様子は、『読書信州』第39号 1941 p.225-227に掲載されているが、廿日出館長の講演内容の記載はない。昭和15年10月文部省主催中央図書館司書研究講習会が町村図書館指導を主題として千葉で開かれた際に、当館の武居司書が研究発表を行っているとあった。
また、『長野県中央図書館報』10号 1937 p.53-54に、昭和11年12月5日に当館で開催された第3回県下図書館協議会に、廿日出氏を招いており、「図書館と青年生活」と題した講演が掲載されていた。[国立国会図書館デジタルコレクション参加館・ 個人送信公開]
『長野県中央図書館報』7号 1936 p.31-34に、昭和10年11月20-21日に当県で開催された第2回北信五県図書館連合会総会に、松本氏が記念講演をしており、講演内容が掲載されている。[国立国会図書館デジタルコレクション参加館・ 個人送信公開]
また、『長野県中央図書館報』第16号 1939 p.84-87によると、昭和14年3月7,8,10日に県下3か所で行われた図書館教育講演協議会に、松本氏が講師として出席している。
『乙部泉三郎・県立長野図書館長 別冊』 新藤透編・解題金沢文圃閣 2019 【016.29/オセ/別】が、『乙部泉三郎・県立長野図書館長 1-2巻』の解題となっており、新藤透著「乙部泉三郎の生涯と農村図書館論・選書論・読書論」の第2章p.14-48に、乙部の図書館活動について年代を追ってまとめられている。章末のp.48には、帝国図書館長松本喜一の推挙で県立長野図書館に奉職したことに触れている。戦争末期の帝国図書館の疎開先として受け入れ表明したことも書かれている。
当時の時局の動きに準じた図書館活動も含めて、引き続き松本喜一帝国図書館長との繋がりがあったのかは、言及した資料がなく不明。『県立長野図書館三十年史』p.370-372に、乙部泉三郎著「昔の図書館を思う」があり、p.372に戦争末期のことに触れ、「長期戦を予想して、帝国図書館の蔵書中貴重なもの数万冊の疎開をうけた。これは戦争の結果いかんによっては帝国図書館の長野への移転をも予想したり口約したりしたものであったが、戦争は左前となり、帝国図書館の蔵書はさらに飯山高女に再疎開せねばならなかった。」と記している。この疎開計画が、松本氏との親交によるものか、松代大本営移転と同調したものかは、触れられていないため不明。
また、第31回全国図書館大会は、昭和12年6月に大連満鉄協和会館で行われている。『満州国図書館大会写真記録集成 別巻』 小林昌樹編・解題 金沢文圃閣 2020 【010.6/コマ/別】のp.7-58廿日出氏所蔵の「全国図書館大会之栞」が収録されている。この大会には、乙部も参加している。p.23-32出席者名簿に廿日出氏がつけたであろうチェック印があり、乙部の出席番号に×チェックがなされている。
問い合わせの座談会中の本文を見ると、松本喜一の両腕とあるが、有山氏が「外助の功」とも言っている。外側からという意味でとらえると、乙部泉三郎は県立長野図書館の運営政策として松本氏の理念を推し進めたという意図かもしれない。長野県内の研究会に何度も出席していたことからも窺える。ただし、廿日出氏と協力して、何か事業展開していたかまではわからない。
- 回答プロセス
-
<調査資料>
1 問い合わせの『図書館雑誌』で内容を確認する。
2 当館蔵書を「乙部泉三郎」および「廿日出逸暁」で検索する。自伝、評伝、研究論文等を調査するが、廿日出氏との親交に関する記述はない。
新藤透著「乙部泉三郎の生涯と農村図書館論・選書論・読書論」に松本氏との関係についての記述がある。
『いずみ』 乙部泉三郎先生追悼編集委員会編・刊 1978 【N289/オトベ】の巻末に略年譜があるが、本編ともに図書館を退職後の人生に重きを置いて書かれていた。
3 「廿日出逸暁」でヒットしたものに『満州国図書館大会写真記録集成』があった。確認すると、両人ともにこの大会に参加していたので、大会中の様子等を調べたが、親交があったかは確認できなかった。廿日出氏所蔵の「全国図書館大会之栞」に廿日出氏がつけたであろうチェック印を見つけたのみ。
3 当館所蔵の「乙部泉三郎関係資料」を確認した。この資料群には、草稿、書簡類は少ない。ほとんどが県内の読書団体の代表とのもの。また、遺族から寄贈された蔵書の目録を確認したが、廿日出氏の著作は含まれていなかった。
4 『県立長野図書館三十年史』を調べる。戦前の当館の方針や県内図書館への研修の様子が書かれている。松本氏を何回か招いており、昭和16年1月22日の県下図書館事業研究会に、廿日出氏を招いたとあったので、当時の図書館報である『長野県中央図書館報』及び『読書信州』の関係する時期のものを調べたが、廿日出氏については、詳細は書かれていなかった。
5 当館所蔵の郷土史関係の雑誌記事を調べたが、乙部泉三郎の図書館政策に関する記事は確認できなかった。
6 国立国会図書館デジタルコレクションで「廿日出逸暁 乙部泉三郎」で検索する。『長野県中央図書館報』10号 1937 p.53-54に、昭和11年12月5日に当館で開催された第3回県下図書館協議会に、廿日出氏を招いており、「図書館と青年生活」と題した講演がが掲載されていた。[国立国会図書館デジタルコレクション参加館・ 個人送信公開]
- 事前調査事項
- NDC
-
- 図書館.図書館情報学 (010 10版)
- 図書館政策.図書館行財政 (011 10版)
- 図書館経営・管理 (013 10版)
- 参考資料
-
-
県立長野図書館/編 , 県立長野図書館. 県立長野図書館三十年史. 県立長野図書館, 1959.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005647452-00 (【016.21/ケン】) -
新藤透 編・解題 , 新藤, 透. 乙部泉三郎・県立長野図書館長 : 農村町村図書館経営論 別冊. 金沢文圃閣, 2019. (図書館学遺産セレクション ; 3)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I030229887-00 , ISBN 9784909680648 (【016.29/オセ/別】) -
小林昌樹 編・解題 , 小林, 昌樹, 1967-. 満洲国図書館大会写真記録集成 : 附. 満洲朝鮮北支旅日記 別巻. 金沢文圃閣, 2020. (文圃文献類従 ; 37)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I030312219-00 , ISBN 9784909680396 (【010.6/コマ/別】)
-
県立長野図書館/編 , 県立長野図書館. 県立長野図書館三十年史. 県立長野図書館, 1959.
- キーワード
-
- 廿日出逸暁
- 乙部泉三郎
- 松本喜一
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土 人物
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000328104