以下の資料から、宇都宮市内には「八幡館」と「八幡荘」という旅館があったことを確認しました。
・『宇都宮市商工要覧 1950』(宇都宮市役所/編、発行 1950)
p.76-77「栃木縣旅館商業協同組合宇都宮支部」の項があり、「江野町」に「八幡荘」、「小幡町」に「八幡館」があったことを確認しました。
・『宇都宮市商工名鑑 昭和28年』(宇都宮市産業課/編 宇都宮市役所 1953)
p.253-257「第十六類 接客業関係 1.旅館」の項にも同様の情報があります。
また、調査の過程でグーグルブックスを検索したところ、以下の資料に「八幡屋」という宿の記述があることを確認しました。
・『宮崎市定全集 22』(宮崎市定/著,佐伯富〔ほか〕/編纂 岩波書店 1992)
p.425-426「馬廠長日記 昭和七年二月二十五日」の項があり、「夜半十二時頃、宇都宮に到着。人力車に乗りて町に入り宿を探すに、結城屋、八幡屋など、…(後略)…」と記述されています。
これにより、少なくとも昭和7年当時には「八幡屋」と呼ばれる旅館が存在していたことになり、昭和25年当時にあった八幡と名の付く二つの宿のうち、少なくとも1館は昭和7年から存在していたのではないかと予想されます。
『宮崎市定全集 22』の文脈から、この「八幡屋」は、「結城屋」と近い距離にあったと仮定して、過去の宇都宮市の地図を確認すると、「八幡館」が「八幡屋」に相当するようです。
八幡館及び結城屋の場所は、以下の地図より確認できます。
・『宇都宮繁昌図譜 絵図・ビラ・チラシ類で綴る明治・大正・昭和の賑い』(うつのみや・若草史料コレクション/編 藤田好三 1996)
p.64-65「あとがき」の背景として、昭和17年発行の「大日本職業別明細図 宇都宮市」が使用されています。
文字や図版が読みにくい部分もありますが、地図上に「旅館 八幡館」及び「旅館 結城屋」の表記が確認できます。
また、「旅館 結城屋」のすぐ近くには「割烹 結城屋」の表記もあります。
・『宇都宮市住宅明細地図 1958年』(日本地図編集社/編、発行1958)
p.16に「旅館 八幡館」、「結城屋」の表記があります。
・『宇都宮市住宅詳細図 1961年版』(三洋堂/編、発行1961)
p.22に「旅館 八幡屋」、「結城屋」の表記があります。
・『宇都宮市住宅詳細図 1962年版』(三洋堂/編、発行1962)
p.21に「旅館 八幡屋」の表記があります。なお、結城屋は「割烹 結城屋」と表記されています。
・『宇都宮市住宅案内図 1963』(日興出版社/編、発行1963)
p.15に「旅館 八幡屋」、p.14に「割烹 結城屋」の表記があります。
・『宇都宮市住宅案内図 新旧全市詳細図 1964』(日興出版社/編、発行1964)
p.15に「旅館 八幡屋」、p.14に「割烹 結城屋」の表記があります。
当館に所蔵のこれ以降の地図には、「八幡屋」を確認することはできませんでした。
なお、以下の資料は関連の記述を確認できませんでした。
・『宇都宮商工案内 昭和9年版』(下宇都宮商工会議所/編、発行 1934)
なお、結城屋については住所等簡易な記述が確認できました。
・『宇都宮繁昌記』(春圃居士/著 山内港三郎 1898)
・『最新 宇都宮誌 全』(宇都宮市教育会/著 内田濱吉 1908)
・『宇都宮市商工要覧 大正9年』(宇都宮市商業会議所/編、発行 1920)
・『宇都宮案内』(藤田日出雄/共編,秋山錦次郎/共編 三共社出版部 1930)
・『宇都宮市六十周年誌』(宇都宮市役所総務部庶務課/編 宇都宮市役所 1960)
・『宇都宮市史 第8巻 近・現代編2』(宇都宮市史編さん委員会/編 宇都宮市 1981)