レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年3月1日
- 登録日時
- 2021/12/12 12:51
- 更新日時
- 2022/04/26 21:38
- 管理番号
- 県立長野-21-193
- 質問
-
解決
全国の東照宮について知りたい。寺院をメインに、主だった所だけでなく小さい所まで知りたい。祀っている宗派、祀られていない宗派についても知りたいので、宗派毎に分けられているものがあればなおよい。祀られていない宗派についてはその理由も知りたい。
- 回答
-
次の資料に記述があったので紹介した。祀られていない宗派の理由については確認できなかった。
・『家康公と全国の東照宮』 高藤晴俊著 東京美術 1992 【175/143】
(1) 祀っている宗派について
「四 社寺境内の東照宮(1)寺院境内の東照宮」の項p78-100から、天台宗、浄土宗、臨済宗、真言宗、真言宗豊山派、華厳宗、妙心寺派を確認した。
(2) 祀られていない宗派については確認できなかったが、
p.4に「(前略)日蓮宗の僧は、浄土宗の増上寺では読経せずに久能山に登って読経したいと願い出たが、幕府はこれを認めず、いずれ日光山に遷座されるのでそのときに諷教するように、と回答している。(後略)」との記述を確認した。
また、p.194-195に「(前略)現在までに判明しただけでも、約六十社ほどが廃絶されている。(中略)廃絶しないまでも、今日その所在が確認されていない東照宮も多い。江戸期の資料で東照宮の存在が明らかなものでも、明治初年の神仏分離や、同四十年前後の神社統廃合の政策によって、移転したり他の神社に合祀されているが、合祀された後「神社明細帳」に記載されなかったり、多数の神社が合祀された為、逐一の祭神が忘れられてしまうケースもある。家康公を祭神としながら、東照宮を社名としていないところもある。これは、神仏分離令によって神社名や祭神名の変更が行われたとき、反徳川の時代風潮の影響を受け、東照宮の社名をはばかって改称したもので、なかには祭神名さえ変更したところもある。(後略)」との記述を確認した。
・『諸国東照宮の史的研究』 中野光浩著 名著刊行会 2008 【175.9/ナミ】
(1) 祀っている宗派について
第二部第四章「諸大名による東照宮勧請の歴史的考察」』p.245-247、第三部第一章「江戸の東照宮」
p.289-291、第二章第二節「東照宮所在調査の方法 表1『諸国御宮在之寺院記』の概要」p.317-338の記述から、天台宗、浄土宗、古義真言宗、新義真言宗、真言律宗、禅宗(五山派、大徳寺派、妙心寺派)、曹洞宗、時宗、日蓮宗、一向宗、本山修験、当山修験を確認した。
なお、『諸国御宮在之寺院記』は「東京国立博物館デジタルライブラリー『諸国御宮在之寺院記』[江戸末] 写」にて閲覧が可能。(最終確認2022年4月7日)
(2) 祀られていない宗派について
第三部第一章「江戸の東照宮 二 東照宮を祀る寺社の特徴」p.289に「(前略)日蓮宗は一つも見られないのが特徴である。(後略)」との記述を確認した。
また、第三部第二章「東照宮所在調査 おわりに」p.338に、「(前略)ここで注意しなければならないのは、『諸国御宮在之寺院記』の記述は内容が宗派によって偏りがあるため、宗派ごとの東照宮奉祀の状況がこの史料からだけでは分析することができないことである。(後略)」との記述を確認した。
・ 『民衆宗教史叢書第23巻 権現信仰』 雄山閣出版 1991 【162.1/ミン/23】
(1) 祀っている宗派について
村上直「東照大権現の成立と展開」p.239-294、高藤晴俊「日光東照宮の信仰について」p.295-311から、真言宗、天台宗、浄土宗、禅宗を確認した。
(2) 祀られていない宗派については確認出来なかったが、
村上直「東照大権現の成立と展開 社寺法度」p.275に、「家康は一大名の時代から社寺の統制と利用に力をそそぎ、(中略)家康の名で出された法度は(中略)宗派別にみると真言宗・天台宗・浄土宗・禅宗の順であり、日蓮宗は不受不施の問題がからんでいたため、家康の生前には公布されなかった。」との記述を確認した。
また、高藤晴俊 「日光東照宮の信仰について 三 東照宮への崇敬」p.307に「(前略)さらには徳川家縁故の神社・寺院に至るまで各地各所に東照宮が勧請創建された。日光東照宮において調査した諸国東照宮一覧(昭和二年刊『東照宮史』掲載)によれば、二一九社の家康奉斎神社が記されているが、すでにその当時から存否不明のものも少なからずあったようである。(後略)」との記述を確認した。
≪データベース≫
『東照宮史』は、国立国会図書館デジタルコレクションでインターネット公開されている為、Web上で閲覧可能。(最終確認2022年4月7日)
≪Web≫
全国東照宮連合會のHPに同会加盟神社の「東照宮全国リスト」が掲載されている。(最終確認2022年4月7日)
≪他館所蔵資料≫
『徳川家康公奉斎神社一覧:含寺院・小祠』全国東照宮連合会編 (栃木県立図書館所蔵(禁帯出))
≪レファレンス協同データベース≫
「栃木県立図書館の事例」に「日光東照宮には徳川家康・源頼朝・豊臣秀吉が祀られていると聞いた。豊臣秀吉は、いつ、どのような経緯で祀られることになったのか知りたい。」という質問があったため、参考までに紹介する。(最終確認2022年4月7日)
- 回答プロセス
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1 利用者が調査済みとのことであったが、『家康公と全国の東照宮』を調査し、東照宮とは家康公(東照大権現)を祀る神社という事を確認した。
2 当館蔵書をキーワード検索し、調査内容に合致しそうな本の目次及び本文を見る。その中から『諸国東照宮の史的研究』、『民衆宗教史叢書第23巻 権現信仰』を調査。
3 検索結果の出版者に「全国東照宮連合会」があったので、信州ブックサーチ及び国立国会図書館サーチで、キーワード「全国東照宮連合会」を検索。
4 インターネット検索サイトGoogleでキーワード「東照宮 全国」を検索し、全国東照宮連合會のサイトに「東照宮全国リスト」が掲載されている事を確認した。
5 レファレンス協同データベースでキーワード「東照宮 全国」を検索し、栃木県立図書館の事例を確認した。
<調査資料>
『東照宮』 岩宮武二ほか文 美術出版社 1963 【521.81/イタ】
『続神道大系 神社編 東照宮』 神道大系編纂会編集 神道大系編纂会 2004 【170.8/シン/4-3】
『全国寺院大鑑 別巻』全国寺院大鑑編纂委員会編集 法蔵館 1991 【185.03/ゼン//3】
『神社辞典』 白井永二編 東京堂出版 1979 【175/シエ】
『神君家康「東照宮縁起絵巻」でたどる生涯』 狩野探幽画 大阪城天守閣編 大阪城天守閣 2016
【721.4/カタ】
- 事前調査事項
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『家康公と全国の東照宮』
- NDC
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- 宗教史.事情 (162 10版)
- 神社.神職 (175 10版)
- 参考資料
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高藤晴俊 著 , 高藤, 晴俊, 1948-. 家康公と全国の東照宮 : 泰平と激動の時代を結ぶ東照宮めぐり. 東京美術, 1992.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002213354-00 , ISBN 4808705842 -
中野光浩 著 , 中野, 光浩. 諸国東照宮の史的研究. 名著刊行会, 2008.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000009994027-00 , ISBN 9784839003357 -
平岡‖定海. 民衆宗教史叢書 第23巻. 雄山閣出版, 1991.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005703930-00 , ISBN 4639002114 -
全国東照宮連合会 編 , 全国東照宮連合会. 徳川家康公奉斎神社一覧 : 含寺院・小祠. 全国東照宮連合会.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I106397575-00
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高藤晴俊 著 , 高藤, 晴俊, 1948-. 家康公と全国の東照宮 : 泰平と激動の時代を結ぶ東照宮めぐり. 東京美術, 1992.
- キーワード
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- 東照宮
- 宗派
- 徳川家康
- 東照大権現
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000308829