レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2019/10/29
- 登録日時
- 2021/02/25 00:30
- 更新日時
- 2021/02/25 11:44
- 管理番号
- 所沢狭山-2020-011
- 質問
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解決
大嘗祭(だいじょうさい)のとき、神饌(しんせん)の新穀を奉るよう卜定(ぼくじょう)によって選ばれる国が、なぜ“悠紀(ゆき)国”“主基(すき)国”と呼ばれるのか知りたい。
- 回答
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「ユキ・スキの語義は、聖なる酒を奉る国、ユキは聖域でスキは副の意とする説など諸説ある。」(『岩波日本史辞典』 永原慶二/監修 岩波書店 1999年より抜粋)とあります。
以下の資料に記載があります。
〇『大嘗祭』 工藤隆/著 中央公論新社 2017年
〇『大嘗祭と古代の祭祀』 岡田莊司/著 吉川弘文館 2019年
〇『岩波日本史辞典』 永原慶二/監修 岩波書店 1999年
〇『平凡社大百科事典 15』 平凡社 1985年
〇『図説天皇の儀礼』 新人物往来社 2001年
〇『大嘗祭と新嘗』 岡田精司/編 学生社 1979年
〇『神道史大辞典』 薗田稔/編 吉川弘文館 2004年
〇『上代祭祀と言語』 西宮一民/著 桜楓社 1990年
- 回答プロセス
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1.参考図書の確認
・『広辞苑』 新村出/編 岩波書店 2018年
p.1551 「すき 主基・須岐」の項に、「(次(すき)の意)大嘗祭で、西方に設けられる祭場。悠紀(ゆき)に次いでここで天皇が祭祀を行う。また、主基の国。」とあります。
p.1514 「しんせん 神饌」の項に、「神に供える飲食物。稲・米・酒・鳥獣・魚介・野菜・塩・水など。供物(くもつ)。みけ。」とあります。
p.2691 「ぼくじょう 卜定」の項に、「吉凶をうらない定めること。ぼくてい。」とあります。
p.2991 「ゆき 悠紀・斎忌・由基」の項に、「大嘗祭で、東方に設けられる祭場。また、悠紀の国。」とあります。
2.所蔵資料の内容確認
〇『大嘗祭』 工藤隆/著 中央公論新社 2017年
p.131-146 「3 ユキ・スキの語源論」の項に、以下の記載があります。
p.133「(前略)「ユキ」の語源は「斎酒」で、「神聖な酒」の意だとするのが一般的だ。(中略)また「スキ」は、「その国【ユキ国】に次いで斎酒を奉る国の意で次キノ国といわれたという」、(中略)「【ユキ国の】第二のものは主基(すき)という」、(中略)「悠紀(ゆき)の国についで新穀を奉る国」(中略)など、一般に「次」と同じ意味だということになっている。(後略)」
p.139-140「(前略)ユキ・スキのヤマト語音表記は、この天武天皇五年(六七六)の「斎忌・次」が初出であるが、ユキ・スキのスキを「次」と表記するのはこの事例だけである。(中略)『儀式』(八七二年以降成立)、『延喜式』(九二七年)において「悠紀・主基」という表記が完全に定着した。(後略)」
p.146「(前略)いくつかの状況証拠を組み合わせて考えれば、やはりユキ国は「神聖な酒」の原料の稲を献上する国、スキ国ももともとは「サ(神聖な)キ(酒)国」でやはり「神聖な酒」の原料の稲を献上する国として同格だったとするほうが、造酒児らの抜穂など現地での行事および稲それ自体の重視という点から見ても、より妥当性が高いのである。」
〇『大嘗祭と古代の祭祀』 岡田莊司/著 吉川弘文館 2019年
p.5に、「(前略)第一の国郡を悠紀(斎忌、清浄のこと)国といい、第二の国郡を主基(次、二番目のこと)国という。(後略)」と記載があります。
p.17-20 「四 大嘗祭儀の本旨」に、以下の記載があります。
p.17-18「(前略)悠紀は「斎忌」、主基は「次」にあてている。このことは一条兼良の『代始和抄』に明快な論述がある。(後略)」と記載があります。
〇『岩波日本史辞典』 永原慶二/監修 岩波書店 1999年
p.1161 「悠紀・主基 ゆき・すき」に、以下の記載があります。
「(前略)ユキ・スキの語義は、聖なる酒を奉る国、ユキは聖域でスキは副の意とする説など諸説ある。」
〇『平凡社大百科事典 15 』 平凡社 1985年
p.12 「ゆき・すき 悠紀・主基」に、以下の記載があります。
「大嘗祭における祭儀に関する名称。<ゆき>は斎忌、由基、<すき>は次、須伎などとも記す。(中略)ゆき・すきの語源については、ゆきは、斎酒、すきは悠紀の次の意とする説をはじめ各説がある。」
〇『図説天皇の儀礼』 新人物往来社 2001年
p.96-97 「斎田点定の儀」の項に、「(前略)悠紀・主基の意味については、さまざまな説があるが、共通するところは、共に斎み潔められた清浄を意味するということである。(後略)」と記載があります。
〇『大嘗祭と新嘗』 岡田精司/編 学生社 1979年
p.238に、「(前略)悠紀・主基の国といふのは、大抵、朝廷の近くの国である。そして、東は悠紀・西は主基とされる。(中略)大倭朝廷を中心として、其進路の前後を示したのであらう。或は、往き・過ぎの意かも知れぬ。(後略)」と記載があります。
3.記載のなかった資料
×『天皇と国民をつなぐ大嘗祭』 高森明勅/著 展転社 2019年
×『大嘗祭』 真弓常忠/著 筑摩書房 2019年
×『天皇・皇室を知る事典』 小田部雄次/著 東京堂出版 2007年
×『日本神祇由来事典』 川口謙二/編著 柏書房 1993年
4.本館による後日調査
〇『神道史大辞典』 薗田稔/編 吉川弘文館 2004年
p.997-998 「ゆき・すき 悠紀・主基」の項に、以下の記載があります。
「(前略)語義については多くの説があるが、ユキは聖域、スキは副次の意とする西宮一民説が妥当であろう。」
〇『上代祭祀と言語』 西宮一民/著 桜楓社 1990年
p.182-186 「二、「悠紀」「主基」の攷証」の項に、悠紀、主基について記載があります。
△『大嘗祭に見る日本の道』 伊藤誠治/著 新人物往来社 1991年
p.91-97 「大嘗祭の形」の項に、「(前略)悠基国(田)と主基国(田)という二国に対する解釈は諸学者によっていろいろです(後略)」と記載があります。
△『天皇の祭り』 吉野裕子/著 講談社 2000年
p.133-134 「1 スキ南斗供鐉説」の項がありますが、悠紀についての記載はありません。
△『「即位の礼」と大嘗祭』 歴史学研究会/ほか編集 青木書店 1990年
p.20-21 「悠紀・主基斎国の意義」の項はありますが、名称の説明はありません。
△『神道事典』 国学院大学日本文化研究所/編 弘文堂 1994年
p.179-180 「斎田」の項に、悠紀、主基の記述はありますが、説明はありません。
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本史 (210 9版)
- 神道 (170 9版)
- 語彙 (814 9版)
- 参考資料
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- 大嘗祭 工藤隆/著 中央公論新社 2017.11 210.091 978-4-12-102462-6
- 大嘗祭と古代の祭祀 岡田莊司/著 吉川弘文館 2019.3 210.091 978-4-642-08350-8
- 岩波日本史辞典 永原慶二/監修 岩波書店 1999.10 210.033 4-00-080093-0
- 平凡社大百科事典 15 平凡社 1985.6 031
- 図説天皇の儀礼 新人物往来社 2001.12 210.091 4-404-02794-X
- 大嘗祭と新嘗 岡田精司/編 学生社 1979 210.091
- 神道史大辞典 薗田稔/編 吉川弘文館 2004.7 170.33 4-642-01340-7
- 上代祭祀と言語 西宮一民/著 桜楓社 1990.10 814.6 4-273-02388-1
- キーワード
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- 悠紀
- 主基
- 大嘗祭
- 斎田
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 一般
- 登録番号
- 1000294143