レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 20190425
- 登録日時
- 2019/06/13 00:30
- 更新日時
- 2019/09/25 11:48
- 管理番号
- 0401000757
- 質問
-
解決
新元号「令和」の元となった万葉集の「梅花の歌 序」を書いたのは大伴旅人という説が多いが、山上憶良という説もある。それを唱えている人や文章・論文があれば知りたい。
- 回答
-
国立国会図書館デジタルコレクション(図書館送信限定)で調べたところ『高等學校漢文の學習 巻3』(漢文教育懇話會/編,杉山書店,1951年(永続的識別子info:ndljp/pid/2434480)の目次にp.300(163コマ)~「梅花歌序」(万葉集)とあり、作者は「山上憶良」と書かれていた。
該当の章には作者紹介や解釈も載っている。
しかしp.308(167コマ)に【作者の異論について】という項があり、「教科書には勇敢にも作者を山上憶良と明記してあるが、古来大伴旅人説が有力で筆者もそれに傾く」と書かれていて、旅人説の根拠が詳しく書かれており、旅人説を唱える学者名が載っていた。
それに続いて「憶良説を奉ずる学者としては、契沖・千蔭・雅澄・佐々木博士等がある」と書かれていた。
p.309(167コマ)からの参考書(参考文献)欄に上がっている資料の書誌情報から察するに契沖→儈契沖・千蔭→橘千蔭・雅澄→鹿持雅澄・佐々木→佐々木信綱、各氏であると思われる。
憶良説を唱える4学者名がわかったので上記のデジタルコレクションに載っていた「梅花歌序」と併せて、自館所蔵している4人の万葉集関連資料を調べて下記のように紹介した。
以下は、梅花の歌の序部分についての説明掲載部分
①『萬葉集略解 第5』(橘千蔭/著)
p.21~「此序ハ憶良の作れるならんと契沖いへり、さもあるべし」とあり
②『萬葉集古義 3』(鹿持雅澄/著)
p.342~「此序は、王義之が蘭帝記をまねびて、憶良の作れるなるべし」とあり
③『評釋萬葉集 巻2』(佐々木信綱/著)
p.226~「此の序文の作者には疑問がある。先づ「師老之宅」の「師老」を尊稱とみる時は「師老」は旅人のことを憶良もしくはその宴席に列せる人から云うたことになり、従つて、序の作者は旅人ではないことになる(黒川博士等)。また、師老を自稱と見る時は、旅人の作となる(武田博士等)。しかし「天平二年正月十三日」と云ひ、重ねて「于時初春令月」と云ひ、以下の叙景文も、宴主の筆としては著しく客観的である。思ふにこの序文は、強ひて作者の名を表はさず、合作の趣にとりなしたもので、従つて作者の名は審にし難いと云うたがよいであらう」とあり
④『萬葉集代匠記 第2輯 自巻5~至巻9』(契沖/著)p.46~「此序未詳誰之作」とあり
⑤『契沖全集 第2巻』(契沖/著)
この資料は『萬葉代匠記』の「初稿本」と「精撰本」とを合わせて収めてあり
p.55~「初:此序は憶良の作なるへし」「精:此序未詳誰之作」とあり
上記のように山上憶良説支持者として挙げられた4人の意見は自館所蔵の資料では、
儈契沖→最初は山上憶良の作と唱えたが、後に作者未詳としている
橘千蔭→契沖が山上憶良の作と書いている
鹿持雅澄→山上憶良作
佐々木信綱→誰が書いたかあえてわからないようにしていて、判断が難しい
と書かれているものを所蔵しており、全員が山上憶良が書いたと断定しているわけではなかった。
もしかすると契沖のように研究を進めていくうちに自論が変遷している場合もあることを断って依頼者への回答とした。
- 回答プロセス
-
山上憶良説の出どころを探すのに、インターネットで情報収集してみたが「山上憶良説もある」という記載はあっても、その根拠や出典が載っているものに出会えなかった。
自館所蔵を調べたところ万葉集に関する資料がたくさんありすぎて、手近にある資料から見てみたが、「梅花の歌の序」の作者は大伴旅人という説のものしかなかった。なお、自館所蔵の資料『山上憶良』『山上憶良の研究』(両方とも中西進著)については、依頼者自身が調査しているとのことで、こちらでは調査しなかった。
カウンターを離れて現物資料を当たることができなかったため、先にPCで調べられるだけを調べることにした。
まずは自館所蔵の万葉集研究図書の中から載っているのではないかという図書の目星をつけて、後で現物確認するために数種類選んだ。
次に雑誌記事・新聞記事・論文の各種検索をしてみたが有力なものを探し出せなかった。
国立国会図書館の資料も当たりたかったが、万葉集関連資料は莫大な量だったため保留。
ここまで調べてみて、新しい研究では大伴旅人説が多いことから、少し古い資料に山上憶良説があるのかもしれないと思い、古い資料を目次からも探せる国立国会図書館デジタルコレクションから探すことにした。
キーワードを「山上憶良」「梅」で検索したところ、目次の中に“「梅花歌序」(万葉集)山上憶良”と書かれている資料を見つけたので、内容を確認した。
また、回答に記入した通り山上憶良説を唱えている学者4人がわかったため、4人がそれぞれ書いた万葉集に関する図書を自館蔵書検索で調べて、所蔵していた資料の中も確認した。
依頼者には回答に記したデジタルコレクションの該当箇所と自館所蔵の図書5冊の該当ページを見せて回答とした。
- 事前調査事項
-
自館所蔵の「山上憶良」の著書はご本人が調査中
- NDC
- 参考資料
-
- 契沖全集 第2巻,契沖/著,朝日新聞社,1926年 (p.55|0111725156|/918.5/ケ/2)
- 萬葉集略解 第5,橘 千蔭/著,菱屋孫兵衛,1791年 (p.21|0114136070|/911.12/シュ/079800)
- 萬葉集古義 3,鹿持 雅澄/撰,精文館,1932年 (p.342|0111081907|/911.1/カ/)
- 評釋萬葉集 巻2,佐々木 信綱/著,六興出版社,1949年 (p.226|0111396040|/911.1サ/シュ/055743)
- 萬葉集代匠記 第2輯 自巻5 至巻9,契沖/著,早稲田大学出版部,1925年 (p.46|0111081634|/911.1/ケ/)
- キーワード
-
- 令和
- 万葉集
- 梅
- 梅の花
- 梅花
- 梅花の歌の序
- 序
- 山上憶良
- 著者
- 梅花の歌三十二首并せて序
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000257412