レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016年12月23日
- 登録日時
- 2016/12/23 11:32
- 更新日時
- 2017/01/15 11:15
- 管理番号
- ike_201604
- 質問
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未解決
大阪府池田市環境部農地緑政課ホームページの「細河の植木」の頁「植木の歴史」に「今から450年前の天文年間(室町時代末期1532年〜1555年)に山林用苗、桑苗作りから始まり…」と記載がある。池田の細河地区で桑苗作りが行われていたか知りたい。またその出典も知りたい。(池田市環境部農地緑政課ページ>業務内容>細河の植木 http://www.city.ikeda.osaka.jp/soshiki/kankyo/nochiryokusei/gyomu/1415930774031.html)
- 回答
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細河地区の植木は池田市の特産品として有名であり、稲沢(愛知県)、安行(埼玉県)、久留米(福岡県)と並んで日本四大植木生産地として知られている。
『大阪池田細河の植木』(1993年刊)p2「細河の植木のあらまし」や、『池田の農業'99 』p14「植木の歴史」に、「今から450年前の天文年間(足利時代1532年〜1555年)に桑苗、山林用苗作りから始まり接木の名人、六蔵(橘兵衛の名を賜る)によって植木栽培が盛んになり、延宝・元和年間には、多種多様の植木などを生産するようになりました。」と記述がある。しかし、当該資料には参考文献の記述がなく、桑苗栽培について出典の確認はできなかった。
桑の栽培に関する文献は今回の調査では確認できず、出典は不明と回答。
- 回答プロセス
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①館内OPAC検索(検索語:「細河」、「植木」)
②当館HP・郷土文献リスト「細河の植木」の項から関連資料を調査
③大阪府立中之島図書館の大阪文献データベースを検索(検索語:「細河」、「植木」など)
上記の①~③のプロセスから参考文献をあたる。
『新修池田市史 第2巻(近世編)』p360-369「細郷の植木業」に、「池田市域の北部にある細河地区は古くから植木業が盛んであった。この地域は近世細郷谷(ほそごうだに)とよばれ、猪名川支流の久安寺川の両岸に位置。この地に植木業が発生したのは戦国末期、あるいは正保期(1644-1648)といわれている(内田秀雄「池田の植木」)。『大日本産業事蹟』では天文期(1532-55)の戦国末期からとしている。細郷谷の村々は庭園用苗木の栽培を主におこなっており、当初は種まきから栽培を始めていたが、元禄期に牡丹の台木を得て、牡丹の接木法を発見。当地の植木業は飛躍的に発展したといわれる」とある。当該資料にある参考文献『池田の植木』、『大日本産業事蹟』を確認するが、桑苗栽培の記述はなく、細河植木のはじまりに関する記述のみであった。
◎以下の資料は桑苗栽培の記述はないが、細河植木の始まりについて記述があったもの
・『池田市史 各説篇』(池田市,1960)内田秀雄「池田の植木」p154
「細河植木の起り」に、細河植木の起源に関する古い第一史料が得られない。起りについては『産業事蹟』では天文の頃、『大阪府誌第3編』では正保年間からと、編さん物を参考に記述している。
・『日本産業史大系 第6:近畿地方篇』(東京大学出版会,1971)内田秀雄「池田の植木」p304
「植木の起源」に、『大日本地名辞書』に天文の頃より起る、『大阪府誌』には正保年間にはじまるとしているがいずれもその根拠は明らかでないと記述がある。
・『大阪府誌 第3編』(大阪府,1903)p652
細河村の植木は正保年間にはじまると記載あり。
・『大日本産業事蹟1』(平凡社,1987)p136
「摂津豊島郡植木の沿革」に、池田村植木の起こりについて天文年間と記述あり。
・『池田市細河農協七十五周年記念史』(池田市細河農業協同組合,1988)p215
「細河植木の起源」に、細河植木の栽培の起源について確かな定説は存在せず、16世紀半ばの天文の頃、あるいは17世紀半ばの正保の頃ともいわれていると記述がある。
・『池田郷土研究(池田郷土研究18)』(池田郷土史学会,2016)p56
「かわりゆく神田」に、明治の頃は猪名川堤防のあたりは桑畑であったと記述があるが、今回の調査に関連性はない。
④池田市HP「広報いけだ検索」(検索語:「細河」、「植木」)
「広報いけだ(平成2年(1990)8月1日号)720号」池田の植木紹介記事「450年の伝統誇る”池田の植木”」によると、「池田の植木の歴史は古く、約450年前の天文年間(室町末期)までさかのぼる。山林用苗、桑苗づくりから始まって、しだいに植木栽培が盛んになりました。」とある。(http://www.koho-ikeda.jp/kouhou/data/03_0431.pdf)(2016.12.23最終確認)これは上記の農地緑政課HPと同一記述であり、参考文献につながる記述もなかった。
⑤市史編纂室、池田市立歴史民俗資料館に問い合わせた。市史編纂室に、より古い資料として、1968年に発行された『細河の園芸』の所蔵があった。内容確認をしたところ『大阪池田細河の植木』とほぼ同一の記述で、参考文献の記述もなかった。
以上のことから、細河地区における桑苗作りに関しては確かな出典は見当たらず、地元の農協の発行物にしか記載がないことからも、「桑の栽培」は細河の植木の歴史に詳しい人が言い伝えで継承したことで、『細河の園芸』をまとめるさいにそれを記載したのではないかと推測される。
- 事前調査事項
- NDC
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- 農業史.事情 (612 9版)
- 参考資料
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- 【資料1】『大阪池田細河の植木』 池田市細河園芸農業協同組合∥編集,池田市 出版年記載なし,NDC612.163
- 【資料2】『池田の農業'99 』池田市市民生活部農園芸振興課∥編,池田市市民生活部農園芸振興課,1999,NDC612
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【資料3】『新修池田市史 第2巻』池田市史編纂委員会/編集.池田市,1999.NDC216.3
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I035860807-00 - 【WEB】池田市ホームページ「広報いけだ」 http://www.city.ikeda.osaka.jp/shisei/kohokocho/kohoikeda/index.html
- キーワード
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- 池田市
- 細河
- 植木
- 桑苗
- 照会先
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- 池田市立歴史民俗資料館
- 池田市教育委員会事務局生涯学習推進課(市史編纂室)
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000204663