参照事例
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=10000412501.『近代日本の公害問題』 小田康徳著 世界思想社 1983年刊 によると
第1章が「公害概念の形成」というタイトルで、初期の用法についての記述。
「公害」という言葉が使われた早い例として、明治13年9月29日付の大阪府布達天146号が挙げられている。これは、大阪における初期の工場立法の一つ「鋼折鍛冶湯屋三業取締法」(明治10年布達)の追加で、以下のような記述がある。
「開業出願の際若し近傍人家の内或ハ故障申立るもの有と雖も実地検査の上公害なしと認むれバ之を許可することあるべし(後略)」
また、明治14年の大阪府布達甲222号「大阪・堺市街商工業取締法」にも「公害」という言葉が使われている。ただ、この時期における公害という言葉の意味は、公衆にたいする迷惑や害を与えることであれば、すべて広く公害とよんでいたとみるべきである、とされている。
また、河川法は明治29年4月に公布され、その第4条に
「堤防、護岸、水制、河津、曳船道其ノ他流水ニ因リテ生スル公利ヲ増進シ又ハ公害ヲ除去若ハ軽減スル為ニ設ケタルモノ(後略)」
と、どちらかといえば自然災害の意味で公害という言葉を使っている、とある。もちろん、現在の「公害」が意味する問題が起こっていなかったわけではなく、具体的に煤煙問題とか鉱毒問題、あるいは煙害という言葉で表現されていたようである。
この本のP36に「公害という言葉は、戦後にもちこされ(中略)より深刻な意味をもってするどく再提起されるようになったのである」と記述。
2.一般的に使い出された時期と経緯
昭和30年刊行の『広辞苑』に「公害」という言葉は載っていない。
昭和44年刊の第2版にはあり。
1964年刊行の『現代用語の基礎知識』1965年版には「1963年増補語 日常用語」の欄に「公害」が掲載されている。
1962年刊行の1963年版にはなし。
昭和42年には「公害対策基本法」が制定された。
公害関係の資料を見ると昭和30年から40年代に公害問題が深刻化した、ということなので一般的に使われたのはこの頃からと推測されますが、具体的に使われだした経緯について記述した図書は見つからず。
※内容詳細
「河川法」は官報(明治29年4月)
「大阪府布達甲222号」は『大阪府布令集3』(PV:0000268193)
「大阪府布達天146号」は朝日新聞マイクロフィルム(明治13年10月2日)で確認できる。