レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013/08/03
- 登録日時
- 2013/09/07 00:30
- 更新日時
- 2013/11/02 17:58
- 管理番号
- 6000012422
- 質問
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解決
植物に関係した「長命草」という言葉についてわかる本はあるか。何かの柄であるようだ。
- 回答
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「長命草」は丁子と唐草を図案化した「丁子唐草」と呼ばれる文様のこと。この文様は鎌倉時代には五摂家などが用いる特別なものであった。
- 回答プロセス
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『広辞苑 第六版』(岩波書店)で「ちょうめいそう」あるいは「ちょうめいぐさ」を調べるが該当なし。
『日本国語大辞典9 ちゅうひ-とん』(小学館)を調べると、p104に「ちょうめいそう」の項目があり。「丁子唐草(ちょうじからくさ)」「タバコの異名」の2つの意味と、また近江彦根の方言では「つるな」を指すとの記載があり。丁子唐草についてはこの巻のp49に項目があり、丁子の実と唐草とを組み合わせた図柄とのこと、図案もあり。お探しの長命草はこちらと思われる。
丁子唐草について詳しく調べるため、727(図案一般)753(染織工芸)の書架を探す。『日本の意匠事典』(岩崎美術社)p251に江戸初期の丁子唐草文唐織の白黒写真があり。p277の「轡唐草(くつわからくさ)」の項に、有職文様の唐草には丁子唐草・轡唐草などがあり高位の人の袍につけられた」との記載があり。
『文様の事典』(東京堂出版)p190-191「丁子唐草文」には、丁子の花・蕾・葉を図案化したもので、鎌倉時代から近衛・九条・二条・一条・鷹司の五摂家が男子元服後の束帯の袍に用いた文様の一つとあり。江戸時代には将軍家が葵の丸文を散らして用いたともあり。
なお『文様の手帖』(小学館)p25には『日本国語大辞典9』p49と同様の記載があり。『日本文様図鑑』(東京堂出版)p7-8には、唐草文様の変遷について、すいかずらに似た忍冬唐草という蔓状の文様が古代エジプトからギリシャ・ローマ・中国の北魏を経て葡萄唐草や蓮華唐草・牡丹唐草などのかたちで日本に伝わり、蔓でない椿などの花も含めて唐草という文様となったとの記載があるが、丁子唐草についての言及はなし。
さらに『有識故実大辞典』(吉川弘文館)で丁子唐草を調べると、p44-45「異文の袍(いもんのほう)」に、大臣就任後に用いる位袍で、従来の位袍と異なる特殊な文様を用いた例として、西園寺家が丁子唐草を用いたとの記載があり。
次いで『日本衣服史』(芸艸堂)で鎌倉時代の服装について調べる。p140-145「有職異紋」に、各家門で任階の後用いる織文についての記載があり。丁子唐草については五摂家の鷹司家のものと廣橋家のものが紹介されているほか、西園寺家の長命唐草(ちょうめいからくさ)も鷹司家・廣橋家の織文と同様のものとして扱われている。図版はなし。
利用者は丁子の絵や写真が載っている本をさらに希望されたため、499(薬用植物)657(樹木)などの書架を探す。
『新訂牧野和漢薬草大図鑑』(北隆館)p333「チョウジノキ」に丁子の花と花序・花の後のがく筒(母丁香)・蕾である丁子のカラーイラストがあり。
『新訂原色樹木大図鑑』(北隆館)p527「チョウジノキ」に丁子の自然樹形と樹皮・葉・花(がく筒)などのカラーイラストがあり。
『ハーブ・スパイス館』(小学館)p422「クローブ」に、乾燥させる前と後の丁子の蕾や花などのカラー写真があり。
『観葉植物と熱帯花木図鑑』(清文堂新光社)p46「フトモモ科ユーゲニア属」に、丁子の蕾のついた枝のカラー写真があり。
- 事前調査事項
- NDC
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- 染織工芸 (753 9版)
- 参考資料
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- 『日本国語大辞典 第9巻』 小学館国語辞典編集部/編集 小学館
- 『日本の意匠事典』 岩崎 治子/著 岩崎美術社
- 『文様の事典』 岡登 貞治/編 東京堂出版
- 『有識故実大辞典』 鈴木 敬三/編 吉川弘文館
- 『日本衣服史』 永島 信子/著 芸艸堂
- 『原色牧野和漢薬草大圖鑑』 三橋 博/旧版監修 北隆館
- 『原色樹木大圖鑑』 林 弥栄/旧版監修 北隆館
- 『ハーブスパイス館』 小学館
- 『観葉植物と熱帯花木図鑑』 日本インドア・グリーン協会/編 誠文堂新光社
- キーワード
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- 長命草(チョウメイソウ)
- 丁子唐草(チョウジカラクサ)
- 文様(モンヨウ)
- 図案(ズアン)
- 有職故実(ユウソクコジツ)
- 鎌倉時代(カマクラジダイ)
- 丁子(チョウジ)
- クローブ(クローブ)
- 薬用植物(ヤクヨウショクブツ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- なお、豊中市近隣で丁子の木が見られるところを探し、熱帯花木室のある咲くやこの花館http://www.sakuyakonohana.com/ に問い合わせたが、同館には丁子の木はないとのこと。京都市左京区の武田薬品工業株式会社京都薬用植物園http://www.takeda.co.jp/kyoto/ には丁子の木があること、大阪府枚方市の摂南大学薬用植物園http://www.setsunan.ac.jp/~p-yakuso/ には標本園があり亜熱帯地域の薬用植物等を栽培していることをお知らせいただいた。両園のサイトを確認し、武田薬品工業株式会社京都薬用植物園の2013年初秋の研修会(一般公開)の申込締切は2013年8月20日であること、摂南大学の公開日と丁子があるかどうかは問い合わせが必要であることを利用者にお伝えした。
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 一般
- 登録番号
- 1000136792