レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2012年01月24日
- 登録日時
- 2012/05/22 12:15
- 更新日時
- 2012/05/22 14:43
- 管理番号
- 9000007913
- 質問
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解決
山水画「漁樵問答」の掛け軸を所有している。中国の古い話のようなのだが、どのような話か知りたい。
- 回答
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『中国学芸大事典』(近藤春雄著 大修館書店 1980年)によると、「漁樵対問(ぎょしょうたいもん)」は宋の邵雍(しょうよう)の撰。みずから漁樵に託してその抱負を述べたもの。漢籍は早稲田大学図書館古典籍総合データベース( http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/ ※2012.01.21最終アクセス)で「説郛」巻8収載のものが閲覧できる。日本語の全訳は見つからなかった。その他、参考資料については照会資料をご確認下さい。
- 回答プロセス
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1.『中国学芸大事典』(近藤春雄著 大修館書店 1980年)を見ると、「漁樵対問(ぎょしょうたいもん)」の項があり「一巻。宋の邵雍(しょうよう)の撰。みずから漁樵に託してその抱負を述べたもの。百川学海一・説郛八所収。」とあった。
2.自館システムで「百川学海一」「説郛」を検索するが未ヒット。国立国会図書館サーチ( http://iss.ndl.go.jp/ )で「漁樵対問」「漁樵問答」「百川学海一」「説郛」を検索するが、図書の検索は未ヒットだった。
3.漢籍について調査。
・『山梨県立図書館所蔵漢籍目録』(山梨県立図書館編・発行 1987年)に掲載はなく当館では未所蔵であることから、一般公開されているデジタル化資料を探すと、早稲田大学図書館古典籍総合データベース( http://www.wul.waseda.ac.jp/kotenseki/ )の『説郛』[正]巻第8(陶宗儀纂)の32-49コマに「漁樵対問」の掲載があった( http://archive.wul.waseda.ac.jp/kosho/i12/i12_00006/i12_00006_0010/i12_00006_0010.pdf )。※webサイトについては2012.01.21最終アクセス。
4.禅問答であるとのことだったので、禅宗の関係資料を調査。
・『禅学大辞典』上巻(駒沢大学内禅学大辞典編纂所編 大修館書店 1978年)に「魚礁」の項があり「漁師ときこり。隠者にたとえる」とある。また「漁樵録」の説明に「書名は、屈原が漁夫に、また邵子が漁師と樵夫に託して自己の清廉潔白を語ったのにならったもの」との記述があった。
5.長唄について確認。
・『日本音曲全集』第1巻 長唄全集(緑蔭書房 1987年)[資料番号0100742808]p368-370に「漁樵問答」の掲載あり。浦島太郎のような内容の歌詞であった。
6.「漁樵問答」を題材にした絵画について、『日本美術作品レファレンス事典 絵画篇 近現代(日外アソシエーツ編・発行 1992年)『日本美術作品レファレンス事典 個人美術全集・絵画篇 1 日本画』日外アソシエーツ編・発行 2011年)等により、次の所蔵資料を確認した。
・『水墨美術大系』第15巻 近代の墨絵(講談社 1978年)[資料番号0101760031]→p156図111小杉放菴「漁樵問答」。p179の解説には参考となる記述なし。
・『小杉放菴画集』(小杉放庵著 日本経済新聞社 1987年)[資料番号0101769099]→図83「漁樵問答」。解説なし。
・『田中一村作品集』(田中一村画 日本放送出版協会 2001年)[資料番号0103973517]→図43、図44「漁樵対問」。作品解説なし。
・『横山大観』第1巻(横山大観画 大日本絵画巧芸美術 1979年)[資料番号0101761120]→p205「漁樵問答」。作品解説なし。
・『鉄斎大成』第1巻(富岡鉄斎画 講談社 1976年)→図42「漁樵問答図」の解説p383「賛は北宋の学者で隠逸の士でもあった邵雍の『漁樵対問』の一節。樵夫と漁師との問答に託して、己れの力以上のことをすると身をそこねる、人は分に応じて事をなすのが賢明である、と説いたもの」、図54「漁樵閑話図」の解説p384「賛は宋の易学者邵雍(堯夫)の『漁樵対問』の文を録する。その大意は「魚を釣るには竿・綸(いと)、浮、沈(おもり)、鈎(はり)、餌の六物を具えなければならぬ、その中の一つでも欠ければ魚は釣れぬ、しかし、六物が全部そろっても、魚の釣れぬ場合もある。それは天運がしからしめるのだ、人がある事をなすには、勿論全力を尽くさねばならぬが、事の成否は天運次第だ」という意。」、図108-109「漁樵問答図」の解説。「右隻賛は宋の学者邵雍の『漁樵対問』の中の、樵夫と漁師の問答にかりて、人は己の力に応じた仕事をすべきであると説く文、第42図と同じ文である。左隻も同じ『漁樵対問』の文で、大意は第54図と同じ。
・『鉄斎大成』第2巻(富岡鉄斎画 講談社 1976年)[資料番号0101761963]→図112-113「漁樵対問図」の解説(p412)は邵雍の『漁樵対問』とはあまり関係なし。
7.中国の昔話の掲載資料を確認するが、該当の物語は見つからなかった。
8.インターネットの検索エンジンにより、柳田国男の「火の昔」の中に「漁樵問答」という文章があることが分かり確認。
・『柳田國男全集』第14巻(柳田国男著 筑摩書房 1998年)[資料番号0103674669]→p433-437に「漁樵問答」あり。「支那でも漁樵問答と称して、山から薪を売りに来た老人が、海川の魚類を担って来る者と行逢って、路の傍で話をして居るところを絵にしたものが、夙くからもてはやされて居ります」などの記述があった。
- 事前調査事項
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インターネットの検索エンジンで「漁樵問答」は調査済みだが、あまり出てこなかった。漁師と樵(きこり)による禅問答で、明治10年頃長唄にもなっている。
- NDC
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- 小説.物語 (923 9版)
- 参考資料
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- 『中国学芸大事典』(近藤春雄著 大修館書店 1980年) (p142)
- 『禅学大辞典』上巻(駒沢大学内禅学大辞典編纂所編 大修館書店 1978年) (p233)
- 『鉄斎大成』第1巻(富岡鉄斎画 講談社 1976年) (383,384,391)
- キーワード
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- 「漁樵対問」
- 「漁樵問答」
- 漁師
- きこり
- 中国
- 邵雍
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- ・邵雍の漢詩集『伊川撃壌集(中国古典新書)』(邵雍著 明徳出版社 1979年)[資料番号0101424497]を所蔵。
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 東洋文学
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000106376