レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2010年11月25日
- 登録日時
- 2010/11/25 15:46
- 更新日時
- 2023/01/05 12:12
- 管理番号
- 愛知県図-03001
- 質問
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解決
相撲関係で使われる「どすこい」について、その意味とどういう時に言うのかを知りたい。
- 回答
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「どすこい」とは、相撲甚句の合いの手やかけ声であり、一説には「大きい・太い」という意味の方言であるとされている。相撲甚句は、花相撲や巡業などで余興として歌われている。
「どすこい」について調査すると、以下の記述が見つかった。
【資料1】p.1229に「相撲甚句のかけ声。かつては『どっこい!どっこい』であったが、東北・北海道出身の力士が多いところから、それがなまり、第二次世界大戦後ぐらいから変わったという。」
【資料3】p.141に、「相撲甚句で合いの手としてかけられる掛け声。はじめは『どっこい、どっこい』といっていたが、しだいになまって『どすこい』というようになった。」とあり、【資料1】と同様。
【資料4】p.146に「相撲甚句の中の合いの手としていわれる掛け声。もとは『どっこい』という掛け声だったが、しだいに訛っていったようだ。」と、同様の記述がある。
また「どすこい」が言われるとされる「相撲甚句」については、以下の記述が見つかった。
【資料2】p.1072に「民謡の一種。相撲取りの世界で次第に確立した歌で、江戸時代末期から明治時代まで全国的に流行したもので、現在も残る。…花相撲や巡業などの余興として歌われる」
【資料4】p.111に「巡業や花相撲などにおいて、6人前後の力士たちによって余興として歌われる相撲独特の唄のこと。…(引用省略)…合間に『どすこい、どすこい』の掛け声が入る。」
さらに「どすこい」の元となったとされる言葉「どっこい」については、以下の記述が見つかった。
【資料1】p.1256に「力を入れたり、はずみをつけて何かをしたりするときの掛け声を表すことば。」
【資料5】p.145~146「一般的には力を出す直前の掛け声として使用される。それに対しドスコイは、大きい、太いなどの意味で…(引用省略)…福井、愛知、三重、和歌山、大阪など、西日本の方言として使われている。」とある。また、大正時代まで相撲の興行を行う組織が東京(江戸)相撲と大阪相撲に分かれていたが、その大阪相撲で「恐らく…(引用省略)…大きいとか太いの意味と、ドッコイを合わせて考え出した造語ではないだろうか」とあり、「大きい」や「太い」の方言が元となった造語であろうという説を紹介している。
最後に方言についても調査すると、以下の記述が見つかった。
【資料6】p.1663「どすこい」の項に「②大きい。太い。」とあり、愛知県宝飯郡(現在の三河地方の一部)、大阪府東成郡、奈良県宇陀郡、和歌山県那賀郡・伊都郡等の方言だという記載がある。
【資料7】p.491「ドスコイ」の項に「どえらい。大きいの強め」
愛知県の方言とされているので、さらに調査を進め、【資料6】の出典である【資料8】を参照すると、p.10~24「地方別方言調」で、「極稀に用ふるもの」として、南設楽郡新城小学校(男子)の調査において「大きいでかい」の意味で「ドスコイ」を使う結果が報告されている。また、「調査地」南設楽郡・豊橋市・宝飯郡・渥美郡での調査においても「大きい」の意味で「極稀に用ふるもの」として「ドスコイ」が挙げられると言う結果報告がされている。
この【資料8】では、東三河の広い地域で「大きい」の意味で「ドスコイ」が使用されていたことがわかるが、発行が昭和8年であり、この資料以外では確認ができなかった。(【資料9】p.266および【資料10】p.251に「どっこいしょ」についての記載はあり。)
- 回答プロセス
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1 まず語句の意味を【資料1】【資料2】で調べた。
2 次に相撲に関する辞典(788.1)を参照したところ、【資料3】、【資料4】が見つかった。
3 「相撲甚句」のかけ声であることがわかったため「相撲甚句」で蔵書検索を行ったところ【資料5】がヒットした。また、方言についての記述があったことから【資料6】、【資料7】を調査し【資料5】の内容について確認した。
4 【資料6】に愛知県の方言についても記載があったため、内容確認のために、【資料6】の原資料である【資料8】を調査。さらなる裏付けのために愛知県の方言に関連する資料を調査するも、確認できなかった。
- 事前調査事項
- NDC
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- 相撲.拳闘.競馬 (788)
- 伝説.民話[昔話] (388)
- 方言.訛語 (818)
- 参考資料
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【資料1】 日本国語大辞典第二版編集委員会, 小学館国語辞典編集部 編 , 小学館. 日本国語大辞典 第9巻 第2版. 小学館, 2001.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003029320-00 , ISBN 4095210095 (自館資料コード:1108036022) -
【資料2】 日本国語大辞典第二版編集委員会, 小学館国語辞典編集部 編 , 小学館. 日本国語大辞典 第7巻 第2版. 小学館, 2001.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003020831-00 , ISBN 4095210079 (自館資料コード:1108014491) -
【資料3】 沢田一矢 編 , 沢田, 一矢, 1935-. 大相撲の事典. 東京堂出版, 1995.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002495468-00 , ISBN 4490103867 (自館資料コード:1106859792) -
【資料4】 福家聡子 著 , 木村銀治郎 監修 , 福家, 聡子 , 木村, 銀治郎 3代目, 1974-. 大相撲語辞典 : 相撲にまつわる言葉をイラストと豆知識でどすこいと読み解く. 誠文堂新光社, 2018.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I028845856-00 , ISBN 9784416518267 -
【資料5】 花筏健 著 , 花筏, 健, 1941-. 相撲甚句物語 : ルーツを求めて. 現代書館, 2004.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004329370-00 , ISBN 476846856X (自館資料コード:1108455253) -
【資料6】 尚学図書 編 , 尚学図書. 日本方言大辞典. 小学館, 1989.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001969197-00 (自館資料コード:1105030230) -
【資料7】 牧村史陽 編 , 牧村, 史陽, 1898-. 大阪ことば事典 新版. 講談社, 2004.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007554709-00 , ISBN 406212386X (自館資料コード:1108680355) -
【資料8】 愛知県豊橋第二中学校校友会 編輯 , 愛知県豊橋第二中学校校友会. 東三河方言の調査. 愛知県豊橋第二中学校校友会, 1933. (豊友特輯郷土研究号 ; 第1輯)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I074854592-00 (自館資料コード:1111183656) -
【資料9】 鈴木勝忠 著 , 鈴木, 勝忠. 東海の言葉辞典. 名古屋泰文堂, 1969.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I071661903-00 (資料コード:1111308090) -
【資料10】 杉浦久雄 , 杉浦, 久雄. 続 牟呂 の 方言 : 愛知県 豊橋市 の 海辺 の ことば. 杉浦久雄, 1990.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I096730351-00 (資料コード:1105725239)
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【資料1】 日本国語大辞典第二版編集委員会, 小学館国語辞典編集部 編 , 小学館. 日本国語大辞典 第9巻 第2版. 小学館, 2001.
- キーワード
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- どすこい
- 相撲甚句
- 民謡
- 大阪相撲
- 合いの手
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000074194