翻訳公開年の一番古いものは雑誌「国民之友」に掲載された『名曲「クレーツェロワ」』であり、府立中央図書館では『明治翻訳文学全集 38 新聞雑誌編 復刻 トルストイ集 1』で読むことができる。
以下の資料を検索した。
1.『明治・大正・昭和翻訳文学目録』(国立国会図書館/編 風間書房 1959.2)
第Ⅱ部 明治元(1868)-明治45(1912)には図書以外に新聞・雑誌掲載分も収録されており、p723、明治28年8月の欄に 「クレーツェロウ」 トルストイ(作) 小西増太郎・尾崎紅葉(訳)で雑誌「国民之友」に掲載されたという内容の記載がある。続いて、明治29年2月の欄に「名曲クレーツエロフ」 トルストイ(作) 小西増太郎・尾崎紅葉(訳)で民友社から出版された「国民小説」第六に所収されているという内容の記載がある。
2.『小西増太郎・トルストイ・野崎武吉郎-交情の軌跡』(太田健一/著 吉備人出版 2007.4)
巻末に関係略年表があり、p261に明治28年8.23~12.7 小西、尾崎紅葉と共訳発表「名曲クロイツェル・ソナタ(トルストイ作)」(『国民之友』第260~262、264、266、267、270、271、273号)と記されている。
3.上記2の「国民之友」に発表された作品は『明治翻訳文学全集 38 新聞雑誌編 復刻 トルストイ集1』(川戸道明・榊原貴教/編 大空社 1997.10)p259~327に『名曲「クレーツェロワ」』として復刻・収録されている。
4. 『トルストイ展』(江川卓/ほか編 朝日新聞東京本社 1966)
p72~79「日本におけるトルストイ 木村毅/著」という論文の”2.国民之友の功績”という項(p73)に”・・・この訳稿の小西増太郎は・・・明治28年日本に帰った際本国では禁止になっている「クロイツェルソナタ」の謄写版刷りをもたらし、それから訳したということで俄然(がぜん)この編は、読書界に異常な好奇心と関心をよびおこした。・・・”
5. その他『図説翻訳文学総合辞典 1~5』(川戸道明・榊原貴教/編著 大空社 2009.11)、『翻訳図書目録 明治・大正・昭和戦前期 Ⅲ』(日外アソシエーツ 2007.1)を参照した。
また、参考までに中之島図書館所蔵の雑誌「文学」(岩波書店)47(3)、47(4)、47(10)1979年3・4・10月に”明治期のトルストイ受容 上、中、下”柳富子/著が収録されている。(CiNii NII論文情報ナビゲーター(2010/3/9現在)で”トルストイ+受容”で検索)