レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2003年06月04日
- 登録日時
- 2007/10/04 16:21
- 更新日時
- 2014/03/18 15:52
- 管理番号
- K07-010
- 質問
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解決
絵葉書の中に『源氏物語』の「帚木」の巻名と帚木の図があった。帚木を確かめて見てみたい。樹木図鑑などに写真が掲載されていないかどうか調べて欲しい。
- 回答
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長野県阿智村のHPにある「ははき木」(檜の老木)の写真を御案内した。
- 回答プロセス
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『広辞苑』の「帚木」の項目に「ホウキグサ」の別称。「信濃の薗原にあって、遠くから見るとあるように見え、近くに寄ってみると形が見えないという伝説の木」と記載されている。
インターネットで検索したところ、アカザ科ホウキギ属の一年草で、学名がkochia scoparia、和名「ホウキギ」と判明。
当館所蔵の『原色日本植物図鑑』草木編Ⅱ離弁花類p290に文章があり、図61に図の掲載があるが、他の植物とともに描かれているためわかりにくい。
インターネットで「ホウキギ」「ホウキグサ」と検索すると、写真つきで紹介しているHPが多数あるので、見ていただくように御案内した。
しかし、利用者より、探しているものとは違うとの連絡があり、再調査。
長野県阿智村(薗原がある村)のHPを検索したところ、「檜の老木」と判明。
- 事前調査事項
- NDC
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- 裸子植物 (478 9版)
- 参考資料
- キーワード
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- 帚木
- ホウキギ
- ホウキグサ
- 檜
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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他機関より、下記の情報を頂きました。(2014年3月8日)
①「日本古典文学全集12(源氏物語一)」(小学館)p187に
「帚木は信濃国(長野県)の伝説に、同国下伊那郡の「園原伏屋」の森にあった木」とあります。
②「源氏物語大辞典」(角川学芸出版)p1097に
「信濃国の園原の伏屋の森に生えていたと言われる伝承の木。箒のような形をしている木で、遠くからは確かに見えるが、近寄るとほかの木とまぎれて見えなくなってしまうという。(略)光源氏と空蝉の間で交わされた贈答歌はこの和歌を踏まえて、空蝉が帚木にたとえられている。」とあります。
③「源氏物語事典」(春秋社)p295には源氏物語に登場する植物の説明があり、
「帚木(非実在の植物で、蜃気楼の現象によって帚のように見えるもの)」と記述されています。
④「古今・新古今の花」(松田修/文 光書房)p122には
「伝説のハハキギが何を指すか明らかではない」「土地の伝承ではハハキギは天照大神以来の神木として祭ったといい、現在はヒノキを植えて記念している。(略)その木が何であったか、今これを推定することはできない。」との記述があります。
⑤「日本巨樹名木大事典4」(大空社)p608には「園原の箒木」の項があり
源氏物語に関する記述はないものの、伝説が記載されており、昭和34年の伊勢湾台風で折れ、株だけ残す状態となったので地元の保存会で2代目の桧を植えて保護している旨の説明があります。(写真はなし)
⑥「古典の中の植物」(金井典美著 北隆館)p8-18にわたり帚木について詳しく考証した記述があります。
「今日神坂峠にヒノキの老木を帚木として名所にしてあるが、その木が伝説化したとはもちろん思われず、実体はよくわからないのである。(略)しかしその存在が園原に固定していることから考えれば、ある時期にこうした伝説を生む何らかの木が実在したものではなかったろうか。」とあります。
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 特別利用者
- 登録番号
- 1000037976