レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2012年11月19日
- 登録日時
- 2012/11/29 20:40
- 更新日時
- 2020/04/28 15:38
- 管理番号
- 12-22
- 質問
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未解決
長野県松本市において、(例えばお店などで)「長野県の○○」ではなく「信州の○○」と書かれているのはなぜか?歴史的、もしくは地理的背景があるのか。
- 回答
-
回答プロセス参照
- 回答プロセス
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質問者は、既に「松本市HP」や『松本市史』( "松本市" ; 上巻, 下巻. 松本市, 1933 )
を閲覧し、現地調査も行ったが、全く手がかりがつかめなかった、との事。
①まずは自館OPACにて「信州」「長野」「松本」「歴史」などをキーワードに検索。
→以下の資料がヒットした。
『長野県の歴史』( 塚田正朋著.山川出版社, 1974 (県史シリーズ ; 20) )
『長野県の歴史』( 古川貞雄 [ほか] 著. [新版]. 山川出版社, 1997. (県史 ; 20) )
『図説長野県の歴史』
( 古川貞雄責任編集 ; 古川貞雄[ほか]執筆. 河出書房新社, 1988. (図説日本の歴史 / 色川大吉[ほか]監修 ; 20) )
上記資料を使い長野県の歴史を調査。
→明治4年(1871)7月の廃藩置県によって同年11月、長野県・筑摩県が成立。
県の構成は以下の通り。
長野県(東北信):長野県、上田県、飯山県、岩村田県、須坂県、松代県、小諸県、椎谷県
筑摩県(中南信・飛騨):松本県、伊那県、高島県、高遠県、飯田県
『図説長野県の歴史』に以下の記述あり。
「長野・筑摩両県の成立は、その後長く続く南北対立の近代における出発ともなった」
「長野県の歴史の中で、南北対立は大きな比重を占めている」
→長野県内での南北対立が、今回の質問に何らかの関連があるかもしれない。
②質問の主旨からは外れてしまうかもしれないが、
「そもそも、なぜ長野県の歴史の中でも大きな比重を占めるほどの南北対立が起こったのか?」
を調査してみる。
→府県の統合が騒がれていた明治9年(1876)6月に、筑摩県庁が火災で全焼。
この火災をきっかけに同年8月、筑摩県が長野県に統合され、『長野県』が誕生。
県庁も長野町に置かれた。
→火災の発生したタイミングから、筑摩県側は「長野県側が筑摩県庁を放火した」と憶測。
結局真相は明らかにならなかったが、合県後も筑摩県側の住民の不満は高まっていった。
→それ以後、長野県の南北では移庁・分県を巡って激しい対立を繰り広げてきた。
その模様は、以下の資料に詳しい。
『信州南北戦争:県庁争奪、百年の戦い』( 中村勝実著. 櫟, 1991 )
→松本市民が「長野県」ではなく「信州」という呼称を使う理由は、
感情的に「長野県」という呼称を使いたくないからであろうか?
③新聞記事データベース『ヨミダス歴史館』にて「信州」「長野」「松本」に関する記事を検索。
→やはり、ここでも南北対立に関する記事がヒットする。
1999年の読売新聞長野版にて連載記事「激動・信州の20世紀(1)-(5)南北戦争」掲載。
①、②に挙げた資料同様、南北対立についての詳細な記事を掲載。
連載(5)では、南北各地域の住民に対するインタビュー記事を掲載。
「現在も南北対立はあると思うか」
「仮に今、『分県論』が再び出てきたら賛成するか、反対するか」
という質問に対して、「対立はない」「分県には反対」という意見が多数であった。
→南北対立による感情のもつれから松本市民が「信州」という呼称を使っている
とは一概には言えない。
④それでは、なぜ南北対立はなくなったのか?何かきっかけがあったのだろうか?
引き続き新聞記事データベース『ヨミダス文書館』にて記事を検索してみる。
→「信州人意識育て喜び共有する歌 『信濃の国』で一体感」( 1999年8月17日 読売新聞長野版 )
上記記事に以下の記述あり。
「本県出身者で知らない人はないといわれる『信濃の国』。二十世紀に入り広まったこの歌は、
激しい南北戦争とは裏腹に、『信州人』意識を育て、対立感情を和らげる独特の役割を果たしてきた」
→この歌により、長野県民の中で「長野」や「松本」を超越して「信州人」という意識が芽生え、
一体感が生まれたため、特に不満が高く、県庁移設・分県論を繰り返してきた南信の地域では
「信州」という呼称を好んで使うようになったのかもしれない。
★質問者は「レポート作成のために調査している」との事だったので、①の資料をご案内し、
論文検索、新聞記事検索の方法をお伝えして、後はご自身で考えていただく事にした。
- 事前調査事項
- NDC
- 参考資料
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- 『松本市史』( "松本市" ; 上巻, 下巻. 松本市, 1933 )
- 「松本市HP」( http://www.city.matsumoto.nagano.jp/ )
- 『長野県の歴史』( 塚田正朋著.山川出版社, 1974 (県史シリーズ ; 20) ) , ISBN 4634232006
- 『長野県の歴史』( 古川貞雄 [ほか] 著. [新版]. 山川出版社, 1997. (県史 ; 20) ) , ISBN 4634322005
- 『図説長野県の歴史』( 古川貞雄責任編集 ; 古川貞雄[ほか]執筆. 河出書房新社, 1988. (図説日本の歴史 / 色川大吉[ほか]監修 ; 20) ) , ISBN 4309611206
- 『信州南北戦争:県庁争奪、百年の戦い』( 中村勝実著. 櫟, 1991 ) , ISBN 4900408344
- 「激動・信州の20世紀(1)-(5)南北戦争」( 1999年8月3日,10日,17日,24日,9月1日 読売新聞長野版 )
- 「信州人意識育て喜び共有する歌 『信濃の国』で一体感」( 1999年8月17日 読売新聞長野版 )
- キーワード
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- 長野県
- 長野市
- 松本市
- 信州
- 筑摩県
- 信州南北戦争
- 南北対立
- 県庁
- 「信濃の国」
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 学生
- 登録番号
- 1000115076