レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2024年01月12日
- 登録日時
- 2024/03/27 15:32
- 更新日時
- 2024/04/05 22:00
- 管理番号
- 県立長野-23-201
- 質問
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解決
長崎県に伝わる民話「産女の幽霊」と類似したものを探している。長野県にはあるか。
- 回答
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『長野県史 民俗編 第2巻(3)南信地方 言葉と伝承』長野県編 長野県史刊行会 1989【N209/11-3/2-3】p.530に、下伊那郡高森町の「子育て幽霊」という話がある。母親が埋葬されたのは五三味の墓地とあり、幽霊が買うものは大福餅、赤ん坊は餅屋で育て、後に瑠璃寺の寺男になっている。いつ頃という設定はない。
※五三味(ごさんまい)は五三味所の略。死者を埋葬する場所を指す。
『長野県史 民俗編 第4巻(3)北信地方 言葉と伝承』長野県編 長野県史刊行会 1986【N209/11-3/4-3】p.379-380に、下水内郡野沢温泉村の「子育てゆうれい」がある。埋葬された寺名は不明で村内の寺とのみある。幽霊が買うものはあめ屋のあめ、子どもは父親が大事に育てたとある。これも、いつ頃という設定はない。
長野県立歴史館が長野県の民話を集めたデータベース「長野県の民話」で、『長野県史 民俗編』に収録されているものと同じ内容を見ることができる。[最終確認2024.3.28]
また、『信州の民話伝説集成 南信編』宮下和男編著 一草舎 2005【N388/250/2】p.246-247では、下伊那郡高森町(旧・市田村大島山)の「土中誕生の話」がある。母親の墓地は瑠璃寺にある。幽霊が買うものは餅屋の餅で、子どもは瑠璃寺の和尚に預けられる。
『信州の民話伝説集成 東信編』和田登編著 一草舎 2006【N388/250/4】p.224-226では、北佐久郡軽井沢町の「めっき和尚」という話がある。母親の墓地の場所は書かれていない。幽霊が買うものは飴屋の飴で、飴屋が育てた子どもが成長し、佐久の前山にある貞祥寺(ていしょうじ)で修業する。小僧から出世し和尚となる話。子どもは墓地から救出される際に、目に傷を負う。
『同書』p.292-293には、佐久市前山の「めっこ和尚」がある。母親は貞祥寺近くの墓に埋葬さる。幽霊が買うものは飴屋の飴で、寺の住職が村人に掘り返すよう依頼する流れとなっている。この話でも救出される際に、目に傷を負い、寺で育てられる。修業を積んで貞祥寺の住職になり、鬼を改心させる話で終わっている。
上記の貞祥寺の和尚の出生の伝承を含むものが、『佐久市志 民俗編下』佐久市志編纂委員会編 佐久市 1990【N223/69/2-2】の「口承文芸」のp.1158-1160にある「鬼の腕の話」のヴァリエーションの中にある。このうち、①鬼石、②めっこ和尚、③めっき和尚、④めっき和尚の4つが子育て幽霊と関係がある伝承となっている。①では幽霊の話は出てこないが、和尚は母親の死後に生まれたことになっている。また、④の話では、和尚の出生の話は出てこないが、①の話との関係性が伺える。
※この資料で各話の出典として記されている(A)は、『佐久口碑伝説集』北佐久編、(B)は『佐久口碑伝説集』南佐久編のもの。
『伊那谷の昔話集』小沢さとし著 一草舎 2009【N388/273】p.48-49に、駒ケ根市(旧・上伊那郡赤穂村)の「我が子に団子を運ぶ幽霊」がある。母親の埋葬場所は「山の中の墓地」とだけあり、幽霊が買うものは団子屋の団子。子どもを助け出したことは書かれておらず、村人たちがその女のために「子育て観音」を作って供養したことだけが書かれている。
『全国昔話資料集成40 奥信濃昔話集』浅川欽一編 岩崎美術社 1984【N388/125】p.77に、下水内郡栄村小滝の「子育て幽霊」
の話がある。幽霊が買うものは、飴屋の飴。飴屋とともに亡くなった母親の家のものが、子どもを助け出したところで話は終わっている。
『日本昔話通観 第12巻 山梨・長野』稲田浩二編 同朋舎出版 1981【388.1/イコ/12】p.171-174に、両県の「子育て幽霊」が掲載されている。日本の昔話を類型化したものの中に「子育て幽霊」もあって、子どもの誕生だけを扱う「誕生型」とその後の出世までを扱う「出世型」とがある。
<瑠璃寺>
『高森町史 上巻後篇』高森町史編纂委員会編 高森町史刊行会 1972【N243/76/1-2】のp.984-1000に、寺の歴史等の記述があるが、この民話に関する記述はない。国立国会図書館デジタルコレクションの送信サービスで閲覧可能。[最終確認2024.3.28]
<貞祥寺>
『佐久市志 歴史編(2)中世』佐久市志編纂委員会編 佐久市 1963【N223/69/3-2】の「中世の社寺」のp.705-706に貞祥寺がある。寺の開創についいても詳しく書かれているが、当該民話にかかる内容はない。
- 回答プロセス
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1 長野県立歴史館が長野県の民話を集めたデータベース「長野県の民話」を公開している。このサイトで「幽霊」「ゆうれい」「飴」「あめ」「餅」「もち」「団子」「だんご」などをキーワードにし、ほかの項目は「すべて」にチェックを入れて検索する。『長野県史 民俗編』に収録されているものと同じ内容を見ることができる。『長野県史 民俗編』で子育て幽霊の話を確認する。
2 1でヒットした市町村の詩誌類、民話を調べる。佐久地域では、子どもの出生だけでなくその後の話もあるとわかる。
3 『信州の民話伝説集成』の各地域を「子育て幽霊」「めっき和尚」などを留意しながら調べる。
4 『日本昔話通観』の索引で「子育て幽霊」を調べる。
<調査資料>
・『野沢温泉村史』野沢温泉村史編纂委員会編 野沢温泉村 1974【N213/43】
・『瑠璃寺の秘宝』飯田市美術博物館編・刊 1992(伊那谷の仏教文化1)【N184/25/1】
・『南牧村誌』南牧村誌編さん委員会編 南牧村誌刊行会 1986【N223/64】
p.663に貞祥寺の記述があります。
・『伊那の昔ばなし』伊那民俗研究会 郷土出版社 1985【N388/129】
・『信州の民話伝説集成 北信編』高橋忠治編著 一草舎 2005【N388/250/1】
・『信州の民話伝説集成 中信編』はまみつを編著 一草舎 2006【N388/250/3】
- 事前調査事項
- NDC
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- 伝説.民話[昔話] (388 10版)
- 参考資料
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長野県 編集. 長野県史 民俗編 第2巻 3. 長野県史刊行会, 1989.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I23111110151757 (【N209/11-3/2-3】) -
長野県/編. 長野県史 民俗編 第4巻(3)北信地方. 長野県史刊行会, 1986.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I20111005010035451 (【N209/11-3/4-3】) -
宮下和男 編著. 信州の民話伝説集成 南信編. 一草舎出版, 2005.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008079697 , ISBN 4-902842-16-5 (【N388/250/2】) -
和田登 編著. 信州の民話伝説集成 東信編. 一草舎出版, 2006.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008131759 , ISBN 4-902842-18-1 (【N388/250/4】) -
佐久市志編纂委員会 編纂. 佐久市志 民俗編 下. 佐久市志刊行会, 1990.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I22211101315656 (【N223/69/2-2】) -
小沢さとし 著. 新伊那谷の昔話集. 一草舎, 2009.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010646819 , ISBN 978-4-902842-67-8 (【N388/273】) -
稲田浩二 責任編集 ; 小沢俊夫 責任編集. 日本昔話通観 第12巻. 同朋舎, 1981.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I23111100203374 (【388.1/イコ/12】)
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長野県 編集. 長野県史 民俗編 第2巻 3. 長野県史刊行会, 1989.
- キーワード
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- 子育て幽霊
- 産女の幽霊
- 長野県の民話
- 長崎県の民話
- 民話
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 高校生
- 登録番号
- 1000348114