レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年11月10日
- 登録日時
- 2024/03/20 09:57
- 更新日時
- 2024/03/28 22:09
- 管理番号
- 県立長野-23-196
- 質問
-
解決
北安曇郡小谷(おたり)村の祭礼行事「狂拍子(くるんびょうし)」と類似する伝統芸能は長野県内にあるか。子どもが舞い、五穀豊穣を願うものだが、「中谷大宮諏訪神社」「池原諏訪神社」「字宮諏訪神社」「大網諏訪神社」下里瀬で行われている。「中谷大宮諏訪神社」だけ装束や踊り方、他のものと異なる。
新潟県糸魚川市の「根知山寺の延年」の狂いの舞が、酷似している。
- 回答
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小谷村の狂拍子と類似した内容かどうかについては文章からは判断できないが、「狂拍子」という名称のものは、小谷村のものだけで、「延年」を名称に含む芸能は確認できなかった。
小谷村の狂拍子継承問題を含め、次の資料を紹介した。
・『長野県の民俗芸能-長野県民俗芸能緊急調査報告書-』 長野県教育委員会編・刊 1995【N386/89】
p.5「風流踊り」の説明中に北安曇郡小谷村中谷大宮諏訪神社の『奴踊りと狂拍子』(県指定)は、氏子五集落から回り番で奴を出し(-中略-)。狂拍子は、大小ある二人の男の子が組んで、太鼓と笛のリズムで手に棒を持って踊るもので、この辺の神社でも若干の伝承がある
とあった。
p.139-146に「悉皆調査一覧」があり、市町村ごとに芸能名が書かれている。「狂拍子」という名称のものは、小
谷村のものだけで、「延年」を名称に含む芸能も確認できない。p.147-222の各祭の簡単な紹介は、小谷村が含
まれる大北地域(大町市および北安曇郡の町村)について確認した。調査が行われた時点では、「池原諏訪神社
狂拍子」「字宮諏訪神社狂拍子」「大網諏訪神社狂拍子」が該当。なお、全県分の確認は、資料の全調査になるた
め、行っていない。
なお、この資料は『中部地方の民俗芸能3 長野・岐阜』三隅治雄編 海路書院 2005 【386.8/ニホ/10】に所収され
ている。
・『北安曇誌 第5巻 近代現代 下』北安曇郡誌編纂委員会編・刊 1984 【N231/13/5】[国立国会図書館デジタルコレクション送信サービスで閲覧可能 最終確認2024.3.25]
p.1213-1228に「大宮諏訪神社の芸能」の項があり、小谷には、旧村社以上の神社が10社あり、すべて諏訪神社である。そのうち旧小谷村社7社の例大祭には、民俗芸能上の上で注目されている狂拍子と獅子舞が奉納されている。狂拍子には二種類あって、大宮諏訪神社のものと他6社のものとは異なっている。また、獅子舞は各社とも異なった舞い方を伝えている。旧千国村の3社には、狂拍子は伝えられていないが獅子舞だけは行われている。
狂拍子の囃子は、どの神社のものも同じであるが、獅子舞の囃子はそれぞれの神社で異なっている。(-後略-)
とある。さらに、p.1226-1228には、狂拍子についての、細かな記載がある。この資料が書かれた時点で、
現在は、大宮神社の狂拍子だけとなり、宮本・池原・土谷・来馬・深原・大網の各神社では行われていない。
とも書かれている。
・『中土誌』 中土小学校編 小谷村教育委員会 1970【N231/11】
p.152-169に「諏訪神社と小谷」の項があり、地域内の諏訪神社についての記載があった。大宮諏訪神社の
他に、諏訪神社(中土字土谷3893)の記載があり、ここに3人で舞う狂拍子が記されているが、「(現在行われ
ず)」の記載もあった。
・『写真記録・信州に生きる 下 祭りと伝統行事編』 長野県民俗の会 郷土出版社 1993【N382/88/2】
巻末p.214-211に「長野県のおもな祭・年中行事と民俗芸能」の一年間の表があるが、「民俗芸能の名称」とし
ての「狂拍子」という名称のものは、小谷村のみ。他の神社では、特別な名称が無いものは「神楽」「太々神楽」
とあるものがほとんどで、名称からは判別ができない。なお、「狂拍子」は中谷大宮諏訪神社へ奉納されていることから、諏訪神社の奉納舞を中心に、小谷村が含まれる大北地域の誌史類を次のとおり、調査した。小谷村の狂拍子と類似した内容かどうかについては、記載されている舞手の仕様、衣装からは別物と思われるが、断定はできない。また、多くの地域で「現在は行っていない」という記述が見られ、どのような神楽かの記述を欠くものが多くあった。
・『白馬の歩み 村誌・社会環境編下』「白馬の歩み」編纂委員会編 白馬村 1993 【N231/51/3】
p.458-479, 509-512 に村内の神社の信仰や例大祭についてまとめられている。
・『大町市史 第5巻 民俗・観光』 大町市史編纂委員会編 大町市 1984【N231/36/5-1】[国立国会図書館デジタルコレクション送信サービスで閲覧可能 最終確認2024.3.25]
p.395-416, 421-424, 953-967 に市内の神社の信仰や例大祭についてまとめられている。
・『大町市史 第5巻 民俗・観光資料』 大町市史編纂委員会編 大町市 1984【N231/36/5-2】[国立国会図書館デジタルコレクション送信サービスで閲覧可能 最終確認2024.3.25]
p.173-180, 223-227 に市内の神社の信仰や例大祭についてまとめられている。
・『八坂村誌 民俗編 民俗編資料』八坂村誌編纂委員会編 八坂村誌刊行会 1993 【N231/47/3】
p.221-271 に村内の神社の信仰や例大祭についてまとめられている。
・『松川村誌 自然環境編・民俗編』松川村誌編纂委員会編 松川村誌刊行会 1988 【N231/40/2】
p.544-565に村内の神社の信仰や例大祭についてまとめられている。
・『美麻村誌 民俗編』 美麻村誌編纂委員会編 美麻村誌刊行会 1999【N231/54/1】
p.187-241,288-294に村内の神社の信仰や例大祭についてまとめられている。
・『池田町誌 歴史編1』 池田町誌編纂委員会編 池田町 1999【N231/41/2-1】
・『山里のきずな-小谷村大網に生きる-』 信濃毎日新聞社編集局編 信濃毎日新聞社 2009【291.52/シ】
・『白馬町百年誌』 白馬町百年誌編集委員会編 北安曇郡白馬村白馬町区 1992【N231/73】
・『目でみる緑町誌』 緑町誌編纂委員会編 北安曇郡松川村緑町 1986【N231/92】
- 回答プロセス
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1 『小谷村誌 社会編』小谷村誌編纂委員会編 小谷村誌刊行委員会 1993 【N231/46/3】のp.807「民俗芸能」から、「狂拍子」を確認する。
2 『長野県の民俗芸能-長野県民俗芸能緊急調査報告書-』 で長野県内の民俗芸能を調べる。p.139-146に「悉皆調査一覧」があり、市町村ごとに芸能名があるが、踊り方までは記載が無いので、類似の判断はできない。名称の上では、「狂拍子」「延年」といったものは、他地域では確認できない。小谷村内にも「延年」はない。
3 『北安曇誌 第5巻 近代現代 下』『中土誌』 など、大北地域の史誌類の民俗編を確認していく。
4 郷土史研究の雑誌の目次を「狂拍子」や「延年」などで検索する。
5 当館契約の「信濃毎日新聞データベース」で新聞記事を探す。
6 上記調査過程で『長野県の民俗芸能-長野県民俗芸能緊急調査報告書-』等の利用者最寄りの図書館の所蔵を確認する。<その他の調査資料>
・内川幸雄著「小谷村中谷大宮諏訪神社神事芸能の周辺」『長野』148号 1989.11
・『小谷の民俗』 小谷村教育委員会編 柳沢書苑 1972【N382/17】[国立国会図書館デジタルコレクション送信サービスで閲覧可能 最終確認2024.3.25]
・『いにしえの里 小谷』杉本好文著 信毎書籍出版センター 1984【N231/37】
小谷と諏訪大社との関係、薙鎌神事が書かれている箇所はあるが、狂拍子などの芸能についての記述は確認
できなかった。
・『長野県史 民俗編 第3巻(3)仕事と行事』 長野県編 長野県史刊行会 1989【N209/11-3/3-2】[国立国会図書館デジタルコレクション送信サービスで閲覧可能 最終確認2024.3.25]
・『長野県史 通史編 第3巻中世2』長野県編 長野県史刊行会 1987【N209/11-4/3】[国立国会図書館デジタルコレクション送信サービスで閲覧可能 最終確認2024.3.25]
・『長野県文化財分布図(平成8年3月1日現在)』 長野県教育委員会 1996【N709/48/6】
・『長野県文化財めぐり』改訂 長野県文化財保護協会著・刊 1998【N709/87a】
・『長野県の文化財(平成27年3月31日現在)』 八十二文化財団 2016【N709/99c】
・『長野県文化財目録(平成13年3月1日現在)』 長野県立歴史館 2003【N709/50/’03】
・『信州の芸能』信濃毎日新聞社編集局編 信濃毎日新聞社 1974【386/シ】
・『白馬の文化財 総合編』 田中欣一著 白馬村教育委員会 1987【N709/106】
・『長野県大町市社館之内民俗誌稿』 長野県史刊行会民俗編編纂委員会編・刊 1980【N382/50】[国立国会図書館デジタルコレクション送信サービスで閲覧可能 最終確認2024.3.25]
・『大町市の文化財』第2版 大町市教育委員会 1996【N709/116】
・『仁科町の歩み』 仁科町歴史調査委員会編 仁科町公民館 2000【N231/71】
・吉田公人著「大宮諏訪神社『狂拍子保存会』」『文化財信濃』第30巻第3号 2003 p.29-34
・片田章偉著「『狂拍子』につながる子どもたち」『信濃教育』第1337号 1998 p.66-69
・内川幸雄著「小谷村中谷大宮諏訪神社神事芸能の周辺」『長野』第148号 1989 p.27-33
- 事前調査事項
- NDC
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- 年中行事.祭礼 (386 10版)
- 参考資料
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-
長野県教育委員会 編. 長野県の民俗芸能 : 長野県民俗芸能緊急調査報告書. 長野県教育委員会, 1995.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002439727 (【N386/89】) -
三隅治雄, 大島暁雄, 吉田純子 編. 中部地方の民俗芸能 3. 海路書院, 2005. (日本の民俗芸能調査報告書集成 ; 10)
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008014721 , ISBN 4-902796-15-5 ( 【386.8/ニホ/10】) -
北安曇誌編纂委員会 編. 北安曇誌 第5巻 (近代・現代 下). 北安曇誌編纂委員会, 1984.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001694281 (【N231/13/5】) -
中土小中学校編. 中土誌. 小谷村教育委員会, 1970.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000136-I1130848328515780480 (【N231/11】) -
長野県民俗の会 編. 信州に生きる : 写真記録 下巻(祭りと伝統行事編). 郷土出版社, 1993.
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002268236 , ISBN 4-87663-212-X (【N382/88/2】)
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長野県教育委員会 編. 長野県の民俗芸能 : 長野県民俗芸能緊急調査報告書. 長野県教育委員会, 1995.
- キーワード
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- 民俗芸能
- 狂拍子
- 小谷村
- 信州学
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000347732