レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年06月01日
- 登録日時
- 2021/08/20 17:58
- 更新日時
- 2021/08/20 18:32
- 管理番号
- 千県東-2021-0001
- 質問
-
解決
キリスト教カソリック派ではビーバーを魚類に分類したというが、そのことが書かれている資料があるか。
- 回答
-
以下の資料に記載がありました。
【資料1】『世界史を変えた50の動物』
p59「17世紀、ケベックの司教が、ビーバーは水の中で暮らしているから魚だと言い出し、だから受難節のあいだも食べてよいと主張したのだ。」
【資料2】『ジビエの歴史 「食」の図書館』
p38「1704年、カナダのニューフランス・コロニー(アメリカ創立以前の北米にあったフランス植民地)の主任外科医にして博物学者だったミシェル・サラザンは、パリの王立科学アカデミーに「ビーバーの尾は魚だ」という申し立てを行った。」とし、ビーバーが「カトリック教徒の都合で魚にされた」との記載があります。
【資料3】『中世の食生活 断食と宴』
p78「たとえば、不本意ながら容認されたことは、ビーバーは哺乳動物であり、一生の大半を水の中で過ごすが、その尾はうろこで包まれており、紛れもなく魚のように見える、ということであった。したがって、ビーバーの尾の料理を加えて魚の献立を豊富にすることが認められた。」
【資料4】『「食」の歴史人類学 比較文化論の地平』
p269「ビーバーは肉食を禁じる断食期間に、魚と称して食べていたことが、オックスフォード大学総長ジョン・ラッセルの『魚の切り分け方について』という本にみえている。」
【資料5】『図解食の歴史』
p136「ビーバーは獣と魚の中間の生き物とされ、特にドイツでは古代から16世紀まで盛んに食べ、修道士も好んで食べた。」
- 回答プロセス
-
「Google」で「ビーバー カトリック 魚類」を検索。
「#3 「ビーバーは魚です」byローマカトリック|拡張世界の中の人|note」(https://note.com/argumented_world/n/n1bb925b57a31)
「中世のローマカトリック教徒の人々の間ではビーバーは魚であるという概念が広がりました」との記載あり。参考資料として【資料1】が紹介されている。
「『ジビエの歴史』|感想・レビュー-読書メーター」(https://bookmeter.com/books/13157325)
「かつてのローマ・カトリック教会にとって、ビーバーの尾は「魚」だったのかぁ」との感想あり。県立図書館に所蔵があったので確認した。【資料2】
「ビーバー-Wikipedia」
(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%BC%E3%83%90%E3%83%BC)
「キリスト教がビーバーを故意に魚類とし(当時のキリスト教の修道士は特定の曜日にしか肉食(魚類を除く)が許されず、ビーバーは尾の部分が魚の鰭に似た形状をしていたため)、乱獲されたという説もある。」とあるが、出典の記載はない。
英語版「Beaver-Wikipedia」(https://en.wikipedia.org/wiki/Beaver)にも、同趣旨の記載がある。出典として『Beaver』(Poliquin,Rachel Reaktion Books 2015)が挙げられている。千葉県内図書館横断検索や国立国会図書館サーチではヒットしない。GoogleBooksで該当箇所が閲覧できたが、出典のページは閲覧できない。
別サイト「https://my.b-ok.as/book/2580244/1d4add」にて、ダウンロード(表示)が可能。該当箇所がp22にあり、参考文献は『Fast and Feast: Food In Medieval Society』(Bridget Ann Henisch著 University Park 1976)p47とされている。
『Fast and Feast』の邦訳【資料3】『中世の食生活 断食と宴』を確認した。
「GoogleBooks」で「ビーバー 食用」を検索し、【資料4】がヒットした。
他職員から、【資料5】にも掲載があると情報提供があった。
以下のキリスト教の事典も確認したが、記載は見つけられなかった。
『新カトリック大事典』(上智学院新カトリック大事典編纂委員会編 研究社 1996-2009)全5巻
総索引に「ビーバー」なし。「四旬節」の項に記載なし。
『図説キリスト教文化事典』(ニコル・ルメートル[ほか]著 原書房 1998)
索引に「ビーバー」なし。「四旬節」の項に記載なし。
県立図書館の所蔵資料で分類3838(飲食史)から以下の資料を確認したが、記載は見つけられなかった。
『食の歴史 100のレシピをめぐる人々の物語』(ウィリアム・シットウェル著 柊風舎 2016)
『宗教と食 食の文化フォーラム32』(南直人編 ドメス出版 2014)
『肉食タブーの世界史』(フレデリック,J.シムーンズ著 法政大学出版局 2001)
『食のイタリア文化史』(アルベルト・カパッティ著 岩波書店 2011)p99-104「精進食を食べる 典礼に規制された時期と魚料理」という節があるが、ビーバーについての記述はない。
『世界食物百科 起源・歴史・文化・料理・シンボル』(マグロンヌ・トゥーサン=サマ著 原書房 1998)p97に四旬節の「肉断ち」について、「魚が「肉断ち」とされるのは、魚が水のもの、したがって「冷たい」からだ。さらに意味が広がり、水鳥も含まれる。」との記載があるが、ビーバーについては触れられていない。
(インターネット最終アクセス:2021年7月14日)
- 事前調査事項
- NDC
-
- キリスト教 (190 9版)
- 衣食住の習俗 (383 9版)
- 参考資料
-
- 【資料1】『世界史を変えた50の動物』(エリック・シャリーン著 原書房 2012)(2102529315)
-
【資料2】『ジビエの歴史 「食」の図書館』(ポーラ・ヤング・リー著 原書房 2018)(0106647289
) - 【資料3】『中世の食生活 断食と宴』(ブリジット・アン・ヘニッシュ著 法政大学出版局 1992)(9101593421)
- 【資料4】『「食」の歴史人類学 比較文化論の地平』(山内昶著 人文書院 1994)(9100060438)
- 【資料5】『図解食の歴史』(高平鳴海[ほか]著 新紀元社 2012)(0600473480)
- キーワード
-
- キリスト教(キリストキョウ)
- ビーバー(ビーバー)
- 四旬節(シジュンセツ)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000303411