レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2012/07/25
- 登録日時
- 2012/11/24 02:00
- 更新日時
- 2012/11/24 02:00
- 管理番号
- 横浜市中央2140
- 質問
-
解決
ケンペルの『廻国奇観』のうちの「日本植物図譜」部分の和訳図書が出版されているか。
- 回答
-
『廻国奇観』の第5章「日本の植物」を全訳したものは確認できませんでした。
ただし、「日本の植物」の一部は、『日本誌』(ケンペル)の「第9章 日本の植物」に収録されて
いますので、『日本誌』の翻訳図書で確認することができます。
調査過程は次のとおりです。
1 国立国会図書館サーチ(http://iss.ndl.go.jp/)
検索結果のレファレンス協同データベース(https://crd.ndl.go.jp/jp/public/)の事例を
参考にしました。
「ケンペル『廻国奇観』を見たい。」
(近畿大学中央図書館 事例作成日:2011年07月17日)
https://crd.ndl.go.jp/GENERAL/servlet/detail.reference?id=1000088592
この事例では現物の画像等が閲覧できるインターネットサイト等を紹介しています。
この事例の参考資料に挙げられている次の論文を確認しました。
「ラテン語で読むケンペル「鎖国論」 : 『廻国奇観』所収論文とその翻訳について」
五之治昌比呂
(「西洋古典論集」22巻 p.260-278 京都大学西洋古典研究会)
http://hdl.handle.net/2433/108530
京都大学学術情報リポジトリKURENAIに全文が収録されています。
論文の内容から次のことが分かります。
(1)当該資料の原題(ラテン語)
Amoenitatum exoticarum politico-physico-medicarum fasciculi V:
quibus continentur variærelationes, observationes &
descriptiones rerum Persicarum & ulterioris Asiae, multa
attentione, in peregrinationibus per universum Orientem,
collectæ ab auctore Engelberto Kæmpfero, D.
(政治学的・自然学的・医学的主題に関する異国の魅力ある事柄五巻:
著者エンゲルベルト・ケンペル博士が東方世界の旅行において注意深く収集した
ペルシアとアジア極地に関する様々な報告,観察,描写を含む)
(2)1712 年にラテン語による著書『廻国奇観』が出版されたこと。
(3)『廻国奇観』の「第5巻は、丸々日本の植物の研究に当てられており、「日本植物誌」と
呼ぶべきものになっている」ということ。
(4)『「今日の日本」と著作の英語訳が、1727 年に『The History of Japan(『日本誌』)』
のタイトルで刊行された。
ショイヒツァーは手稿の翻訳に加えて、『廻国奇観』所収の日本に関する論文6編を
ラテン語から英訳し、『日本誌』の末尾に付録として加えたとのこと。
2 『検夫爾日本誌 解説・総索引』 エンゲルベルト・ケンペル/著 坪井信良/訳
『検夫爾日本誌』解説・総索引編纂委員会/編 霞ケ関出版 1999
p.104~「7.ケンペルの日本植物図」より
『廻国奇観』の第4編に「椰子の話」、第5編に(p.765~912)に
「日本植物誌(Catalogum plantarum Japonicarum)」が収録されていることについて
記載があり、「廻国奇観の記述の中から最も有用な一般周知の植物60余種を取り
上げ、極めて要領よく10頁に纒めた記事が第1巻第9章に収録されている」とあります。
3 ケンペル著『日本誌』の翻訳本
1、2の情報より、ケンペル著『日本誌』の翻訳本で所蔵している資料を確認しました。
(1)『日本誌 日本の歴史と紀行 改訂増補 上』 エンゲルベルト・ケンペル/著
今井正/編訳 霞ケ関出版 1989
p.147~155「第9章 日本の植物」
各種植物について説明があります。図については掲載されていません。
(2)『日本誌 日本の歴史と紀行 改訂増補 下』 エンゲルベルト・ケンペル/著
今井正/編訳 霞ケ関出版 1989
「日本誌(The History of Japan)」の附録として「廻国奇観」所収論文が収録されて
いると記載がありましたので、当該資料の翻訳本を確認しました。
p.421~「附録 ケンペル著 Amoenitatum Exoticarum"廻国奇観"中にある日本に
関する諸論文(ラテン語による記述からの翻訳)」を確認しましたが、「日本植物誌」に
あたるものはありませんでした。収録されている論文の和訳タイトルは以下になります。
「Ⅱ もっともな理由のある日本の鎖国」
「Ⅲ 日本でよく行われている鍼術による疝気治療」
「Ⅳ シナおよび日本でよく行なわれている艾灸」
「Ⅴ 日本の茶の話」
「Ⅵ 龍涎香について」
この中で特に植物の図が収録されているものは「I 日本における製紙法について」
(p.423~)で、製紙用植物の説明があります。
注釈1に、「この論文は、"廻国奇観"の第466頁以下に載せられており、同書の第13章を
なす部分である。」とあります。(p.436)
4 『大場秀章著作選 1』大場秀章/著 八坂書房 2006
p.351~「ケンペルをとらえた日本の植物」
p.357~「ケンペルの日本植物への挑戦」
図1にケンペルの『日本の植物』ツツジの部分の部分訳が掲載されています。(p.368)
「今回、ケンベルの生誕三五〇年を記念して、ケンペルの『日本の植物』を日本語に翻訳
するということを考えてきた。幸い、田中順子さんがこの困難な事業に協力してくださることに
なり、現在翻訳作業が進められている。近い将来にそれを出版できればと考えている。」
とあります。
国立国会図書館の蔵書検索で「大場秀章」「田中順子」「ケンペル」「植物」等で検索
しましたが、翻訳資料は確認できませんでした。
5 その他確認した資料
(1)『ケンペル展 ドイツ人の見た元禄時代』 ドイツ-日本研究所/〔ほか〕編
ドイツ日本研究所 〔1990〕
p.161 「参考文献」の「2.ケンペルの著作の復刻版と翻訳版」
「2.1 『廻国奇観』/Amoenitates」の項目に翻訳版についてはありません。
p.138~「出品解説」に
「56. Amoenitatum Exticarum politico-physico-medicarum fasciculi V」
(『廻国奇観』初版)
レムゴーで出版された1712年のもの。横浜開港資料館蔵とあります。
(2)『江戸の植物学』 大場秀章/著 東京大学出版会 1997
p.39~「第2章 バビロンの塔からの使者 ケンペル」
『廻国奇観』の第5部「日本の植物」に掲載されている植物の絵が2点掲載されています。
p.67「こと植物の部分にかんするかぎり、ケンペルの『廻国奇観』が日本で復刻された形跡は
ない。」
また、1983年に『廻国奇観』の中から「日本の植物」の部分だけをまとめてドイツで出版された
ことについて記載がありますが、日本語訳については記載はありません。
(3)『ケンペルと徳川綱吉 ドイツ人医師と将軍との交流』 B.M.ボダルト=ベイリー/著
中直一/訳 中央公論社 1994
p.218~「唯一の出版物『廻国奇観』」
(4)『ケンペルとシーボルト 「鎖国」日本を語った異国人たち』 松井洋子/著
山川出版社 2010
p.8 ページ上部に『廻国奇観』の説明がある他、本文にも記載があります。
(5)『ケンペル 礼節の国に来りて』 B.M.ボダルト=ベイリー/著 中直一/訳
ミネルヴァ書房 2009
p.242~「2 『廻国奇観』」、特に「日本植物誌」(p.254~)についての記載があります。
(6)『江戸時代の自然 外国人が見た日本の植物と風景』 青木宏一郎/著
都市文化社 1999
(7)『遥かなる目的地 ケンペルと徳川日本の出会い』
ベアトリス・M.ボダルト=ベイリー/〔ほか〕編 中直一〔ほか〕/訳
大阪大学出版会 1999
(8)『ケンペルやシーボルトたちが見た九州、そしてニッポン』 宮崎克則/編
福岡アーカイブ研究会/編 海鳥社 2009
(9)『ケンペルのみた日本』ヨーゼフ・クライナー/編 日本放送出版協会 1996
p.196~「第1章 『日本誌』と英国に伝わるケンペル遺産』
p.246「参考文献」「2 ケンペルの著作の復刻版と翻訳版」で
「①廻国奇観」の項目がありますが、翻訳版の記載はありません。
6 インターネット
「欧亜文化交流史」(W・ミヒェル、九州大学名誉教授)の「エンゲルト・ケンペル」のページに
次の内容がありました。
(1)「エンゲルベルト・ケンペルの生涯」のページには昭和52年までの翻訳書の情報も
掲載されていますが、「廻国奇観」のタイトルの翻訳書はありませんでした。
http://wolfgangmichel.web.fc2.com/serv/ek/index_jp.html
(2)「ケンペル研究(日本語の文献)」には2011年までの情報が掲載されていますが、
「廻国奇観」の翻訳書については確認できませんでした。
http://wolfgangmichel.web.fc2.com/serv/ek/eklit/litpart3.html
(3)「廻国奇観」の目次が掲載されていますが、和訳ではありません。
http://wolfgangmichel.web.fc2.com/serv/ek/amoenitates/index.html
(4)5章について次のページで原文をスキャンした画像が閲覧できます。
http://wolfgangmichel.web.fc2.com/serv/ek/amoenitates/fasc5/index.html
(5)「口頭発表 」→「学会発表・学術講演」
「W・ミヒェル「『廻国奇観』 - エンゲルベルト・ケンペルの日本像の形成について」」
「例えば、ケンペルの著作である『廻国奇観』には日本の植物について28枚の挿し絵があり
ますが、彼は実際には全部で217枚の植物のスケッチをしており、それに何百という押し花
を持ち帰っていました。」
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
-
- 日本 (291 8版)
- 日本史 (210 8版)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000114697