レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022/5/30
- 登録日時
- 2022/12/12 10:41
- 更新日時
- 2022/12/28 11:52
- 管理番号
- 川図22-02
- 質問
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解決
・アラキドン酸カスケードが進行すると体内の炎症が促進するらしいが、これを引き起こすアラキドン酸はそもそもどこからきたのか。食物由来なのか、刺激/日光/ストレスその他の要因で体内で作られたのか。
・エイコサペンタエン酸が「アラキドン酸」に拮抗するらしいが、酸が酸に拮抗するとはどういう意味か。作用の詳しい仕組みが知りたい。
- 回答
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[1]NDLサーチの簡易検索で、キーワードに「"アラキドン酸カスケード"」と入力して検索し、ヒットした資料のうち当館が所蔵しているものと、その周辺の「生化学」「脂質」等の書架をブラウジングし、質問に関係する記述のあった以下(1)(2)(3)(4)(5)(6)を紹介した。
(1)『生化学辞典』 第3版 (井上圭三/ほか編, 東京化学同人, 1998.10)
「アラキドン酸カスケード」「アラキドン酸」「エイコペサンタエン酸」についてそれぞれ説明がある。「エイコペサンタエン酸」の説明には、「いくつかの酵素反応でアラキドン酸代謝を競合的に抑え、血液循環をよくする」とある。
(2)『プロスタグランジン研究の新展開』 現代化学増刊38 (室田誠逸/編, 東京化学同人, 2001.2)
巻頭にアラキドン酸カスケードの詳細な経路図が掲載されている。
p.15「受容体ノックアウトマウスで明かされたPGの役割」にアラキドン酸が膜リン脂質から遊離する際の要因として「種々の生理的・病理的な刺激」とある。
p.137「PLA2とCOXの機能連関」(2は下付き文字)に「アラキドン酸は通常生体膜の主要構成成分であるグリセロリン脂質にエステル結合した形で貯蔵されており」とある。
p.176「エイコサペンタエン酸(EPA)およびドコサヘキサエン酸(DHA)」に「アラキドン酸の拮抗物質としてのEPAおよびDHAの新しく見いだされた役割について概説する。」とある。
(3)『生体膜の分子機構』 リピッドワールドが先導する生命科学 DOJIN BIOSCIENCE SERIES 18 (梅田真郷/編, 化学同人, 2014.10)
p.33-39「1.5.3脂肪酸代謝とメタボロミクス」に「魚油などに多く含まれるエイコサペンタエン酸(EPA,C20:5n-3)やドコサヘキサエン酸(DHA,C22:6n-3)などのω3系脂肪酸は(中略)おもにアラキドン酸代謝系と競合することで炎症を抑制すると考えられてきたが、最近新たにω3系脂肪酸から生成する抗炎症性代謝物(レゾルビン、プロテクチン)が見いだされている。」とあり、アラキドン酸及びω3系脂肪酸由来の代謝物を包括的に測定するための分析システムが紹介されている。また、図1.34「炎症を正と負に制御する脂肪酸代謝系について」として、「アラキドン酸」を始点とする「炎症性メディエーターの抑制」とエイコサペンタエン酸を始点とする「抗炎症性メディエーターへの変換」という図も掲載されている。
(4)『ストライヤー基礎生化学』 第4版 (John L.Tymoczko/著, 東京化学同人, 2021.11)
p.148-150「タンパク質は膜におけるほとんどの機能を果たす」に、アラキドン酸が生成されてから酵素の活性部位にたどり着くまでの説明がある。
p.381-382「脂肪酸の伸長と不飽和化にはさらなる酵素を必要とする」に、アラキドン酸はリノール酸から誘導されるとあり、リノール酸の説明も書かれている。
(5)『ヴォート生化学』 下 Biochemistry 第4版 (DONALD VOET/著, 東京化学同人, 2013.3)
p.769-778「エイコサノイド代謝:プロスタグランジン、プロスタサイクリン、トロンボキサン、ロイコトリエン、リポキシン」に、「Sune BergströmとBengt Samuelssonはアラキドン酸がリノール酸という必須のω-6脂肪酸から合成されることを示した。リノール酸のΔ6-デサチュラーゼによる不飽和化でγ-リノレン酸(GLA)を生じ、鎖延長後再度Δ5-デサチュラーゼで不飽和化して合成する」(Δの後の数字は上付き文字)として経路図が書かれている。また、「アラキドン酸はホスファチジルイノシトールなどリン脂質のグリセロール基のC2エステルとして細胞膜に貯蔵され、その生産はリン脂質の放出速度で制御される」とある。
(6)『からだと酸素の事典』(酸素ダイナミクス研究会/編, 朝倉書店, 2009.9)
「4.3活性酸素と病気」p.304-308「1.炎症と活性酸素」の中に「5)アラキドン酸代謝」という項目があり、アラキドン酸カスケードについての説明もある。
[2](2)p.176の執筆担当に「渡辺志朗、浜崎智仁」とあるので、CiNii Researchで「人物/団体名」に名前を、キーワードに「エイコサペンタエン酸」を入力して検索すると関連する論文が複数件ヒットした。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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『脂質の分子生物学と病態生化学』 蛋白質核酸酵素 Vol 44 No 8 (井上圭三/編, 共立出版, 199906)
- NDC
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- 生化学 (464)
- 参考資料
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今堀和友, 山川民夫 監修 , 井上圭三 [ほか]編 , 今堀, 和友, 1920-2016 , 山川, 民夫, 1921-2018 , 井上, 圭三, 1940-. 生化学辞典 第3版. 東京化学同人, 1998.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002740426-00 , ISBN 4807904809 -
室田 誠逸/編 , 山本 尚三/編. プロスタグランジン研究の新展開. 東京化学同人, 2001-02. (現代化学増刊)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I052852367-00 , ISBN 9784807913381 -
梅田真郷 編 , 梅田, 真郷, 1954-. 生体膜の分子機構 : リピッドワールドが先導する生命科学. 化学同人, 2014. (DOJIN BIOSCIENCE SERIES ; 18)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I025878072-00 , ISBN 9784759815160 -
John L.Tymoczko, Jeremy M.Berg, Gregory J.Gatto,Jr., Lubert Stryer 著 , 入村達郎, 岡山博人, 清水孝雄, 仲野徹 監訳 , Tymoczko, John L, 1948- , Berg, Jeremy Mark, 1958- , Gatto, Gregory Joseph, 1958- , Stryer, Lubert , 入村, 達郎, 1949- , 岡山, 博人, 1948- , 清水, 孝雄, 1947- , 仲野, 徹, 1957-. ストライヤー基礎生化学. 東京化学同人, 2021.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I031768065-00 , ISBN 9784807920105 -
DONALD VOET, JUDITH G.VOET 著 , 田宮信雄, 村松正實, 八木達彦, 吉田浩, 遠藤斗志也 訳 , Voet, Donald , Voet, Judith G , 田宮, 信雄, 1922- , 村松, 正実, 1931- , 八木, 達彦, 1933-. ヴォート生化学 下 第4版. 東京化学同人, 2013.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I024350119-00 , ISBN 9784807908080 -
酸素ダイナミクス研究会 編 , 酸素ダイナミクス研究会. からだと酸素の事典. 朝倉書店, 2009.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010564742-00 , ISBN 9784254300987
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今堀和友, 山川民夫 監修 , 井上圭三 [ほか]編 , 今堀, 和友, 1920-2016 , 山川, 民夫, 1921-2018 , 井上, 圭三, 1940-. 生化学辞典 第3版. 東京化学同人, 1998.
- キーワード
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- アラキドン酸
- エイコサペンタエン酸
- 生化学
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000325587