『坪内逍遥事典』(逍遥協会/編 平凡社 1986.5)をみましたが、「今後の新世界」「新世界」の項目はありませんでした。また『逍遥書誌』(滝田貞治/著 米山堂 1937)は中之島図書館所蔵でしたので、確認してもらいましたが、「今後の新世界」「災後の芸術界」(後述)ともに記載はありませんでした。
なお、1923(大正12)年12月に早稲田大学出版から出版された『学校用小脚本』ですが『坪内逍遥事典』に項目がたてられており、これによると内容は「文福茶釜」「小野道風」「道灌と欠血」「烏帽子折と猿の群れ」「若返りの泉」「人と狼」で、「今後の新世界」は収められていません。『学校用小脚本』は未所蔵ですが、当館所蔵の『逍遥選集 第9巻』(逍遥協会/編 1977:大正15年の復刻)に「若返りの泉」以外が収められています。
また、『坪内逍遥事典』の「児童劇論」の項目に逍遥が児童劇にかかわったのは1921(大正10)年から1924(大正13)年に「限られる」と記載されています。この間に発表したものとして
1「文化力としての童話術」『女性日本人』での論文(1921(大正10)年9月)→後、『芸術ト家庭ト社会』に所収
2『わがページェント劇』(1921(大正10)年 国本社)→「新民衆劇を起さんとする理由」他。「今後の新世界」はなし
3「児童劇の三種類」『早稲田文学』での論文(1922(大正11)年)
4「児童劇の上演に就いて」『童話研究』での論文(1923(大正12)年)
5『芸術ト家庭ト社会』(1923(大正12)年 実業之日本社)
6『学校用小脚本』(1923(大正12)年 早稲田大学出版部)
7『児童教育と演劇』(1923(大正12)年 早稲田大学出版部)
8『家庭用児童劇』(1922~1924年 早稲田大学出版部)→児童劇の脚本。1集から3集まであり。「今後の新世界」はなし
が挙げられています。
このうち、1および5、3は『逍遥選集 第9巻』に収録されています。2は主なものが『逍遥選集 第9巻』に収録されており、全文は中之島図書館が所蔵しています。7は1973年にこぐま社から復刻されたもの、8は大正時代に発行された全3集を所蔵しています。
『未完・坪内逍遥資料集3』(逍遥協会/編 2001.11)にある大正12年9月21日付の「逍遥日記」には「「大毎」の為ニ「災後の芸術界」起縞」とあります。この原稿は翌22日に石川欣一という人物に大毎へ托されています。「災後の芸術界」は「今後の新世界」と似ているような感じです。何か関係あるかもしれません。大阪毎日新聞は中之島図書館がマイクロフィルムで所蔵しています。お持ちの原稿と21日に起縞された文章をつきあわせると何かわかるかもしれません。
国際児童文学館へ問い合わせたところ、上記8つの論考についても所蔵しているとのことですが、該当するものは見当たりませんでした。同館の専門員によると、原稿が手書きかどうかわからないので断言できないが、発表までに「今後の新世界」という論題が変わっている可能性もゼロではないとのことです。
以下、国際児童文学館より
●参考資料
『日本児童文学大事典』(大阪国際児童文学館/編 大日本図書 1993.10) 「坪内逍遥」の項
『日本児童演劇史』(冨田博之/著 東京書籍 1976)
『家庭用児童劇』第1~3集(大正11~13年)
『学校用小脚本』(大正12年)
『児童教育と演劇』(大正12年)
『学校ト家庭ト社会』(大正12年)
『佛教用児童劇』(大正14年)
『児童劇集 上』(昭和2年)
上記いずれにおいても「今後の新世界」は記載なし
●調査結果
「今後の新世界」では記事を発見できず。
タイトルが変更されている可能性あり。内容がわかれば所蔵資料との照合が可能