レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年05月11日
- 登録日時
- 2023/10/24 18:25
- 更新日時
- 2023/11/27 14:02
- 管理番号
- 中央-1-0021677
- 質問
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解決
光は波長が短いほど屈折率が大きく、プリズムなどに応用されている。これは、短波長光が媒質に入射すると、長波長光よりも減速が大きい、ということと同義である。しかし、そのそもそもの原理、すなわち、媒質へ入射したときの減速が短波長ほど大きくなる原理が知りたい。
- 回答
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短波長光が媒質に入射する際、長波長光よりも減速が大きくなる(=屈折率が大きくなる)理由について、参考となる資料を紹介した。
●原理の大枠を理解するには、以下の資料の記述が分かりやすいと思われる。
・『高校数学でわかる光とレンズ 光の性質から、幾何光学、波動光学の核心まで』竹内淳/著 講談社 2016年
p28「屈折率が波長によって異なるのは、光と媒質(物質)との相互作用の大きさが波長によって異なるからです。」
・『よくわかる最新光工学の基本と仕組み 基礎から最新光学技術までよくわかる!』小野明/著 秀和システム 2022年
p51-52「物質中で光の進む速度がなぜ遅くなるのか」において、以下の説明あり。
「光は電磁波なので電場が振動しています。つまり、電荷があれば、必ず電荷が振動します。光の波長(すなわち振動数)によって物質構造の中で、「分子」、「イオン」、「原子の中の原子核と電子」が振動します。(中略)さて、原子核と電子の双極子は、強制的に振動させられているので抵抗があり、この抵抗が(式1-6)の誘電率です。抵抗が大きいと誘電率も大きくなって光の速度も遅くなります。通常の透明物質の場合周波数が高(波長の短い)い光ほど、振動しにくいので、屈折率が高くなります。このことを図示したのが図3-2-4の「分散:屈折率の波長依存性」です。振動数の高い、青から紫の光ほど屈折率は高くなり折れ曲がっています。」
・『物理なぜなぜ事典 2』江沢洋/編著 東京物理サークル/編著 日本評論社 2000年
p103-106「「空はなぜ青いか」についての、よく見られる説明の誤り」において、要約すると以下のような説明あり。
・光は電磁波であるため、軽い電子が光によって揺すぶられ、原子内で振動する。電荷が振動された結果、原子が二次的な電波を発射し、それがまわりに広がるのが光の「散乱」。
・この散乱強度は波長の4乗に反比例するため、短波長の方が強く散乱される。
(散乱は光が物質中で曲げられる現象であり、屈折が次々に起こることなので、屈折率が大きくなることと同義と思われる)
●また、数式等を用いて詳しく原理を理解したい、ということであれば、以下の資料が参考になる。
・『光学』谷田貝豊彦/著 朝倉書店 2017年
p7-9「1.3.4 プリズム」
プリズムの屈折についての数式が載っている。この数式から、振れ角は波長が長くなると小さくなる、ということが導き出されるよう。振れ角が屈折にあたるので、波長が長くなると屈折率が小さくなることを数式で表したもの。
・『講談社基礎物理学シリーズ 2 振動・波動』二宮正夫/[ほか]編 講談社 2009年
p147-149 なぜ光の波長に依存して屈折率の値が異なるのかについて、数式で原理を説明している。
・『ファインマン物理学 2 光.熱.波動』ファインマン/[ほか著] 岩波書店 1986年
p59-73 第6章 屈折率の本質
p59からp65にかけて、屈折率を物質の原子の性質と光の振動数との項で表す式を導いている。そしてこの式をいろいろの場合に適用すると、次のことが言えるらしい。
p66「しかしもうすこし丁寧に上の式を見ると、ωが増加するにつれて、分母から引き去るものがちょっと大きくなるので、屈折率もまた増加する。かくしてnは振動数とともにゆっくり増加する。青い光に対する屈折率は赤い光に対する屈折率よりも大きい。」
●上記『ファインマン物理学 2 光.熱.波動』の記述をもとに、分かりやすく原理を解説しているホームページがあるので、あわせて紹介した。
・「青い光のほうが赤い光より屈折率が大きいのはどうしてでしょう?」
http://natsci.kyokyo-u.ac.jp/~okihana/kaisetu/kussetu.html(2023.11.7最終確認)
- 回答プロセス
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●「長波長 短波長 屈折率」でインターネット検索
・「光の散乱・分散 わかりやすい高校物理の部屋」
http://www.wakariyasui.sakura.ne.jp/p/wave/kouha/hikaribunnsann.html(2023.11.7最終確認)
「可視光線が物質に侵入すると、一般に、波長が短い(振動数が大きい)光の方が光速が遅くなります。その理由は難しくて説明できません。ガラスなどを構成する原子では、赤色波より紫色波の方がガラス構成原子の固有振動数に近く、波を吸収してから再放出するまでに時間が掛かる、というような話です。大学に行って学んでください。」
その後「ホイヘンスの原理」を使って説明されている。
・「青い光のほうが赤い光より屈折率が大きいのはどうしてでしょう?」
http://natsci.kyokyo-u.ac.jp/~okihana/kaisetu/kussetu.html(2023.11.7最終確認)
京都教育大学沖花研究室のメンバーが「Web技術を用いた中学校理科第一分野教科書作り」として作成し、継続研究しているページ。この解説が一番わかりやすそう。
参考図書 ファインマン物理学Ⅱ 光・熱・波動 第6章 屈折率の本質 と記載あり。
⇒取り寄せて確認。
○『ファインマン物理学 2 光.熱.波動』ファインマン/[ほか著] 岩波書店 1986年
p59-73 第6章 屈折率の本質
p59からp65にかけて、屈折率を物質の原子の性質と光の振動数との項で表す式を導いている。そしてこの式をいろいろの場合に適用すると、次のことが言えるらしい。
p66「しかしもうすこし丁寧に上の式を見ると、ωが増加するにつれて、分母から引き去るものがちょっと大きくなるので、屈折率もまた増加する。かくしてnは振動数とともにゆっくり増加する。青い光に対する屈折率は赤い光に対する屈折率よりも大きい。」
・「波長が短い方が屈折率が大きいのはなぜですか?(Yahoo!知恵袋)」
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1056011665(2023.11.7最終確認)
回答として「ホイヘンスの原理」や「光の分散性」というキーワードが挙がってきている。
調査キーワード・分野
「光学」「光の分散」「ホイヘンスの原理」「屈折率」
日常の科学・物理の疑問系の本にも載っていそう。
●光学関係の本を見てみる
×『光と色のサイエンス 自然現象や名画などの身近な例から最新のテクノロジーまで』ニュートンプレス 2015年
p134-135「光の基本性質 分散」で波長の短い光ほど減速が大きいことについて書いてあるが、なぜそうなるのかの理由は説明なし。
×『光とは何か? 「光は電磁波」を実感 身近な現象から最先端研究までみるみる理解できる』江馬一弘/監修 ニュートンプレス 2007年
p18-19「身近な光の現象 光の分散①」で波長の短い光ほど減速が大きいことについて書いてあるが、なぜそうなるのかの理由は説明なし。
×『光のふしぎ 光を知れば,科学がわかる!』ニュートンプレス 2017年
×『光の科学』ニュートンプレス 2014年
○『高校数学でわかる光とレンズ 光の性質から、幾何光学、波動光学の核心まで』竹内淳/著 講談社 2016年
p28「屈折率が波長によって異なるのは、光と媒質(物質)との相互作用の大きさが波長によって異なるからです。」
○『よくわかる最新光工学の基本と仕組み 基礎から最新光学技術までよくわかる!』小野明/著 秀和システム 2022年
p51-52「物質中で光の進む速度がなぜ遅くなるのか」において、以下の説明あり。
「光は電磁波なので電場が振動しています。つまり、電荷があれば、必ず電荷が振動します。光の波長(すなわち振動数)によって物質構造の中で、「分子」、「イオン」、「原子の中の原子核と電子」が振動します。(中略)さて、原子核と電子の双極子は、強制的に振動させられているので抵抗があり、この抵抗が(式1-6)の誘電率です。抵抗が大きいと誘電率も大きくなって光の速度も遅くなります。通常の透明物質の場合周波数が高(波長の短い)い光ほど、振動しにくいので、屈折率が高くなります。このことを図示したのが図3-2-4の「分散:屈折率の波長依存性」です。振動数の高い、青から紫の光ほど屈折率は高くなり折れ曲がっています。」
○『光学』谷田貝豊彦/著 朝倉書店 2017年
p7-9「1.3.4 プリズム」
プリズムの屈折についての数式が載っている。この数式から、振れ角は波長が長くなると小さくなる、ということが導き出されるよう。振れ角が屈折にあたるので、波長が長くなると屈折率が小さくなることを数式で表したもの。
●物理関係の本も見てみる
×『光と磁気 現代人の物理1』佐藤勝昭/著 朝倉書店 1988年
△『いやでも物理が面白くなる 交通信号「止まれ」はなぜどこの国でも赤なのか?』志村史夫/著 講談社 2001年
p108-109「ところで、図3・7に示すように、光の色(波長)によって、なぜ振れ角が異なるのか、という疑問が生じると思われるが、それについては割愛する。どうしても知りたいと思う(そういう気持ちはとても大切で、私は大いに敬意を表したい)読者は、章末に掲げる参考図書2や4を読んでいただきたい。ここでは、波長が短い光ほど振れ角が大きい、あるいは散乱されやすい(進路を邪魔されやすい)、ということだけ頭に入れておいてほしい。」
→章末の参考図書2・4はさいたま市所蔵なしだった。
○『物理なぜなぜ事典 2』江沢洋/編著 東京物理サークル/編著 日本評論社 2000年
p103-106「「空はなぜ青いか」についての、よく見られる説明の誤り」において、要約すると以下のような説明あり。
・光は電磁波であるため、軽い電子が光によって揺すぶられ、原子内で振動する。電荷が振動された結果、原子が二次的な電波を発射し、それがまわりに広がるのが光の「散乱」。
・この散乱強度は波長の4乗に反比例するため、短波長の方が強く散乱される。
(散乱は光が物質中で曲げられる現象であり、屈折が次々に起こることなので、屈折率が大きくなることと同義と思われる)
○『講談社基礎物理学シリーズ 2 振動・波動』二宮正夫/[ほか]編 講談社 2009年
p147-149 なぜ光の波長に依存して屈折率の値が異なるのかについて、数式で原理を説明している。
- 事前調査事項
- NDC
-
- 光学 (425 10版)
- 参考資料
- キーワード
-
- プリズム
- 短波長
- 長波長
- 光学
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000340115