「多頭馬頭観音」という名称(またはカテゴリー)の馬頭観音を紹介する資料を確認することはできませんでしたが、『日本石仏事典 第2版』(庚申懇話会/編 雄山閣出版 1995)に次の記述を確認しました。
「馬頭観音」
(中略)「その像容は、経軌によって一面二臂像・三面二臂像・同四臂像・同八臂像・四面二臂像・同八臂像などの異像が説かれるが、いずれも赤色で忿怒相、三眼で牙があるとされる。」(p.19-21)
当館でも馬頭観音に関する資料は多数所蔵しており、今回の調査の課程で、複数の顔がある馬頭観音について記載を確認した資料もあります。県内の馬頭観音の状況について総論的にまとめられている資料、記述が多い資料、所在地の情報がある資料は次のとおりです。
(複数の顔がある馬頭観音の記載を確認した資料については、その旨を付記しています。)
・『下野の野仏 緊急碑塔類調査報告 栃木県民俗資料調査報告書 第9集』(栃木県教育委員会/編、発行 1973)
本文中「Ⅲ 主要碑塔類の分布と年代別造立」の章に「馬頭観音」の項があります。(p.33-36)
本県における馬頭観音信仰の考察と、県内市町村別の像の分布図の掲載があります。
また、「Ⅴ 栃木県碑塔類一覧」の章に、「①家畜の健康祈願供養に関するもの碑塔類」の項があり、県内の馬頭観音の建立年月日と所在地が記載されています。(p.50-76)
件数は2132件です。(昭和47年11月15日現在)
・『とちぎの野仏』(成島行雄/著 花神社 1977)
「黒磯市」の項で、「1 百村忿怒馬頭」「2 時代鑑馬頭観音」「3 泣きべそ馬頭尊」の3体の馬頭観音が紹介されています。(p.170-180)
このうち、「2 時代鑑馬頭観音」は複数の顔があります。(観音像の面の頭上に馬の面が3つ)ほか2体は、観音像の面の頭上に馬の面が一つの石仏です。
・『那須の石仏 芦野編』(那須歴史探訪館/編 那須町教育委員会 2004)
栃木県那須町の芦野地域(那須町東部地区)の石仏に関する現状調査をまとめた資料です。「 石仏の種類」の項に、「(1)家畜の健康供養祈願 ①馬頭観世音(馬頭尊・馬頭大神)」の項があります。(p.5)
また、地区別石仏の特徴がまとめられており、写真はありませんが、種類、造立年、造形、大きさ、銘文が記載されています。
・『矢板の石仏と塔碑』(矢板市教育委員会/編 矢板市教育委員会 1998)
「一 家畜の健康安全供養塔」に「(一)馬頭観音」の項があり、名称・刻銘、建立年月日、所在地が記載されています。(p.2-19)
馬頭観音の件数は362件です。
・『矢板の石仏と塔碑 地区別一覧』(矢板市教育委員会/編 矢板市教育委員会 1999)
上記『矢板の石仏と塔碑』に掲載されている仏石等の情報を地区ごとの表に編集した資料です。名称や場所の他、大きさ、形状・素材、刻銘が記載されています。
・『おおひらの野仏』(中島昭/著 出版者不明 1979)
「第一部 野仏のいろいろ」の中に「4 馬頭観音さま」の項があります。(p.36-45)
馬頭観音信仰についての解説と、町内の馬頭観音についての解説があります。解説の中で「(馬頭観音塔の)顔は三面が本式」とする『路傍の石仏』(武田久吉/著 第一法規出版 1975)の記述を引用しています。
p.38には「本式な馬頭観音塔(下高島)」というキャプションとともに、三面の観音像の写真があります。
・『二宮の野仏』(海老沢雄蔵/編 海老沢雄蔵 1980)
「1.家畜の健康祈願と供養に関するもの」の中に「(1)馬頭観音」の項があり、馬頭観音についての解説があります。(p.1-2)
また、p.48-69に「所在地一覧」があり、町内の野仏の名称、建設年月日を地区ごとにまとめています。
・『上三川町の野仏』(上三川町教育委員会社会教育課文化係/編 上三川町教育委員会 1983)
「馬頭観音」の項で、町内の5つの馬頭観音について解説しています。(p.4-6)
このうち、「(3)多功(下多功不動尊前)」の項では、三面の観音像が紹介されています。(p.5)