レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年02月18日
- 登録日時
- 2022/09/22 00:30
- 更新日時
- 2023/12/16 00:30
- 管理番号
- 3A22007946
- 質問
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解決
文楽や歌舞伎の演目『夏祭浪花鑑』の七段目:長町裏(通称:泥場) のバックの泥田に生えている植物の名称を知りたい。
- 回答
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人形浄瑠璃や歌舞伎に関する資料で、長町裏の場面の背景に生えている植物について記載のあった資料をご紹介します。資料により、カボチャやヘチマ等とされていますが、どの植物にするべきか決まりがあるのかどうかは不明です。
(1) 『夏祭浪花鑑 伊勢音頭恋寝刃(歌舞伎オン・ステージ 3)』 (松崎 仁/編著 白水社 1987.1)
「芸談」のp.280-283「『夏祭浪花鑑』の団七 初代中村吉右衛門」の<長町裏殺しの場>の項p.281に「正面は南瓜のからんだ竹垣、うしろは泥田を隔てた黒塀」「平舞台も(中略)蓮の葉を使う誂えなどもありますが」とあります。
(2) 『国立文楽劇場 第119回』 (国立文楽劇場営業課/編集 日本芸術文化振興会 2010.7)
p.6-7成瀬國晴「「夏祭浪花鑑・長町裏の段」について」のp.7に「上方浮世絵師・寿好堂梅国(文化十三年[一八一六]-文政九年[一八二六])が描いた上方役者絵『夏祭浪花鑑』(文政六年・一八二三。四月角の芝居上演)の三代中村歌右衛門の団七九郎兵衛、初代市川蝦十郎の義平二次が演じた「泥場」の絵にも夏祭提灯と共にかぼちゃ畠が背景に描かれている。(中略)今回の「長町裏の段」の泥場の背景にも黄色いかぼちゃの花々が井戸の左右に見られる。」とあります。また「「長町裏の段」舞台背景」と題された小さな写真が掲載されています。
(3) 『夏祭と伊勢音頭』 (片岡 仁左衛門/著 向陽書房 1983.12)
巻末に釘町久磨次作製の「道具帳」が掲載されており、「夏祭浪花鑑」ほか2作の背景画が絵で説明されています。「夏祭浪花鑑 三幕」の「三幕目 長町裏の場」の背景画の説明文の中に「かぼちゃ葉付」「蓮の葉」とあります。
(4) 『戯曲の大阪』 (鷲谷 樗風/著 大阪新聞社 1946)
「二十七、夏祭浪花鑑」のp.191に、長町裏の場の舞台について、「平舞台の中央に四ツ目垣が一杯にあって、それに絲瓜がからんでいる。」とあります。
(5) 『Core Ethics』vol.6 (立命館大学大学院先端総合学術研究科 2010)
https://www.r-gscefs.jp/?p=1367 (2023.11.27確認)
p.65-74 大貫菜穂「上方浮世絵にみるほりものの発露―梅国と北州の「夏祭浪花鑑」より―」
浮世絵における団七九郎兵衛のほりものに関する論文です。p.68に「この〔図3-i〕では、糸瓜と思われる植物の夏の演出や」と記述があります。〔図3-i〕はp.72に掲載されている、豊川梅国の浮世絵です。
上記の浮世絵は、以下のサイトにてカラーで閲覧できます。
(6) ARC浮世絵ポータルデータベース/Ukiyo-e:「団七九郎兵衛 中村歌右衛門」
https://www.dh-jac.net/db/nishikie/MRAH-JP.06086a/portal/ (2023.11.27確認)
- 回答プロセス
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1.「国立国会図書館デジタルコレクション」にて、利用者事前調査資料「団七九郎兵衛 (見立三十六句撰)」(資料(7))を確認。「朝露仁汚天凉瓜之汚 翁」と添えられている。
2.同様に利用者事前調査資料である『原寸復刻「浪花百景」』(資料(8))を確認。p.101「第七十四景 長町裏遠見難波蔵」にかぼちゃが描かれており、「第三章 作品解説編」のp.149に当該絵の解説があり、「南瓜が実るのどかな田畑を突風が吹き抜ける」とあるのを確認。
3.当館所蔵検索システムにて、タイトルを“夏祭浪花鑑”として検索。資料(1)が見つかる。
4.当館所蔵検索システムにて、フリーワードを“夏祭浪花鑑 (背景+道具+植物)”で検索。新たな有用資料見つからず。
5.プロセス3でヒットした国立文楽劇場発行の床本とセットで発売されたパンフレットを確認。資料(2)が見つかる。
6.「国立国会図書館デジタルコレクション」にて、キーワード“夏祭浪花鑑×南瓜”で検索するが、当館で確認可能な有用資料見つからず。
7.「国立国会図書館デジタルコレクション」にて、キーワード“夏祭浪花鑑×瓜”で検索するが、有用資料見つからず。
8.「Googleブックス」にて、“夏祭浪花鑑×長町×カボチャ”、“夏祭浪花鑑×長町×かぼちゃ”、“夏祭浪花鑑×長町×南瓜”で検索するが、新たな有用資料見つからず。
8.「Googleブックス」にて、“夏祭浪花鑑 長町 瓜”で検索、有用情報なし。
9.「国立国会図書館サーチ」をキーワード“夏祭浪花鑑×長町”で検索、資料(4)が見つかる。
10.当館蔵書検索システムにて、フリーワード“道具帳”で検索、資料(3)が見つかる。
- 事前調査事項
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人形浄瑠璃や歌舞伎の『夏祭浪花鑑』の七段目「長町裏(通称:泥場)」を描いた安政四年刊行の歌川国貞(三代豊国)画の『見立三十六句撰』シリーズの《団七九郎兵衛》があり、この絵の撰の俳句は、松尾芭蕉の『笈日記』出典の「朝露仁泥天凉瓜之泥(朝露に汚れて涼し瓜の泥)翁」が載せられ、長町裏の畑の作物は「瓜」であったと考えられる。
二〇二〇年刊の『原寸復刻「浪花百景」』では南瓜(かぼちゃ)とあり。
【当館にて確認】
(7) 国立国会図書館デジタルコレクション「団七九郎兵衛 (見立三十六句撰)」 (香蝶楼豊国 相ト 安政4) (インターネット公開) https://dl.ndl.go.jp/pid/1309074 (2023.11.27確認)
「朝露仁泥天凉瓜之汚 翁」とあり。
(8) 『原寸復刻「浪花百景」集成』 (橋爪 節也/編著 創元社 2020.11)
p.101「第七十四景 長町裏遠見難波蔵」にかぼちゃが描かれており、「第三章 作品解説編」のp.149に当該絵の解説があり、「南瓜が実るのどかな田畑を突風が吹き抜ける」とあり。「大阪市立図書館デジタルアーカイブ」で閲覧できます http://image.oml.city.osaka.lg.jp/archive/detail?cls=ancient&pkey=p0176001
- NDC
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- 歌舞伎 (774 9版)
- 人形劇 (777 9版)
- 参考資料
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- 当館書誌ID <0000595169> 夏祭浪花鑑 伊勢音頭恋寝刃(歌舞伎オン・ステージ 3) 松崎 仁/編著 白水社 1987.1 9784560032732 資料(1)
- 当館書誌ID <0012304809> 国立文楽劇場 第119回 国立文楽劇場営業課/編集 日本芸術文化振興会 2010.7 資料(2)
- 当館書誌ID <0011352930> 夏祭と伊勢音頭 片岡 仁左衛門/著 向陽書房 1983.12 9784906108077 資料(3)
- 当館書誌ID <0000328221> 戯曲の大阪 鷲谷 樗風/著 大阪新聞社 1946 資料(4)
- 当館書誌ID <0014949783> 原寸復刻「浪花百景」集成 橋爪 節也/編著 創元社 2020.11 978-4-422-71020-4 資料(8) ※質問者事前確認資料
- 『Core Ethics』vol.6 (立命館大学大学院先端総合学術研究科 2010) https://www.r-gscefs.jp/?p=1367 (2023.11.27確認) 資料(5)
- ARC浮世絵ポータルデータベース/Ukiyo-e:「団七九郎兵衛 中村歌右衛門」 https://www.dh-jac.net/db/nishikie/MRAH-JP.06086a/portal/ (2023.11.27確認) 資料(6)
- 国立国会図書館デジタルコレクション「団七九郎兵衛 (見立三十六句撰)」 (香蝶楼豊国 相ト 安政4) (インターネット公開) https://dl.ndl.go.jp/pid/1309074 (2023.11.27確認) 資料(7) ※質問者事前確認資料
- キーワード
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- 夏祭浪花鑑
- 長町裏
- 泥場
- 道具帳
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000321622