レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022.6.10
- 登録日時
- 2022/09/04 15:46
- 更新日時
- 2023/01/19 13:26
- 管理番号
- 青山2022-006
- 質問
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解決
「婚礼の踊り」(ブリューゲル/画 1566年 デトロイト美術館蔵)に描かれている男性が、股間に何か飾りのようなものをつけているように見えるが、これは何か。
※「野外での農民の婚礼の踊り」「農民の婚礼の踊り」等、資料によって邦題の表現は異なる。
- 回答
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コッドピース(codpiece)。日本語では股袋と訳される。
股間の前開き部分を覆う布のこと。16世紀には中に詰め物を入れ、股間を誇張する形になった。
次の資料を紹介した。
1.『名画に見る男のファッション』(中野京子/著 KADOKAWA 2014.3)…pp63-65
2.『ブリューゲルの世界』(森洋子/著 新潮社 2017.4)…p129
3.『世界服飾大図鑑』(DK社/編 河出書房新社 2020.10)…p79,p88,p89,p90,p100,p101,p440
- 回答プロセス
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1.服装に関することなので、請求記号「383」の棚を探したが、関連記述は見つけられず。
2.ブリューゲルに関する資料や、同時期の絵画を扱った資料に記述があるのではないかと考え、請求番号「723」の棚を調査。
(1)『名画に見る男のファッション』(中野京子/著 KADOKAWA 2014.3)
pp60-65:「悪趣味のきわみ ティツィアーノ・ヴェチェリオ『皇帝カール5世と猟犬』」
…pp63-64「コドピースの強調は、これまた傭兵たちに源があるらしい。戦場で大事なところを保護する金属ケースが「かっこいい」とされ、またたく間に支配者階級へ拡がるにつれ、素材も木綿になり絹になり、緞子になり、毛皮になっていった。金糸銀糸で刺繍したり、形も巻貝型やら何やらバラエティに富んだ。何しろ十五世紀から二百年間も続いた、ヨーロッパ全土での大流行だから、どんどん進化したし、綿や羽毛を詰めて巨大化していった。しまいにはハンカチや金貨、果物まで入れる御仁もいたという。「見栄のはりすぎ」「下品きわまりない」と非難するお堅い面々もいたが、誰も聞く耳を持たなかった。脚線美の一部としてなくてはならぬ装飾と考えられていたのだ。」と記述あり。
…p65「かつてコドピースは日本語訳で「股袋」と書かれていた。」と記述あり。
(2)『ブリューゲルの世界』(森洋子/著 新潮社 2017.4)
pp106-132:「第4章 農民の季節の仕事と楽しみ」に「野外での農民の婚礼の踊り」が掲載されており、解説が付されていた。
…p129「股袋はズボンの構造でもあり、その誇張は貴族も含め、男性の強靭さの象徴でした。」と記述あり。
3.フリーワード「西洋×服装(or服飾)」「ヨーロッパ×服装(or服飾)」「世界×服装(or服飾)」で資料検索。中央図書館の所蔵資料を取り寄せ、記述を確認。
(3)『世界服飾大図鑑』(DK社/編 河出書房新社 2020.10)
…p79「1540年 コッドピースのサイズと装飾がピークに達する。男性のホーズの2本の脚の間のギャツプを覆うものだが、詰め物と成形により、生殖器部分を隠すというよりもむしろ強調した。」と記述あり。
…p89にコッドピースがトピックとして取り上げられており、下記記述あり。
「コッドピースの起源は、ダブレットが短くなった15世紀後半に、脚を覆うセパレートのホーズの間をつないだ三角形の布にある。まもなくこの布に詰め物がされるようになり、ブリーチズの脚と脚の隙間を埋める突出した扇情的なコッドピースが完成した。これは速やかに男性服の通常の構成要素となり、1500年代の終わりまで多くの国で、また社会階層の別なく流行した。仕立て屋は衣服の他の部分と同じく、コッドピースにも創意工夫を凝らすようになった。隠しポケットにすることもできたし、針山として使われることさえあった。」
…p88、p89、p100、p90、p101にコッドピースを身に着けた男性の絵画、衣装写真の掲載あり。
…p440に用語解説あり。「コッドピース CODPIECE 股袋。もとは男性のロング・ホーズあるいはトランクホーズの股の間に垂らした布。16世紀には中に詰め物を入れ、股間を誇張する形になった。」
※調査したが記述がなかった資料
・『巨匠の世界 ブリューゲル』(ティモシ―・フート/著 タイムライフブックス 1969.4)
・『新潮美術文庫8 ブリューゲル』(日本アート・センター/編 新潮社 1970.3)
・『ブリューゲルへの招待』(朝日新聞出版/編 朝日新聞出版 2017.4)
・『新版 ファッションの歴史』(千村典生/著 鎌倉書房 1978.3)
- 事前調査事項
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質問時に持参された資料は『新・おはなし名画シリーズ21 ブリューゲルと村びとたち』(森田義之/監修 博雅堂出版 2010.6)。pp14-15に「婚礼の踊り」掲載。
- NDC
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- 衣食住の習俗 (383)
- 洋画 (723)
- 参考資料
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中野京子 著 , 中野, 京子. 名画に見る男のファッション. KADOKAWA, 2014.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I025337431-00 , ISBN 9784041107232 -
森洋子 著 , 森, 洋子, 1936-. ブリューゲルの世界. 新潮社, 2017. (とんぼの本)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I028089381-00 , ISBN 9784106022746 -
DK社 編 , 深井晃子 日本語版監修 , 秋山淑子, 黒田眞知, 佐々木紀子, 中尾眞樹, 中川泉, 森冨美子 訳 , 柳嶋覚子 [ほか] 日本語版編集 , 深井, 晃子, 1943- , 秋山, 淑子 , 黒田, 眞知 , 佐々木, 紀子, 翻訳家 , 中尾, 真樹, 1970- , 中川, 泉 , 森, 冨美子 , Dorling Kindersley, Inc. 世界服飾大図鑑 : コンパクト版. 河出書房新社, 2020.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I030666726-00 , ISBN 9784309256603
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中野京子 著 , 中野, 京子. 名画に見る男のファッション. KADOKAWA, 2014.
- キーワード
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- ピーテル・ブリューゲル
- 絵画
- 男性
- ヨーロッパ
- 服装
- 服飾
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000320890