レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2012年05月17日
- 登録日時
- 2012/09/06 14:22
- 更新日時
- 2012/09/06 14:22
- 管理番号
- r133
- 質問
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解決
永井荷風のペンネームに因む「敗荷残柳」という言葉の出典が知りたい。
- 回答
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『荷風全集 第27巻』(永井荷風/著 稲垣達郎/〔ほか〕編 岩波書店 1995)p39にある、「其41 明治45年7月8日井上精一宛 木挽町池田病院発端書」の書簡の中に、「意気とみに銷沈いよいよ残柳舎敗荷と改名致可くや。」とあり、署名にも「敗荷」とあります。
明治41年7月8日以降の井上精一宛の書簡も調べてみましたが、出典やペンネームについて触れているものはありませんでした。
永井荷風のペンネームについては諸説があるようです。
『永井荷風という生き方』 (松本哉/著 集英社 2006)p11の「処女作とペンネーム」では、「初恋の相手の名前がお蓮さんといい、「蓮」と同じ意味を持つ「荷」という漢字を持ってきて「荷風」という雅号が出来た。ふつう「荷」をハスと思う人は少ないが、俳句の世界では「荷」をハスと当たり前のように受け取っている。秋の季語に「やれはす」というのがあり、漢字で「敗荷」(または「破れ蓮」)と書かれるのである。」とあります。
『図説永井荷風』(川本三郎/著 湯川説子/著 河出書房新社 2005)では、「広津柳浪 の門を叩いたのは、明治31年9月のことである。柳浪は、深刻小説、悲惨小説で知られていた作家で、「荷風」の号は柳浪との対句として付けられたともいわれている。」とあります。
『荷風全集 月報』(永井荷風/著 岩波書店 1962)の岡野他家夫「荷風の雅号と初期の作」では、「和漢洋の文芸に親しみ、とくに中国の詩を嗜読した荷風のことだから、さだめし其の雅号にも出典と由来がありそうに考えられよう。荷風という雅号は、おそらく中国の詩藻あたりから撰んだものであろうと、僕も考えていた。併しそれは案外な理由からであることがわかった。(省略)尋常中学の二三年級の頃、下谷の第二病院に入院した時、一人の看護婦を見染めた。(省略)看護婦の名前がお蓮と云うので、それに近いものをと考えた末に、荷風小史と云う字を得た。」とあります。
この他、以下の本を調査しましたが、「敗荷残柳」の出典に関するものは見つかりませんでした。
・『漢詩百首 日本語を豊かに』(高橋睦郎/著 中央公論新社 2007)
・『漢詩の事典』( 松浦友久/編 植木久行/〔ほか〕著 大修館書店 1999)
・『漢詩名句辞典』(鎌田正/著 米山寅太郎/著 大修館書店 1980)
・『岩波漢詩紀行辞典』(竹内実/編著 岩波書店 2006)
・『荷風余話』(相磯凌霜/著 小出昌洋/編 岩波書店 2010)
・『角川大字源』(尾崎雄二郎/〔ほか〕編 角川書店 1992)
・『大修館現代漢和辞典』(木村秀次/編 黒沢弘光/編 机上版 大修館書店 1996)
・『故事名言・由来・ことわざ総解説』(自由国民編集部/編 自由国民社 1970)
・『新明解四字熟語辞典』(三省堂編修所/編 三省堂 1998)
・『短歌俳句生活表現辞典 歳時記版』(大岡信/監修 遊子館 2003)
・『短歌俳句植物表現辞典 歳時記版』(大岡信/監修 遊子館 2002)
・『短歌俳句自然表現辞典 歳時記版』(大岡信/監修 遊子館 2002)
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本文学 (910 9版)
- 参考資料
- キーワード
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- 永井荷風
- 敗荷残柳
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000110999