レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016年04月12日
- 登録日時
- 2023/05/14 14:58
- 更新日時
- 2023/06/16 10:28
- 管理番号
- 岩手-402
- 質問
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解決
「チャシ」とはアイヌ文化における「砦」や「城」のような場所をさす言葉だが、岩手県内にも「チャシ」または「蝦夷館(えぞだて)」と呼ばれる遺跡が数多く存在するようだ。この岩手県内の「チャシ」「蝦夷館」のいわれについて知りたい。
- 回答
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資料によれば、明治~大正期の北日本古代史研究においては「蝦夷=アイヌ」とする学説が有力であったため、「チャシ」や「館」などの用語も混用されていたとのこと。そのため岩手を含む東北地方にも「チャシ」と呼ばれる蝦夷関連遺跡が残っている、と説明している。
このことについて記載のある資料、および岩手県内の「チャシ」「蝦夷館」の詳細について書かれた資料などを紹介した。" "内は資料からの引用。
・『日本城郭大系2』新人物往来社 1980.7
p.317「蝦夷館雑考」
⇒「チャシ」「蝦夷館」の研究史について記載あり。
"チャシとはアイヌ語であるが、東北地方のチャシとは、小規模で構造単純、居館者不明のタテ(館)につけた名称であった。その理由は古代蝦夷をアイヌとし、東北地方の遺跡もアイヌの所産とする考えがあったからである。"
・『岩手史学研究 42号』岩手史学会 1963.6
p.61~68「みちのくの文化二題」>「(一)蝦夷館」及川 大渓∥著
⇒「チャシ」「蝦夷館」とアイヌの関係について記載あり。
・『古代蝦夷の考古学』工藤 雅樹∥著 吉川弘文館 1998.1
p.324~327「第三節 平安時代高地性集落と環濠集落」
⇒「チャシ」、「蝦夷館」などと呼ばれる東北地方の集落の研究史について記載あり。
"東北地方に防御された集落あるいは逃込みの集落が存在し〔中略〕現在それらのあるものはチャシ、館、蝦夷館などと呼ばれている。"
・『岩手百科事典』岩手放送岩手百科事典発行本部∥編 岩手放送 1988.10
p.485「チャシ」
"県内の各地にチャシといわれる堀や土塁をめぐらしたとりでのようなところが多く所在する。それは中世戦国時代に各地の豪族が設けた〔中略〕近世の城郭のできる前の館といわれるもので、アイヌと関係あるものではない。明治から大正のころ、古代東北に住んでいた蝦夷がアイヌ人であるとの見解から、県内の地名にチャシに語源を有する江刺・茶臼などがあるとしたことから、館とチャシと混用されたと考えられる。"
・『蝦夷の世界』大塚 初重∥[ほか]著 山川出版社 1991.4
p.58~59
"地元でふるくから蝦夷館などと呼んできた遺跡であります。〔中略〕これらの遺跡の基本的な形の上の特徴は、ひとことでいえば次に述べる北海道のチャシにきわめて類似した形態であります。"
・『日本の城辞典 日本全国一万三十八古城址総覧』日本城址研究会∥編著 新星出版社 2021.7
p.10「概説/北海道・東北における城の特色」
"北海道には、「チャシ」と呼ばれる城郭風の遺跡が多く出土している。〔中略〕そもそも祭祀や談判の場として使われ始めたと考えられている。〔中略〕シャクシャインの勢力範囲と分布が重なることから、アイヌ民族と松前藩との抗争に際して築かれたものも少なくないと考えられている。"
"東北地方各県に分布する「蝦夷館」は、チャシとも伝えられる。これらは蝦夷の最前線を示している。"
・『南部諸城の研究』沼舘 愛三∥編著 伊吉書院 1981.3
⇒「蝦夷館」と呼ばれる城館の特性や漸移地帯、また各舘の位置や沿革、縄張り図なども記載。
p.7~8「城館の分析」
"蝦夷館は生活を主とし戦闘を従とした。故に彼等は食物の取得容易な河岸若くは河谷の低地に聚楽を営み其附近に防衛施設をなした。"
p.34~38「南部諸城の特長」>「2、蝦夷館の特性と其利用」
"南部領内に於て蝦夷館は無数に存在している。そして其の多くは後世の武士によりて利用され或は改造されている"
"数次の討伐によって蝦夷が北方に漸移し糠部以北に蟄居した。〔中略〕従って岩手紫波以南に於ては其色彩を認めるが純然たる蝦夷館は少ない。"
- 回答プロセス
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①城郭に関する資料を調査。
②古代蝦夷やアイヌ民族に関する資料を調査。
③岩手県に関する事典類を調査。
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本の建築 (521)
- 日本史 (210)
- 東北地方 (212)
- 参考資料
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平井聖 [ほか]編修 , 平井, 聖, 1929-. 日本城郭大系 第2巻. 新人物往来社, 1980.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001461839-00 (当館請求記号:K520/ニ4/2) -
工藤雅樹 著 , 工藤, 雅樹, 1937-2010. 古代蝦夷の考古学. 吉川弘文館, 1998.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002662755-00 , ISBN 4642023194 (当館請求記号:K203/クド) -
岩手放送岩手百科事典発行本部 編 , 岩手放送株式会社. 岩手百科事典 新版. 岩手放送, 1988.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001957491-00 (当館請求記号:KR030/イ1/2) -
工藤 雅樹 〔ほか〕著 , 工藤‖雅樹. みちのく古代蝦夷の世界. 山川出版社, 1991.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I036180454-00 (当館請求記号:K203/ク1/2) -
日本城址研究会 編著 , 日本城址研究会. 日本の城辞典 : 日本全国一万三十八古城址総覧. 新星出版社, 2021.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I031495541-00 , ISBN 9784405108127 (当館請求記号:R521.823/ニホ) -
沼館愛三 編著 , 沼館, 愛三, 1887-. 南部諸城の研究. 伊吉書院, 1981.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001521753-00 (当館請求記号:K520/ヌ1/2)
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平井聖 [ほか]編修 , 平井, 聖, 1929-. 日本城郭大系 第2巻. 新人物往来社, 1980.
- キーワード
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- チャシ
- 蝦夷館
- 蝦夷
- アイヌ
- 城
- 照会先
- 寄与者
- 備考
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【その他参考資料】
・『岩手史学研究』(※合冊資料、第41-45号) 岩手史学会 1962-1964
当館請求記号:KS21/イ29
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000333136