地方公営企業ならびに公共事業における「公共性」と「経済性」ならびに「効率性」を含めて文献を調査しました。以下に関連性があると思われる文献(単行本)も含めて紹介します。
1.単行本
・『地方公営企業経営論 水道事業の統合と広域化』(石原俊彦ほか/著 関西学院大学出版会 2011.3)
はしがきには、「上下水道事業を中心に、わが国地方公営企業の経営と会計を体系的に見直し、自治体関係者や住民が、喫緊の課題として認識しなければならない諸問題と解決の方策を整理」し、「上下水道事業はほとんどの場合、地方自治体しかサービスを提供することができないという特徴をもっている。それゆえ筆者は、地方自治体が担うべき最も重要なミッションである「水の安定供給」という公益性についての意識を堅持し、加えて効率性や有効性といった地方公営企業全体に関連する経営上の思考を踏まえて本書を完成しようと試みた」と記されています。
・『地方公営企業会計論』(瓦田太賀四/著 清文社 2005.5)
分析の対象を地方公営企業法適用企業のみに限定し、そこにおける会計の基本原則を分析することによって、他の類似事業への適応可能性を検討。多様な組織形態の下で公益事業に従事している人、事業研究者に参考になることを目的。
・『地方公営企業・第三セクター等のための抜本改革実務ハンドブック』(地方公営企業制度研究会/編集 ぎょうせい 2010.1)
公営企業・第三セクターの概要や、それらの抜本改革が必要とされる理由・背景、公営企業の抜本改革と経営健全化の具体策などを解説。第3章は「公営企業の抜本改革と経営健全化の具体策」という題目になっています。
・『公的組織の経営改善ハンドブック』(松田智幸/編著 中央経済社 2008.3)
国民の生活様式は過去と比較しても大きく様変わりし、「これらの流れは、「公共性と経済性の両立」を強く望まれる官公庁や公的医療機関にとって大変なチャレンジを余儀なくされている」とし、第2編には公的医療機関を第3編には教育機関(大学)を取り上げています。
2.雑誌
・『都市問題』80(12)(東京市政調査会 1989年12月 請求記号:P31/22)
若干古い資料になりますが、「都市行財政の公共性と効率性」と題した主集が組まれています。「公共事業の「公共性」と「効率性」」(山田明/著、p.37-48)、「地方公営企業経営と「経済性」」(大坂健/著、p.49-60)など6編の論文を収録しています。
※下記の文献は大阪府立中之島図書館の所蔵資料です。
・「公営企業決算分析(上)上水道、料金格差は最大12倍、簡易水道で31倍」:『日経グローカル』131(日本経済新聞社産業地域研究所2009.9)p.34-41
3.インターネットで閲覧可能な文献
・「地方公営企業の経済学」衣笠達夫/著
・「地方公営企業における経営改革」平野誠也/著
・「地方公営企業の経営効率化対策の政策評価について- 新潟県企業局経営改革プログラム(工業用水道事業・電気事業)の事例-」戒能一成/著
4.その他関連があると思われる文献(単行本)
・『公共経営論』(田尾雅夫/著 木鐸社 2010.2)
「本書の意図するところは、公共にある組織、さらに一般的にいえば公共セクターの組織を企業のように経営できるかを、真正面から問いかけることである」とはしがきに述べられています。
・『社会的企業が拓く市民的公共性の新次元 持続可能な経済・社会システムへの「もう一つの構造改革」』(粕谷信次/著 時潮社 2006.11)
企業セクターと政府セクターに抗して台頭する第三セクター。ステレオタイプ化した二分法を打破し、両対立項の中間領域・次元を創出し、広げていくことに「新しい歴史主体」形成の可能性を見る、社会的企業促進のための基本書。
・『共生地域社会と公共経営 市民が創る新たな公共性,地域密着型NPOの挑戦』(重本直利ほか/編著 晃洋書房 2010.5)
設立15周年を迎えるNPO法人・洛西文化ネットワークの歴史を振り返りながら、「行政経営」における行政的合理性、「企業経営」における経済的合理性を超えた、社会的合理性からの「公共経営」について論じる。
・『現代公益事業の規制と競争 規制緩和への新潮流』(公益事業学会/編 電力新報社 1989.10)
電気事業やガス産業、運輸サービス業などいわゆる「公益事業」に関する規制緩和や課題などに関する文献。
以上、一部文献を除いて比較的出版年の新しい資料を紹介しました。
最後になりますが、水道事業の運営に関する資料もあります。水道事業に従事されているということですので参考までに3件紹介します。
・『日本の水道事業の効率性分析』(中山徳良/著 多賀出版 2003.11、請求記号:518.1/206N)
わが国の水道事業の非効率性に焦点を当てて研究。非効率性を、包絡分析法(DEA)、確率的フロンティア(SF)、一般化費用関数というツールを用いて計測し、水道事業政策の基礎となるような数量的資料を提供する。
・『動き始めた水道ビジョン 課題別アクションプログラム』(水道ビジョン研究会/監修 水道産業新聞社 2005.6、請求記号:518.1/299N)
第3編「テーマ別の主要施策と最近の取り組み」の項目に「新たな広域化の推進」や「多様な経営形態」に関する記述があります。
・『競争環境下の水道事業 公営事業改革と消費者選択』(楠田昭二/著 唯学書房 2011.4、請求記号:518.1/335N)
公営水道事業体の課題を水道事業のライフステージごとに分析するとともに、水資源の環境対策、指定管理者制度に焦点をあてて解説。さらに、地下水利用専用水道による日本水道市場への影響と、その対応策を検討する。