レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 登録日時
- 2008/06/07 02:11
- 更新日時
- 2008/06/21 02:11
- 管理番号
- D2007M1238
- 質問
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解決
浄瑠璃や歌舞伎で知られた「生写朝顔話―しょううつしあさがおばなし―」(「朝顔日記」)の中に、主人公「深雪」が恋人からもらった扇に書いてあった「露のひぬ間の朝顔を照らす日影のつれなきに哀れひと村雨のはらはらとふれかし」という唄が出てくるが、この意味を知りたい。
典拠:歌舞伎において「生写朝顔話」は、比較的ポピュラーな演目であるようです。調査済み資料では、あらすじが載っていて、唄の文句までは書いてあるものが多かったのですが、唄の意味そのものは見つけられませんでした。
- 回答
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ご照会の件について、下記の文献(1)、(2)に記述がありましたので紹介します。
(1)『評釈江戸文学叢書. 第4巻. 傑作浄瑠璃集 下』 講談社, 1970【KG211-3】
「増補生写朝顔話」(pp.831-870)の中の「宿屋の段(其の二)」(pp.855-867)に、“露の干ぬ間の、朝顔を照らす日影の強顔(つれな)きに、あはれ一村雨の、はらはらと、降れかし” (p.859)の歌があり、その頭註に次の記述がありました。
“露の干ぬ間の・・・降れかし、岡山藩主池田光政に仕へた有名な儒者熊澤伯継の作った今様歌である。朝露に匂ふ朝顔の花を日光が照らして乾かして萎ますは無情であるから、嗚呼一夕立のはらはらと降れよ、さすれば花も萎まないからといふのであって、露の情(なさけ)を待つ意である。”
(2) 『浄瑠璃名作集. 上』近石泰秋 大日本雄弁会講談社, 1950. (新註国文学叢書)【912.4-Ti237z】
「生写朝顔話」(pp.57-128)の中の「宿屋の段」(pp.92-117)に、“露のひぬ間の、朝顔を照らす日かげのつれなきに、哀れ一むら雨のはらはらと降れかし”(p.103)とあり、頭註に次の記載がありました。
“熊澤蕃山の作った今様。今も筝曲に唄ふ。「露の乾かない間の早朝を咲きほこっている早朝の花はいつまでも咲いていてほしいと思うのに、日の光は容赦なく照りつけて、早くも朝顔をしおれさせてしまふ。ああそのしをれない中に村雨が降ってくれればよいのに。」”
【 】内は当館請求記号
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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歌舞伎ハンドブック(三省堂)、歌舞伎事典(平凡社)、名セリフの力(展望社)、歌舞伎名作事典(演劇出版社)、歌舞伎登場人物事典(白水社)
松竹大谷図書館 上演資料集(パンフレット)等を調査されたようですが、見つからなかったとのことでした。この唄を詠んだとされる熊沢蕃山の「増訂蕃山全集 第7巻」(名著出版)に唄が載っているらしいが、意味が書いてあるかどうかはわからないそうです。
- NDC
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- 歌舞伎 (774 9版)
- 参考資料
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『名作歌舞伎全集. 第7巻』 東京創元新社, 1969【912.5-M448】
『「朝顔日記」の演劇史的研究』 内山美樹子「朝顔日記」の会, 2003.1【KD475-H9】
『寿柱立万歳・ひらかな盛衰記・艶容女舞衣・契情倭荘子・生写朝顔話』日本芸術文化振興会, 2006.5. -- (国立劇場上演資料集 -
490)【KD475-H46】
『蕃山全集. 第7冊』熊沢蕃山[他]. 増訂. 名著出版, 1980.5【HA55-2】
「蕃山先生和歌」(pp.156-162)のうち、pp.161-162に「朝顔」と題して、“露の〓(日偏に希)ぬ間の蕣花(ルビ あさがお)を 照らす日陰のつれなきにあはれ雨のはらはらと降れかし”とあります。「註」として“『朝顔日記』には次のごとく見えている。「露のひるまのあさがほを てらす日かげのつれなきにあはれ一村雨のはらはらとふれかし」」”とありますが、歌の意味、解説等の記載はありません。同資料には索引がなく、全編を通読する調査はしていません。
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『名作歌舞伎全集. 第7巻』 東京創元新社, 1969【912.5-M448】
- キーワード
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- 歌舞伎
- 浄瑠璃
- 日本戯曲
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 図書館
- 登録番号
- 1000044641