レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023/06/06
- 登録日時
- 2023/07/30 00:30
- 更新日時
- 2023/07/30 00:30
- 管理番号
- 6001061276
- 質問
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解決
戦前などのコンピュータが登場するより前の時代では、古文書や書籍、論文などの情報をどうやって収集していたのかを知りたい。
また当時の研究者の苦労話や情報のあたりの付け方などに言及している資料があれば紹介してほしい。
- 回答
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情報収集の方法については、次の資料に記載があります。
・『学術論文の書き方 増補改訂』(五島茂/著 甲文堂書店 1940)
p.129-141「第二部 學術研究論文の製作方法 4資料の蒐集(C)蒐集の具體的方法 (1)資料の所在」
この中で8種の情報源(「書誌」「索引」「雑誌索引」「官廰其他公私諸機關の調査資料」「書評・抄録」「辭書年鑑」「引用参考文獻」「新聞」)を提示しています(p.129-138)。
また「資料を現實にどこで検索し得るか」(p.138-141)の中で、実際に資料を確認できる場所は、「図書館」「研究室」「個人コレクション」である旨が書かれています。なおこの節の最後には「將來各部門毎に書誌が作成され、それに資料の所在が併記され、或は蔵書類の全部の所在を明瞭にする目録の發行を見るまでは、やむなく諸地巡歴、足で蒐集する覺悟ももたねばなるまい。」とあり(p.140-141)、当時の情報収集の大変さが端的に書かれています。
目録が載っている資料としては、例えば次のような資料があります。
・『郷土研究講座 8 研究方法 下』(角川書店 1958)
p.119-219「郷土研究参考文獻書目」
この中で江戸時代の地誌の目録や、県史や郡史の目録、地方誌関係研究団体の目録、地方誌研究資料の所在をまとめたリストなどが載っています。
また、文献を探す苦労については次の資料にも記載があります。
・『学生論文の書き方:文献とその扱い方』(富永牧太/著 養徳社 1950)
p.73-78「第一章 文献 3 文献の所在」
どうすれば効果的に主題文献を探し当てることができるかという観点で「図書館」と「書店」と「個人蔵書」を評価しています。
その中で、個人蔵書が図書館や書店と比べて「遥かに直接的に有効な場合が屢々ある。個人というものは必ず大なり小なり主題をめぐつて蒐書しているから、むしろ図書館など、万人向きのところより効果が著しい。」と評価しています(p.77)。その一方で「たゞ問題はどの人がどんな専門家か、乃至は蔵書家か、でないかの見分けである。」と注意点も指摘しています(p.77)。
・『新日本史大系 別巻』(朝倉書店 1957)
国立国会図書館デジタルコレクション(国立国会図書館内/図書館・個人送信限定)で閲覧できます。(2023/6/6現在)
https://dl.ndl.go.jp/pid/2986836/1/34/
p.54-56「二 資料の蒐集と取扱い方 2 文献史料の伝存状態」
資料の収集を行うにあたっての心得として「史料そのものがすべての事柄に対して必ずしも十分に伝存しているものではないということである。すなわち自分の研究しようとする事柄に対して必要とする史料は常にどこにでも存在していて、何時でもすぐ容易にこれを蒐集し得るというわけのものではないのである。」(p.54)と指摘しています。
そのうえで「今日に伝存されている記録古文書類が多種多様であるということは、すなわちその分布状態がまた種々雑多であるということにもなつて、例えば古くから知られている名家はもちろんのこと、神社仏寺をはじめいわゆる蒐集家などが、それぞれ独自な立場や理由で(中略)質量ともにすぐれたものを襲蔵しているものが少なくなく、しかもそれらの中には適宜移動しているものさえ多い現状であり、またその所蔵者が珍蔵して利用の困難なものも少なくないとすれば、史料の所在をたしかめる作業は決して容易ではないのである。」(p.55)と史料収集の困難さを説明しています。
また、史料の収集に当たって最も利用し得る所として「図書館・文庫・研究所ならびに歴史の研究に理解のある神社仏寺ないし諸名家や個人」(p.55-56)を例示しています。
古文書や採掘資料などの一次資料をいかに集めるかについては、歴史学の入門書にも記述がありました。
・『考古学の研究法:附・考古学関係用語略解・考古学関係文献目録』(斎藤忠/著 吉川弘文館 1950)
p.33-53「第三章 遺物の調査」
p.54-78「第四章 遺跡の調査」
・『地方史研究法:近代地方史研究と社会科教育(東大新書23)』(古島敏雄/著 東京大学出版会 1955)
p.171-268「第四章 近代地方史史料の種類と所在、その使い方」
・『郷土研究講座 7 研究方法 上』(角川書店 1957)
p.3-28「史料の取扱い方」
p.63-84「拓本のとり方」
p.129-155「民俗採訪のしかた」
p.157-181「発掘のしかた」
p.237-258「遺物のとり扱い方」
・『史学研究法(早稲田叢書)』(坪井九馬三/著 早稲田大学出版部 1903)
p.79-89「史学研究法巻之二 史料編 史学の材料」
その他、研究者の自伝や回顧録などに研究の苦労話が掲載されていることがあります。
・『金田一京助:私の歩いて来た道(人間の記録6)』(金田一京助/著 日本図書センター 1997.2)
p.41-51「五 大学時代」
・『民俗採訪 (民俗選書)』(橋浦泰雄/著 六人社 1943)
国立国会図書館デジタルコレクション(インターネット公開(許諾))で閲覧できます。(2023/6/6現在)
https://dl.ndl.go.jp/pid/1460007/1/61
p.106-111「採訪余録」
※目次には「採訪余談」と記載
・『民謡覚書』(柳田国男/著 創元社 1940)
国立国会図書館デジタルコレクション(インターネット公開(許諾))で閲覧できます。(2023/6/6現在)https://dl.ndl.go.jp/pid/1463803/1/10
p.1-26「民謡覚書(一)」
p.27-59「民謡覚書(二)」
[事例作成日:2023年6月6日]
- 回答プロセス
- 事前調査事項
- NDC
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- 文章.文体.作文 (816 10版)
- 参考資料
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- 学術論文の書き方 増訂改版 五島/茂∥著 甲文堂書店 1940 (129-141)
- 郷土研究講座 8 角川書店 1958 (119-219)
- 学生論文の書き方 富永/牧太∥著 養徳社 1950 (73-78)
- 考古学の研究法 斎藤/忠∥著 吉川弘文館 1950 (33-78)
- 地方史研究法 古島/敏雄∥著 東京大学出版会 1955 (171-268)
- 郷土研究講座 7 角川書店 1957 (3-28、63-84、129-181,237-253)
- 史学研究法 坪井/九馬三∥著 早稲田大学出版部 1903 (79-89)
- 金田一京助 金田一/京助∥著 日本図書センター 1997.2 (41-51)
- 民俗採訪 橋浦/泰雄∥著 六人社 1943 (106-111)
- https://dl.ndl.go.jp/pid/2986836/1/34/ (『新日本史大系 別巻』(国立国会図書館デジタルコレクション)(2023/6/6現在))
- https://dl.ndl.go.jp/pid/1463803/1/10 (『民謡覚書』(国立国会図書館デジタルコレクション)(2023/6/6現在))
- キーワード
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- 論文検索(ロンブンケンサク)
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 個人
- 登録番号
- 1000336581