レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年03月01日
- 登録日時
- 2023/03/01 14:08
- 更新日時
- 2023/07/20 15:06
- 管理番号
- 東浦和ー1-00041
- 質問
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解決
なぜ日本は床に座る文化なのか知りたい。
- 回答
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回答プロセスにある資料を紹介し、併せて下記の2冊を提供した。
・『椅子と日本人のからだ』矢田部英正/著 晶文社 2004年
・『日本の住文化再考』鈴木紀慶/著 鹿島出版会 2013年
- 回答プロセス
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質問者からは「律令制度の崩壊後、平安時代に貴族の家で儀式を行うようになり、その際に床に家具が置いてあると邪魔になることが起源ではないかと聞いた」との話あり。
●館内資料を確認。
・『居住の文化誌』佐藤京子/著 文芸社 2003年
p24~27「日本は畳や板やワラで出来た床のため履き物を脱いで座ることが容易である一方、欧米では建物が石やレンガで出来ているため床に直接座らないのではないか」とする考察有。
・『椅子と日本人のからだ』矢田部英正/著 晶文社 2004年
p52~58「なぜ日本では椅子が発達しなかったのか」という項目有。椅子やテーブルが日本家屋の中で場所を取ることなどが指摘されている。またp66~68で背もたれがある椅子は帯にあたったり着物が着崩れたりという弊害があったとも指摘されている。
・『日本の住文化再考』鈴木紀慶/著 鹿島出版会 2013年
p192~230 日本の住まいに関する年表があり、古墳時代ごろから豪族が椅子を利用し始めるも、鎌倉時代に内裏の小規模化・儀式の簡略化を理由に椅子や寝台が消滅したとの記載有。
・『図説日本の文化をさぐる2 民家のなりたち』川島宙次/文・絵 小峰書店 1982年
床に座る文化についての直接の言及はないが、p50~51に古代の住居の床についての記述有。古代の日本の住居は土座(土の上に籾殻・ワラ・ゴザなどを敷いた床)が主流であったと書かれている。
●市内の他の図書館の所蔵資料を取り寄せて確認。
・『ユカ坐・イス坐 起居様式にみる日本住宅のインテリア史』沢田知子/著 住まいの図書館出版局 1995年
近代化の一環として椅子を使う「イス坐」を定着させようとしたが「ユカ坐」も残ることになった過程について述べた本。日本の近代以降の変遷には詳しいが、そもそもなぜ床に座る文化になったかについては触れられていない。
・『歩く文化座る文化 比較文学論』野中涼/著 早稲田大学出版部 2003年
西欧の立位を基本とする文化と、日本の座位を基本とする文化について述べた本。p43~70に土に注目した論点(日本の土は泥になりやすく、泥を室内に持ち込むと衛生が悪化するため日本では履物を脱ぐ)や環境に注目した論点(地中海東岸の砂漠地域では、砂嵐をいち早く発見するために立位の方が有利である)など、他の資料にない観点での解説有。
・『再発見!くらしのなかの伝統文化3 住まいと日本人』市川寛明/監修 ポプラ社 2015年
床に座る文化である前提で話が進むが、p32「畳は水分に弱いので、水分から守るために履き物を脱ぐ」という趣旨の説明有。
・『家具と室内意匠の文化史』小泉和子/著 法政大学出版局 1979年
古代の天皇や中世の禅宗信仰者には椅子が使われていた一方、中世末期に旧武家の権威を保つために「故実」と呼ばれる正座を含む礼法が制定され、それが江戸時代にかけて庶民に浸透することで椅子を使用する機会が途絶したとする説が述べられている。
質問者に資料を紹介し、質問者の説に関係が深そうな資料を提供することとなった。
- 事前調査事項
- NDC
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- 衣食住の習俗 (383 10版)
- 住居.家具調度 (597)
- 参考資料
- キーワード
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- 座る
- 床座
- 椅子座
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000329496