レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年07月21日
- 登録日時
- 2024/02/26 14:23
- 更新日時
- 2024/03/28 11:33
- 管理番号
- 中央-1-0021713
- 質問
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未解決
室町時代の美濃国の関の刀鍛冶・兼定(二代兼定・之定・和泉守兼定とも)の経歴について
ウィキペディア上には「受領の背景には伊勢の神宮における派閥争いにおいて刀剣を鍛え供したことの恩賞と考えられている。」と記述があるが、この情報の出典元となった資料を探している。
- 回答
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受領の背景に伊勢の神宮における派閥争いにおいて刀剣を鍛え供したことの恩賞と考えられている事がわかる資料は見つからなかった。
回答プロセスで丸を付けた、参考になりそうな資料を紹介した。
- 回答プロセス
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※最終アクセス確認はすべて2024年2月26日。
・ウィキペディアの「受領の背景には~」の参考文献として挙げられている本を確認する。
×『室町期美濃刀工の研究』鈴木卓夫/著 杉浦良幸/著 里文出版 2006年
p37-57 兼定についてまとまっている。
p50「和泉守の受領期については、一説に永正元年二月の作に「和泉守兼定」と切ったものがあり、このころ受領したようであるとあるが(注1)、今のところこの作例はない」(注1):『日本刀大鑑(古刀篇3)』p53
この後、兼定の押形資料(刀の魚拓みたいなもの)をもとに、和泉守受領は「永正三年以後同六~八年の間」と推量している。
・所蔵資料の756.6の本を確認する。
〇『日本刀の教科書』渡邉妙子/共著 住麻紀/共著 東京堂出版 2014年
p112-113「美濃の刀剣」 和泉守兼定らの紹介。詳しい説明はなし。
p186-187「関兼定」 「兼定のもっとも特色とされるのは、和泉守を受領していることです。(略)受領名は朝廷から授かるもので、朝廷との繋がりは明らかではありませんが、推量することはできます」とあり。美濃国の守護代であった斉藤一族が刀剣の収集とその研究に熱心で、郷土の名工である兼定に心を砕き、また様々な縁もあったことをあげ、「刀工として初めて和泉守を受領したのだと思われます」とまとめている。伊勢神宮の派閥争いについては書かれていない。
〇『新・日本名刀100選』佐藤寒山/著 秋田書店 1990年
p208「69 九字兼定 重要刀剣」の解説中に以下の記述あり。
「古刀期においても、刀鍛冶が受領している例は別に珍しくはないが、ただ「守」の受領は頗る少なく、兼定が和泉守を貰ったのが最初であろう。これも美濃国と朝廷との関係が深く、その仲介は斎藤氏の重臣で、関の領主であった長井藤左衛門尉長弘であったであろうとするのが石井昌国君の説であり、妥当である。」
×『日本刀大全 決定版』原田道寛/著 河出書房新社 2018年
×『日本刀物語』杉浦良幸/著 里文出版 2009年
×『日本刀外伝-誕生の背景・鐵造り・名工伝説-』宮崎政久/著 雄山閣 2022年
×『日本刀の歴史 新刀編』常石英明/著 金園社 2016年
△『日本刀の歴史 古刀編』常石英明/著 金園社 2016年
p167-171「兼定系」 二代兼定の説明に「『何々守』と任官名(この場合は和泉守兼定)の『守』の字を切ったのは兼定が最初です」という説明はあるがその背景はなし。
・所蔵資料の参考図書を確認する。
×『刀工大鑑 決定版』得能一男/著 光芸出版 2004年
×『古刀・新刀 刀工作風事典』深江泰正/著 グラフィック社 1984年
△『日本人物レファレンス事典 名工・職人・技師・工匠篇』日外アソシエーツ株式会社/編集 日外アソシエーツ 2017年
p218「兼定」 同名が多いが、「戦国時代の美濃国関の刀工」と書かれている人物と思われる。
主な掲載事典『国史大辞典』(吉川弘文館)、『日本古代中世人名辞典』(吉川弘文館)、『日本史人物辞典』(山川出版社)、『戦国人名事典』(新人物往来社)、『講談社日本人名大辞典』(講談社)、『美術家人名事典 工芸篇』(日外アソシエーツ)→いずれも簡単な経歴のみで参考にならず。
・故事類苑を見てみる。まずはデータベースで検討をつける。
「故事類苑ページ検索システム (https://www.nichibun.ac.jp/ja/db/category/kojirui/)」
キーワード検索で、産業部十二「鍛冶」に兼定が出てくることを確認。
〇『古事類苑 [40] 普及版』吉川弘文館 1980年
p621-650「鍛冶」兼定は複数箇所登場する。
p642「待遇」の項 「〔新刀名尽〕鍛冶の受領の始といふは、永正年中濃州関の和泉守兼定を始とす、是より以前は後鳥羽院の時代の番鍛冶といへども受領なし(以下略)。」
・インターネット情報を検索する。
〇篠田幸次「関伝中興の祖 和泉守兼定と藤原利隆」『兼定:刀都・関の名工』岐阜県博物館/編 岐阜県博物館 2018年 p104論考 「http://www.nbthk-gf.or.jp/ronbun01.htm」
(二)藤原利隆と二代兼定との関係(3)和泉守受領の経過 「利隆の骨折りにより兼定が和泉守を受領したことは全く疑う余地がないように思われてならない」とある。
・国書データベースを検索する。
〇『古今鍛冶備考』秋水舎 1900年 「https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/100215003/72?ln=ja」
72コマ 兼定の記載有 (現代語訳)「和泉守兼定は二代で、初代は信濃守を受領し、禁中にて菊紋を許され、はばき元に菊紋または枝菊を切り、一文字を切る事もあり」。
・国立国会図書館デジタルコレクションを検索する。
〇『日本刀工辞典 古刀篇』藤代義雄/著 藤代義雄 1938年
「https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/1116200/1/48(ログインなしで閲覧可能)」
48₋50コマ 和泉守兼定の記載あり。「和泉守受領は後々のことでありて、守受領は作品を通じての事實は之定を以て嚆矢とするであらう」「和泉守受領はすでに永正八年頃なること作品を通じて知られる」とある。
〇『日本の文化財 第2巻』第一法規出版 1960年
「https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/2476194/1/61 (図書館・個人送信限定)」
61₋67コマ(p61-73) 佐藤貫一「刀剣について」
65コマ(p68)銘について書かれている。 「これはちょうど座頭が金を払って、検校などの官位を貰うと同じようなことで、自分の打った刀を朝廷、その他の要路に献上して種々の守とか介とか橡とかを受領するわけである。受領銘は和泉守兼定等、わずかに古刀期にもあるが例外である。」
〇『寒山刀剣教室 基礎篇』佐藤寒山/著 徳間書店 1968年
「https://dl.ndl.go.jp/ja/pid/2516694/1/91 (図書館・個人送信限定)」
対話形式で綴られた刀剣に関する書。
91-96コマ 室町時代の銘
96コマに以下の記述あり
「寒山:(略)美濃の国は古くから親王領であった関係か、古刀期の刀工としてはきわめて珍らしい受領銘があります。たとえば、兼定という刀工は和泉守を受領していますし(以下略)
B:それらは、朝廷からもらったものでしょうか。
寒山:さあ、そのあたりがむずかしいところですが、戦国の時代になると、各地の武士に僣称が非常に多くなります。しかし、刀鍛冶のほうはそういうものではなかろうと思います。」
- 事前調査事項
- NDC
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- 金工芸 (756 10版)
- 参考資料
- キーワード
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- 刀鍛冶
- 兼定
- 和泉守兼定
- 受領
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000346630