レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年12月28日
- 登録日時
- 2022/01/05 10:09
- 更新日時
- 2022/01/07 20:44
- 管理番号
- 県立長野-21-202
- 質問
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未解決
「図書袋」(肩からかける斜め掛けのもの)について以下のことを知りたい。
1.長野県独自のものであるか
2.いつごろから使われているのか
3.図書袋が使用されている理由について
- 回答
-
斜め掛けの図書袋について、直接記述を確認できた資料はなかった。「図書袋」を含む記述のある資料を参考に紹介した。
1.図書袋が利用されている範囲について
図書袋が使われているのは長野県だけという記述のある資料は確認できなかった。
以下の資料を紹介した。
<ウェブ検索の傾向について>
・「Googleトレンド」
指定した単語が検索エンジン「Google」を使用して検索されたかをグラフや数値で確認することができるサービス。
「図書袋」と入力し、2004年からの検索結果を確認したところ、12月26日現在で、地域別の検索数順位では、長野県がトップとなっており、順位の中に他の都道府県が表示されていない。このことから、「図書袋」をGoogleで検索した回数は長野県が全国で最も多いことが分かる。
似た用途の「絵本袋」と入力し、同様に結果を確認したところ、地域別の検索数順位は1位山形県、2位長野県、3位兵庫県、4位神奈川県、5位大阪府と続く。
※検索実行日 2021年12月下旬
<他県における図書袋に関する記述>
当館契約の新聞データベース朝日新聞データベース「聞蔵Ⅱ」、毎日新聞データベース「毎索」、「中日新聞・東京新聞データベース」を「図書袋」で検索したが、長野県以外の記事で確認できたのは、下記1件だった。
・「読書好きを育てる 県学校図書館教育優秀賞の受賞校紹介(上)」1999年2月22日「中日新聞」p.15
岐阜県の地域面に掲載された記事。
総合優秀賞 岐阜市合渡小の図書館職員のコメントとして「休み時間は図書袋を手にした児童で館内は大にぎわい。」と記述が確認できたが、データベースに紙面イメージの収録がなく、また、当館所蔵の同日の中日新聞を確認しましたが、長野版には同記事の掲載が確認できなかったため、写真での確認ができない。
なお、信濃毎日新聞データベースで「図書袋」と検索すると1995年以降の記事中に「図書袋」を含んでいる記事が25件あることが確認できる。
・秋田喜代美「子どもの発達と絵本・読書」2019 『国際子ども図書館児童文学連続講座講義録 平成30年度』国立国会図書館国際子ども図書館編 国立国会図書館 2019【909.5/コク/'18】p.50-64
p.61「4.児童期の発達と読書 ②小学校での事例を通して」に「このスライドは静岡の小学校の写真です。この学校では図書館に行くときは必ず「図書袋」を持っていきます。そうすると、図書館の帰りに図書袋に本を入れて帰ります。一年生のときに図書袋を持っていくよう習慣付けることが重要だと思いました。」とあり、静岡県でも「図書袋」を使っている学校があることが確認できるが、この講義録にはスライドの掲載がなく、図書袋の形態までは確認できない。
2.いつ頃から使われているのかについて
下記の図書において図書袋に関する記述が確認できました。
・『図書館教育と読書指導 (研究紀要 図書館教育)』諏訪郡下諏訪町立下諏訪小学校編・刊 1967【N375/12】
p.116-117「利用の手順」の「授業中以外の利用」中に、利用の際の持ち物として「図書袋」とありますが、「図書袋に図書の背を下にして入れ、袋を左手に持つ」とあり、この時点で想定されていた「図書袋」は斜め掛けではないことが分かる。
・『図書館利用の手引き(中学生用)』長野県教育委員会編 信濃教育会出版部 1980【N017/8】
中学生を対象として書かれた学校図書館の使い方に関する資料です。
p.16に「本をいためないように図書袋に入れて持ち運ぶ。」とあり。
ただし、図書袋の作り方等の記述はなく、どのような形をしていたかまでは確認できない。
このほか、当館が平成30年(2018年)に受けた図書袋に関する調査相談の中で、各機関に照会した際の回答が残っていたため紹介した。
なお、調査当時のまま掲載しているが、下記回答中の「重要文化財旧開智学校校舎」は現在「国宝旧開智学校校舎」となっているため、注意が必要。
照会先:NHK長野放送局
住所:長野市稲葉210-2 電話026-291-5200(代)
回答:重要文化財旧開智学校校舎所蔵史料を参考にしたとの回答を得たました。
照会先:重要文化財級開智学校校舎
住所:長野県松本市開智2-4-12 電話0263-32-5725
回答:昭和40年代、学校から保護者の方へ図書袋について案内したプリントが残っている。肩掛け、フタ付きの図書袋で、作り方や寸法が絵で書かれている。また図書館の本を借りるときは図書袋を使ってくださいと書かれている。松本市開智小学校ではこの時代から使われるようになったと思われるとのことでした。なお、個人の方からでもご希望があれば、プリントのコピーを送付できるとのことです。
3.図書袋が使用されている理由について
『図書館利用の手引き(中学生用)』長野県教育委員会編 信濃教育会出版部 1980【N017/8】
中学生を対象として書かれた学校図書館の使い方に関する資料。
p.16に「本をいためないように図書袋に入れて持ち運ぶ。」とある。
4.その他
メディアで取り上げられたことが確認できた番組について、確認できた情報を提供した。
・2017年2月7日abn「abnステーション」
2017年2月7日「信濃毎日新聞」p.28テレビ欄の「abnステーション」の項目に「「図書袋」長野県だけ?」とあります。
下記の番組ホームページに関連情報の掲載がありますが、図書袋の由来等には触れられていません。
「abnステーション » 図書袋は信州だけ?」
・2017年3月30日放送NHK「おはよう日本」
2017年3月30日「信濃毎日新聞」p.32テレビ欄の「おはよう日本」の項目に「長野県の“図書袋”子どもへの愛情入れて」とあり。
回答の中で照会先として示した根拠となる番組だと思われるが、現在見ることのできる関連の情報は確認できなかった。
・2019年12月27日SBC「ずくだせテレビ」
2019年12月27日「信濃毎日新聞」p.32テレビ欄の「ずくだせテレビ」の欄を確認しましたが、「図書袋」の文字は確認できませんでした。
番組Teitterに予告動画がアップされており、資料として、「図書館教育」と表紙にある綴りが紹介されている。
※回答中のウェブサイトの最終確認日はいずれも2022年1月5日
- 回答プロセス
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1.レファレンス協同データベースで過去事例を確認する
類似の相談が過去にあったことを記憶していたため、同データベースで「図書袋」と検索したところ当館の事例に加えて安曇野市立図書館の事例が確認できた。
「長野県独自の図書袋の歴史。小学校などの入学時に保護者が作成する図書袋で、肩掛け、フタ付きのものはいつ頃どの地域から始まり、どのように県内に広がったのか。NHKのニュース番組で見た。」(県立長野図書館、一般公開)
「長野県独自の図書袋の歴史を知りたい。図書袋の利用促進のため、図書袋の歴史を調べている。いつごろ、どの地域から始まり、どのように県内に広がったか。肩掛け、フタ付きの図書袋は長野県独自のものらしい。文献や写真、作図があればありがたい。」(安曇野市立中央図書館、参加館公開)
いずれも明確な回答の記されている資料は見つけられなかったとのこと。
国宝旧開智学校校舎所蔵の資料に図書袋があるとの情報あり。
これらの事例に調査済資料として挙げられている長野県教育史、信濃教育、教育年報等の教育関係資料、PTA母親文庫関係資料、
掲載のある資料は今回調査から除外する。
2.上記以外の長野県の教育に関わる資料を探す
長野県の教育にかかわる郷土資料分類 N370の書架から上記以外の図書を探す。
『長野県教育委員会三十年史』長野県教育委員会発足三十年記念 長野県教育委員会編 長野県教育史刊行会 1980【N373/18】
p.381-383の学校図書館にかかわる部分のp.382に長野県図書館協会の小中学校図書館部会の発足についての記述があり、その活動として会報『小中学校図書館部会だより』の創刊や、『みんなの図書館』、『図書館利用の手引』、『読書ノート』の発行が紹介されていることを確認。
『信州大学教育学部九十年史』九十年史編集委員会編 信州大学教育学部 1965【N377/6】
3.『図書館利用の手引き(中学生用)』及び長野県図書館協会にかかわる本を探す
「長野県図書館協会 小中学校図書館部会だより 第5号」1963年9月20日 長野県図書館協会小中学校図書館部会
学校図書館利用の手引きに関して小学校用の『みんなの図書館』、中学校用の『図書館利用の手引き』の編集・発行の報告が掲載されており、「もともとこの種のものは、これまでにもすでに、長野・諏訪・上伊那などで、それぞれ刊行されていました」とある。
『図書館協会40年史』長野県図書館協会編・刊行 1991【N010/29】
『研究紀要図書館教育』1-19,22,23,26,27号 長野県図書館協会小中学校図書館部会 1968-2002
『先生この本よんで』長野県図書館協会小中学校部会編 信濃教育会出版部 1978【N019/6】
『読書・野外指導のすすめ』長野県児童福祉審議会編 長野県青少年問題協議会 1962【N019/5】
4.昭和38年以前発行の図書館利用に関わる郷土資料を探す
長野県の横断検索である「信州ブックサーチ」で学校図書館、図書館のキーワードで検索し、1963年以前に発行された資料をあたる。
『図書館教育と読書指導 (研究紀要 図書館教育)』諏訪郡下諏訪町立下諏訪小学校編・刊 1967【N375/12】
『子供のための読書指導手引』長野県上小教育会編 学校図書館研究委員会 1957【N375/21】
『図書館ごよみ』南安曇教育会図書館教育委員会編 南安曇教育会 1964【N019/1】
『読書普及の手引 (文化シリ-ズ)』長野県教育委員会社会教育課編 長野県教育委員会 1954【N019/2】
5.メディアでの放送状況について調べる
新聞データベースではテレビ欄のテキスト検索はできないため、Googleで「図書袋」と検索し、番組公式の情報や新聞等で放送内容を確認できたものを紹介した。
6.「長野県独自」であるかについて記述を確認する
郷土資料分類の長野県の雑学 N049や県民性 N302などの図書を探す。
以下の図書を参照したが、学校図書館や図書袋にかかわる記述は確認できなかった。
『はみだす 1992』県民Cチーム著 1992【N049/94a】
『信州幸せルール』大沢 玲子著 KADOKAWA 2015【N049/140】
『松本聞いたり見たり』古川寿一著 郷土出版社1989【N049/92】
『聞いたり見たり 続』古川寿一著 市民タイムス 2004【N049/92/2】
『あんたが大将信州人。』銀河書房編・刊行 1991【N049/99】
『不思議の国の信州人 (ワニの本)』丸山一昭著 ベストセラーズ 1994【N302/7】
『新・不思議の国の信州人 (ワニ文庫)』丸山一昭[著] ベストセラーズ 2001【N302/9】
『長野のおきて』長野県地位向上委員会編 アース・スターエンターテイメント 2014【N361/173】
『ふるさと発見!信州あるある』加瀬 清志編著 しなのき書房 2013【N361/171】
『長野あるある』峰尾 こずえ監修 TOブックス 2014【N361/174】
『長野の法則 (リンダブックス)』長野の法則研究委員会編 泰文堂 2015【N361/175】
※回答プロセス中のウェブサイトの最終確認日はいずれも2022年1月5日
- 事前調査事項
- NDC
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- 学校図書館 (017)
- 教育史.事情 (372)
- 参考資料
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諏訪郡下諏訪町立下諏訪小学校/編 , 諏訪郡下諏訪町立下諏訪小学校. 図書館教育と読書指導. 下諏訪町立下諏訪小学校, 1967-00. (研究紀要 図書館教育)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I058961743-00 -
長野県教育委員会/編 , 長野県教育委員会. 図書館利用の手引き(中学生用). 信濃教育会出版部, 1980-00.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I059162444-00 -
国立国会図書館国際子ども図書館編 , 国際子ども図書館. 絵本と子どもの原点を見つめる : 子どもの成長発達と絵本. 国立国会図書館, 2019. (国際子ども図書館児童文学連続講座講義録, 平成30年度)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I012082868-00 , ISBN 9784875828426
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諏訪郡下諏訪町立下諏訪小学校/編 , 諏訪郡下諏訪町立下諏訪小学校. 図書館教育と読書指導. 下諏訪町立下諏訪小学校, 1967-00. (研究紀要 図書館教育)
- キーワード
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- 学校図書館
- 図書袋
- 図書館教育
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 郷土
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000310109