レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021/06/30
- 登録日時
- 2021/07/02 00:30
- 更新日時
- 2021/08/19 11:48
- 管理番号
- 9879318
- 質問
-
未解決
以下の文科省の報告書にある一文「一般に書架収容率の70パーセントを超えた場合には新刊書の排架に困難を来たすといわれている」の典拠となる資料を知りたい。
(1)学術情報基盤としての大学図書館等の今後の整備の在り方について(中間報告)
平成17年6月28日
科学技術・学術審議会学術分科会・研究環境基盤部会学術情報基盤作業部会
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/toushin/1213888.htm
1.大学図書館の現状
1.(3)増大する大学図書館の負担
(ア)収蔵スペースの狭隘化
4行目「収蔵スペースの狭隘化については、一般に書架収容率の70パーセントを超えた場合には、新刊書の排架に困難を来たすといわれているが、国公私を通じた大学全体の平均収容率は約90パーセント、特に国立大学においては既に110パーセント近くに達し、中には収容率150パーセントを超える大学などもあり、憂慮すべき事態になっている。」
また、この「中間報告」に続く「報告」と思われる資料が(2)で、全く同一の文章が見られます。
(2)学術情報基盤の今後の在り方について(報告)
平成18年3月23日
科学技術・学術審議会 学術分科会 研究環境基盤部会・学術情報基盤作業部会
2.学術情報基盤としての大学図書館等の今後の整備の在り方について
https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/toushin/1213896.htm
2.大学図書館を取り巻く課題
2.3 体系的な資料の収集・保存が困難
(イ)収蔵スペースの狭隘化
(1)、(2)ともに、参考文献が付されておらず、注もありませんでした。
- 回答
-
資料1にご照会の一文と同主旨の内容が断定的に記載されています。
ご照会の典拠であるかは不明ですが、参考としてお知らせします。
【 】内は国立国会図書館請求記号です。
資料1
もり・きよし先生喜寿記念会 編『知識の組織化と図書館 : もり・きよし先生喜寿記念論文集』もり・きよし先生喜寿記念会, 1983.9【UL611-25】
* 巖礼吉, 丸山泰通「”ブラウジング”から”スキミング”へ―国立国会図書館における排架と利用の今日的課題―」(pp.107-121)では、同館図書課に設置された排架問題検討委員会が、書庫内の資料排架法検討のため約4ケ月にわたる調査と討論を行ったことが紹介されています。
*p.110に「分類排架では、排架率70%の段階で新刊納架に支障をきたす。」(p.110)の記載があります。また、「3.固定排架制の検討」(pp.112-114)の項に、「固定排架は、書庫空間の効率的な利用に大きな効果がある。当委員会の調査によれば、分類排架との比較は次の通りである。 理論可能排架率 100% 分類排架(標準) 70% 分類排架による満架 80% 固定排架 95%(5%は番号見出しなど)」との記載もあります。
〔主な調査済み資料・ウェブサイト〕
D.J. アーカート 著, 村上 正志 訳「国立図書館は貸出とレファレンス機能を兼ねられるか」(『現代の図書館』15(1) 1977.3 pp.40-43【Z21-8】)
* 資料1において言及されている文献です。
* 国立国会図書館デジタルコレクション(国立国会図書館内/図書館送信参加館内公開)
Library of Congress Information Bulletin【Z55-A165】
* 1951年のVolume10, No.52 p.3に以下の記載があります。
the classified arrangement of the collections engenders a loss of 20 to 50 percent of shelf space as compared to an arrangement in order of accession.
* HathiTrust Digital Libraryで全文の閲覧が可能です。
該当箇所のURL:https://hdl.handle.net/2027/osu.32435068182468?urlappend=%3Bseq=65
* 上記引用箇所は、Zentralblatt für Bibliothekswesen May/June 1951掲載のHugo Alkerの記事を紹介した文章の一節ということです。
Zentralblatt für Bibliothekswesen【Z55-A154】の当該号は当館所蔵なしのため、Hugo Alkerの記事原文は確認できませんでした。
ウィリアム・H.ジェス 著, 斎藤滋 訳『書架作業』日本図書館協会, 1960【014.5-cJ58s-S】
* 件名に「配架法」とある資料で、「書架は総収容量の3/4迄が使われた時すでに飽和とみなしてよい」(p.37)との記載があります。
* 国立国会図書館デジタルコレクション(国立国会図書館内/図書館送信参加館内公開)
Planning academic and research library buildings 2nd ed.
American Library Association, 1986【UL521-A8】
* pp.155-156に ”7. How full does the library propose to fill its shelves before the situation is considered intolerable?“の項があり、”It is suggested as a basis for discussion here that 86 percent be considered complete working capacity”等の記載があります。
ウィリアム・J.ハバード 著, 丸谷洽一 訳『書庫の管理 : 図書館資料の配架と整備』勁草書房, 1987.9【UL753-1】
* 件名に「配架法」とある資料で、「書架が、おおよそ、75~85%の詰まり具合になると、配架の効率は悪くなる。(中略)最大限86%の収納率を勧める」(p.64)の記載があります。当該箇所の注として「Metcalf, Planning academic and research library buildings, p.155」とあります。
ヘンリー・ペトロスキー 著, 池田栄一 訳『本棚の歴史』白水社, 2004.2【UL525-H3】
* 「図書館の通例によると、既存の本棚配列に新しい本を差し込むのが難しくなるのは、本棚が八十四パーセントまで満たされたときだという」(p.240)との記載があります。
坂牧 一博「開架書架の維持管理」(『現代の図書館』43(2) 2005.6 pp.75-80【Z21-8】)
* 「棚に新しい資料を配架するのが難しくなるのは、棚が84%まで満たされたときを目安とする」(p.77)とあり、【UL753-1】、【UL525-H3】が注に挙げられています。
深井人詩, 目黒聡子 共編『図書館情報学研究文献要覧 : 1970~1981 (20世紀文献要覧大系 ; 12)』日外アソシエーツ, 1983.7【UL1-19】
日本図書館学会編集委員会 編『図書館情報学研究文献要覧 1982~1990 (20世紀文献要覧大系 ; 20)』日外アソシエーツ, 1993.6【UL1-19】
BIBLIS PLUS https://opac.jissen.ac.jp/repo/repository/bunken/?lang=0
ウェブサイトの最終アクセスは2021年6月29日です。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
-
【文科省の他の文書】(資料の番号は質問本文より続く。)
(3)平成18年度学術情報基盤実態調査結果報告 3 《大学図書館編》
〔2〕 2.2-2 書架収容力
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/001/index20/08032421/001/009.htm
書架収容力の実態(冊数)の実態のみ。
【ネット上の報告・ブログなど】
大学図書館関係者のブログや文書に同じ箇所の引用が複数見られますが、「経験上」とされているか、(1)(2)の引用にとどまっています。
例:
(4) 共同保存図書館研究グループ研究活動報告 私立大学図書館協力による共同保存図書館設置の可能性
https://www.jaspul.org/pre/e-kenkyu/public/2008-2009/pdf/kyoryoku.pdf
p.1に同じ引用あり。注に文科省の資料(1)を記載(リンク自体はリンク切れ)。
(5)すだち 徳島大学附属図書館報 第28号
https://www.lib.tokushima-u.ac.jp/m-mag/mini/028/3.html
(6)Ⅲ 図書館関係の答申・建議等 p.363 =(2)の再掲
https://www.nier.go.jp/jissen/book/h30/pdf/library_03.pdf
(7)菜の花の大学図書館日誌 2016.04.22
http://libe.blog.shinobi.jp/
【レファレンス協同データベース・学術論文など】
レファレンス協同データベース、リサーチ・ナビ、CiNii Articles、J-STAGEでキーワード検索を行いましたが、有用な情報は見つけられませんでした。
キーワード:収容率、狭隘、配架、収納可能冊数、大学図書館、(分担)保存、蔵書構成、除籍など
例:
(8)東海地区医学図書館協議会加盟館における除籍(廃棄)の現状調査について
薬学図書館 59(1)、2014 pp.7-17 岡田信恵ほか
(9)集籍・除籍に関するJMLA加盟館アンケート調査結果
医学図書館 Vol.59 No.4、2012 「医学図書館」編集委員会
(10)学術資源の全国的保存システムと共同保存図書館 (特集:リソース・シェアリング:資料利用のための協力)
情報の科学と技術 43 巻 11 号、1993 pp.996-1005 熊谷 俊夫ほか
【その他】
(11)図書館ハンドブック第6版補訂版 2010
(12)図書館概論3訂版(JLA図書館情報テキストシリーズ)
(13)図書館用語集 三訂版 日本図書館協会 2003
(14)図書館情報学用語辞典 第4版 日本図書館情報学会用語辞典編集委員会編 2013
「蔵書メンテナンス」「資料の保存」「備品(書架)」といった項目を中心に探しましたが、「適切な収容率は70%」に言及した箇所はありませんでした。
このうち、(11)には下記の記述があります。
p.414 6行目
「書架間隔1.35mで並列配置した6段の複式書架に余裕度30%で排架した場合、
収容力は冊数(2×6×30×0.7)÷面積(1.35×0.9)で200冊/m2程度であり、
通路部分や作業スペースを含んだ書庫全体の有効率は80%程度である。」
計算の前提とされている点では参考になるのですが、「余裕度30%」の根拠自体には言及がありません。
- NDC
-
- 図書館.図書館情報学 (010 10版)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 人文(レファレンス)
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000301152