レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年5月19日
- 登録日時
- 2020/10/21 16:47
- 更新日時
- 2021/01/26 09:49
- 管理番号
- 中央-1-0021410
- 質問
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解決
なぜ日本人の多くが宗教に無関心なのかということを紐解く本はあるか。なるべく平成など新しい時代の人々の宗教心や無宗教の理由を知れる本が良い。
- 回答
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以下の資料を紹介した。
・『日本人はなぜ無宗教なのか』阿満利麿/著 筑摩書房 1996年
・『日本人はなぜ無宗教でいられるのか』片山文彦/著 原書房 2006年
・『日本人は本当に無宗教なのか』礫川全次/著 平凡社 2019年
・『無宗教こそ日本人の宗教である』島田裕巳/著 角川書店 2009年
・『日本人の宗教とは何か-その歴史と未来への展望-』山折哲雄/編著 太陽出版 2008年
・『近代日本人の宗教意識』 山折哲雄/著 岩波書店 1996年
・『日本人の宗教心』磯部忠正/著 春秋社 1997年
・『現代日本人の宗教』柳川啓一/著 法蔵館 1991年
・『いま宗教に向きあう 1 現代日本の宗教事情 国内編Ⅰ』堀江宗正/編集委員 岩波書店 2018年
・『データブック現代日本人の宗教-戦後50年の宗教意識と宗教行動-』石井研士/著 新曜社 1997年
- 回答プロセス
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(1)『日本人はなぜ無宗教なのか』阿満利麿/著 筑摩書房 1996年
この本の中で著者は宗教を「創唱宗教」/「自然宗教」と区別づけている。
「創唱宗教」…特定の人物が特定の教義を唱えてそれを信じる人たちがいる宗教
キリスト教、仏教、イスラム教など
「自然宗教」…いつ、だれによって始められたかも分からない、自然発生的な宗教
これを踏まえ、「日本人の多くは『無宗教』ではなく『自然宗教』である」というのが著者の主張である。
P16には、「『自然宗教』は、『創唱宗教』のように特別の教義や儀礼、布教師や宣教師はもたないが、年中行事という有力な教化手段をもっているといえるのであり、人々もそうした年中行事を繰り返すことによって生活にアクセントをつけ、いつのまにか心の平安を手にすることができたのである。」という記述がある。
(2)『日本人はなぜ無宗教でいられるのか』片山文彦/著 原書房 2006年
「1章 日本人はなぜ無宗教でいられるのか」に関連記載がある。
P5には、「日本人は、『無宗教である』といっていられるのも、『和』という、社会的合意があればこそ生きていけるからで、日本民族が他民族に徹底的に蹂躙された経験がないからである。」とある。
P27では、初宮は神社で・葬式はお寺でと、日本人は節操がないと言われることについて、「~大方の日本人が確たる『宗教』を持っていないことを意味する。それより優先するのは共同体の和なのだ。」と述べている。
(3)『日本人は本当に無宗教なのか』礫川全次/著 平凡社 2019年
筆者は検討を重ねたうえで、日本人は「無宗教」であると考えている。
P212~「日本人の『無宗教』を成り立たせているもの」の項目では、日本人の「無宗教」は三つの要件から成り立っているとし、その三つの要件について解説を述べている。
(4)『無宗教こそ日本人の宗教である』島田裕巳/著 角川書店 2009年
全章通じて「無宗教」について言及している。
P33では、2001年に勃発した同時多発テロなどの世界情勢について言及したうえで、 「~宗教こそが世界平和を阻害するものなのではないか、私たちの中にそのような感覚が広まっている。ある特定の宗教を信じるということは、他の宗教や信仰を認めないことであり、排他性や排外主義に結びついていく。だったら、特定の宗教を信奉するよりも、無宗教である方がはるかに価値のあることではないか、また懸命なことではないのか。私たち日本人は、今や、無意識のうちにそう感じはじめているのではないだろうか。」と述べている。
(5)『日本人の宗教とは何か-その歴史と未来への展望-』山折哲雄/編著 太陽出版 2008年
P336~「日本人は無宗教か」という項目がある。
P339には、「日本人の宗教観の根本にあるものは、宗教をそのような自覚的意識や主体的な選択行動ととらえるような性格のものではないと考える。それとは逆に、むしろそういうものの一切を消却していくところにこそ信仰の究極があると考える傾向があったと思う。」と記述がある。
(6)『近代日本人の宗教意識』 山折哲雄/著 岩波書店 1996年
「はじめに」に日本人の無宗教について記載がある。
P4~5には、「宗教を問い信仰を問うことは、いずれかの教派や宗派に排他的に所属することの如何を問い、何よりも主体的な判断を要請するものだった。そしてこのような問いがキリスト教的思考そのものに由来するものであったことはいうまでもない。(略)ところがこの西洋文明の側からの問いかけに対して、日本人はどのように応答してきたのだろうか。(略)神社や寺院に出入りすることと、信仰を主体的に選びとることとは別ものではないかと思い惑い、結局自分は本質的に『無神論者』なのではないかと自信のない結論を下して、ついそう答えてしまう。」とある。
(7)『日本人の宗教心』磯部忠正/著 春秋社 1997年
「第Ⅶ章 日本人と宗教的寛容 ①定着しないキリスト教」には、キリスト教が日本に定着しない理由について著者の考えが述べられている。
P187には、「キリスト教文化におけるごとく、(中略)絶対的な神を判定者とする思想は日本にはないのである。」とある。
(8)『現代日本人の宗教』柳川啓一/著 法蔵館 1991年
著者は、「信仰」と「宗教」という言葉についてそれぞれ
「信仰」…内面(心)の問題という意味合いが強い
「宗教」…信念や信仰などの心の問題だけでなく、教団や教会など、宗教団体という意味も含む
と定義づけた上で、日本では「信仰のない宗教」が生じていると主張している。
P10には、「信仰のない宗教、特別に心の問題として信じるものを持たなくても宗教が持てるというかたちが、日本の場合にはあるのではないかということです。」とある。
(9)『いま宗教に向きあう 1 現代日本の宗教事情 国内編Ⅰ』堀江宗正/編集委員 岩波書店 2018年
「序論 変わり続ける宗教/無宗教」に関連記載がある。
P8には、 「日本では宗教は社会の外部にとどまるべきものであるという暗黙の了解がある。それに対して、社会に薄く広まっているものは『宗教』とされない。そのような『非宗教』に関わることがあったとしても、それは宗教ではないので自分たちは『無宗教』でいられる、つまり社会の外部に排除される心配がない」とあります。この文にある「非宗教」にあたるものは、「神道行事」、「葬式仏教」、「民間信仰・スピリチュアリティ」であると述べられている。
(10)『データブック現代日本人の宗教-戦後50年の宗教意識と宗教行動-』石井研士/著 新曜社 1997年
「第二章 現代日本人の宗教意識と宗教行動」には、現代日本人の宗教行動に関する調査データが、表やグラフの形で多く掲載されている。
- 事前調査事項
- NDC
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- 宗教学.宗教思想 (161 10版)
- 宗教史.事情 (162 10版)
- 参考資料
- キーワード
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- 無宗教
- 日本人
- 宗教心
- 宗教
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 学生
- 登録番号
- 1000288482