レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年1月22日
- 登録日時
- 2022/02/04 15:42
- 更新日時
- 2022/02/20 21:20
- 管理番号
- 県立長野-21-227
- 質問
-
解決
日本でワードプロセッサ(ワープロ)が使用され始めたのはいつか
- 回答
-
※表記について
資料によって「ワードプロセッサー」「ワードプロセッサ」「ワープロ」と異なるため、各資
料の表記通りにした。
ワードプロセッサの歴史をたどるとタイプライタがある。
大正4年に邦文タイプライタ、大正12年にカナタイプライタが開発された。
「日本語ワードプロセッサ」というかな漢字まじり文を作成できるワードプロセッサは、1977年
5月のビジネスショーでシャープが試作機を出展し、1978年9月に東京芝浦電気(東芝)がかな漢
字自動変換方式日本語ワードプロセッサ「JW-10」を開発したのが第1号機とされている。
<図書>
『現代用語の基礎知識』自由国民社1987【031/10/‘87】
p.940-941 日本語ワードプロセッサ(俗称ワープロ)の項目
わが国では、漢字があるため英文タイプライタに相当するものはなかった。大正四年には
邦文タイプライタが開発された。カナタイプライタは大正十二年開発され、カナ文字運動
が始まった。(中略)昭和五三年九月東芝の森健一工学博士らの手によって、かな漢字自
動変換方式日本語ワードプロセッサが開発され、以後急速に普及した。
(後略)
『日本のコンピュータ史』情報処理学会歴史特別委員会編 オーム社 2010【548.2/ジヨ】
第3章 日本のコンピュータの発展 3・6 日本語ワードプロセッサ(ワードプロセッサ)
3・6・1 概論 p.130
1964年,米国IBMはタイプライタに処理装置・記憶装置を付けたMT/ST(Magnaetic Tape/
Selectric Typewriter)を発表し,word processingという概念を提唱した.MT/ST最大の
メリットは打ち損じを簡単に修正でき,また文書の再利用を可能にしたことである.これ
はオフィス業務にとって大きな進歩であった.日本語ワードプロセッサの登場は1978年ま
で待たなければならず,十数余年遅れることになったが,ひとえに漢字入力の困難がその
原因であった.
3・6・1 概論 p.131
(前略)
その成果は初の日本語ワードプロセッサJW-10となり,1978年9月26日の新聞発表を経て,
翌月3日から東京流通センターで開催された第6回データショウにおいてオペレータによる
入力・編集デモのようすが一般公開された.この日を記念して,9月26日は「ワープロの日」
とされている.
(後略)
『メディアとしてのワープロ』武田徹著 ジャストシステム 1995【336/タ】
第4章 ワープロの第一号機誕生 p.62
(中略)
産業史の資料を丹念にたぐっていると、初めて日本語ワードプロセッサーを名乗るモデ
ルが登場したのは一九七七年五月のビジネスショーにおいて、シャープからの出展だった
ことが知られている。しかし―――。そこには一つ謎めいた事実がある。このモデルは
「試作機」と呼ばれるだけで形式名もついていないのだ。
p.77- p.78
僕は再びシャープ広報室にお願いして、当時の事情を窺い知れる資料が、何か残ってい
ないか調べてもらった。その結果、ショー会場でシャープが配ったパンフレットと、「初
の日本語ワープロ」の登場を報じる『東洋経済』(一九七七年六月二十五日)などの記事
を手に入れることができた。
(中略)
そのまま商品として販売するのは難しかったのだろう。つまり、このモデルはやはり、
あくまでもショーで先進技術の可能性を示すためのものだった―――。思えば、白須賀さ
んが先の取材において数少ない言葉の中でこう語っていたことは、その意味でこの試作機
の性格を的確に示していたのだ。
「私たちは言葉を使い分けているんですが。世の中におめみえしたのはシャープが最初、
商品の一号機を作ったのは東芝だと」
いずれが「日本初」だったのかの議論は、このようにワープロの性格がもとより異なっ
ているので、あまり意味を持たない。ただこうした「日本初」を巡る経緯の中で、一つの
事実を確認することはできる。天野さんが一九七七年の冬に学会で初めて「日本語ワード
プロセッサー」という言葉を使ってみせたことと、その春にシャープから「日本語ワード
プロセッサー」試作機が出品されたことはおそらく無関係ではないし、シャープの試作機
の登場とJW-10の開発が早められたこととも多分無関係ではなかっただろう。
<新聞>
・朝日新聞 1979(昭和54)年5月9日 東京/朝刊 6ページ
「(広告)日本タイプライター ビジネスショウ/東京芝浦電気 東芝 日本語ワードプロ
セッサ」
日本タイプライターの歴史は大正4年(1915年)から始まります。この年日本で初めて
和文タイプを発明したのです。以来、次々に独自の和文タイプライタを作り続けていま
す。電子の生命を吹きこんだ和文タイプ・ホープン1000-EL。だれにでもすぐ打てる、大
好評の小型和文タイプ・パンライターや電動式のネオライターもそのひとつ。また、世界
の名門・アドラー社と提携。英文タイプライタ・アドラーも販売しています。日本タイプ
ライターは今後も、研究開発を重ね、優れた製品をお届けしてまいります。
・朝日新聞 1979(昭和54)年1月29日 朝刊 11ページ
「カタカナで打つだけで漢字かなまじり文に」
・日経産業新聞 1978(昭和53)年9月27日 4ページ
「東芝、カナで入力した文章を自動的に漢字まじり文に変換するワードプロセッサー開発。」
また、日経産業新聞の1978(昭和53)年5月9日に、クスダ事務機が西ドイツオリンピア社製のワー
ドプロセッサーの輸入販売を開始したという記事があった。
・日経産業新聞 1978(昭和53)年5月9日 日経産業新聞 3ページ
「クスダ事務機、西独オリンピア社製ワードプロセッサー2機種を輸入販売。」
<参考レファレンス事例>
管理番号:県立長野-21-228 「日本でワードプロセッサが取り入れられた際の価格はいくらか」
管理番号:県立長野-21-229 「ワードプロセッサは日本でどの程度普及したか」
- 回答プロセス
-
1 当館の蔵書検索で所蔵資料を調べる。キーワード「ワードプロセッサ」「ワープロ」
日本十進分類法582.33(ワードプロセッサ)類の資料ヒットなし。範囲を広げて582類の資料を
調べる。
『キーボード配列QWERTYの謎』安岡孝一著 NTT出版 2008【582.3/ヤコ】
初期の海外のタイプライタの記述はあるが、日本語入力のタイプライタの記述はなし。
『パソコンは日本語をどう変えたか』YOMIURI PC編集部著 講談社 2008【007.63/ヨミ】
ソフトウェアのワープロ中心。現代用語の基礎知識の説明にもあった森健一の日本語ワード
プロセッサーの開発話あり。
2 国立国会図書館サーチで調べる。キーワード「ワードプロセッサ」
ヒットした資料が当館に所蔵あるか確認、所蔵資料を調べる。
『人類の歴史を変えた発明1001』ジャック・チャロナー編 ゆまに序棒 2011【507.1/チジ】
1ページ程度の説明あり。
『日本のコンピュータ史』情報処理学会歴史特別委員会編 オーム社 2010【548.2/ジヨ】
上記回答の記述を見つける。
3 『現代用語の基礎知識』自由国民社【031/10/】で、ワードプロセッサーの項目を調べる。
4 当館契約の新聞データベースで調べる。キーワード「ワードプロセッサ」「ワープロ」「タイプ
ライタ」で見出し語または本文検索する。
多数の新聞記事がヒットする。
使用した新聞データベース
・信濃毎日新聞データベース
・聞蔵Ⅱビジュアル(朝日新聞)
・毎索(毎日新聞)
・中日新聞・東京新聞記事データベース
・日経テレコン(日本経済新聞社)
・ヨミダス歴史館(読売新聞)
5 日本語プロセッサを開発した東京芝浦電気(現在の東芝)の森健一の視点から、東芝の社史を調
べる。
当館に所蔵しているのは『東芝百年史』東京芝浦電気 1977【540/50】のみで、日本語プロセッサ
を開発した1978年より以前の出版年だった。
6 再度当館の蔵書検索で所蔵資料を調べる。キーワード「電子計算」
『メディアとしてのワープロ』武田徹著 ジャストシステム 1995【336/タ】
上記回答の記述を見つける。
7 『メディアとしてのワープロ』p.77に記述のあった『東洋経済』(一九七七年六月二十五日)の
所蔵を調べる。
当館に該当資料の所蔵なし。
8 雑誌記事検索データベース「Magazinplus」で雑誌記事を検索する。
キーワード「ワードプロセッサ」「ワープロ」
斎藤謙司「ことばの泉 ワードプロセッサ」『情報管理』21(11) 1979.2 p.892-893
富永勲「新製品・新技術紹介日本語ワードプロセッサJW-10」『情報管理』21(12)
1979.3 p.972-974
上記どちらもサイト「J-STAGE」で閲覧可能。(最終確認日:2022年2月6日)
<調査資料>
『近代用語の辞典集成 8』大空社 1994 【031/225/8】
『人類の歴史を変えた発明1001』ジャック・チャロナー編 ゆまに書房 2011【507.1/チジ】
『電脳辞書の国語学 ワープロ日本語変換の徹底検証』箭内敏夫著 おうふう 1994【007.6/202】
『日本の電子計算機 1995』日本電子工業振興協会情報産業部第1課 1995【548.2/31/‘95】
『コンピュータガイドブック 1996 日本の電子計算機』日本電子工業振興協会情報産業部第1課
1996【548.2/31/‘96】
『キーボード配列QWERTYの謎』安岡孝一著 NTT出版 2008【582.3/ヤコ】
『パソコンは日本語をどう変えたか 日本語処理の技術史』YOMIURI PC編集部編 講談社 2008
【007.63/ヨミ】
『値段史年表 明治・大正・昭和』週刊朝日編 朝日新聞社 1988【337.82/アサ】
『日本統計年鑑』総務庁統計局編 日本統計協会【351/104】
『全国物価統計調査報告』総務庁統計局編 日本統計協会【337/143】
『小売物価統計調査年報』総務庁統計局編 日本統計協会【337/140】
『消費者物価指数年報』総務庁統計局編 日本統計協会【337/120】
以下の語は、当館契約データベース「ジャパンナレッジ」で検索。
ワードプロセッサとは
『日本国語大辞典』
コンピュータによる文書の作成装置。キーボードからの入力による文字がディスプレーに表示・
変換され、プリントアウトもできる機械。ワープロ。
『情報・知識imidas』
(1)【IT関連用語】【コンピューター】文章の作成・編集・印字に使うアプリケーションソ
フト
(2)【IT関連用語】【コンピューター】文書作成機.文章を編集・加工・印字するための機
器.ワープロ.
タイプライタとは
『日本大百科全書(ニッポニカ)』
活字を一字ずつ鍵盤(けんばん)を押して印字し、文書を作成する書記機械。欧文タイプライ
ター、仮名タイプライター、和文タイプライターがある。
活字を使用するため、鮮明な印字が得られるのが特徴である。
和文タイプライタとは
『デジタル大辞泉』
日本語用のタイプライター。大正4年(1915)、杉本京太が考案。邦文タイプライター。
- 事前調査事項
- NDC
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- 事務機器.家庭機器.楽器 (582)
- 言語生活 (809)
- 参考資料
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自由国民社. 現代用語の基礎知識 1987年版. 自由国民社, 1987.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001854870-00 -
情報処理学会歴史特別委員会 編 , 情報処理学会. 日本のコンピュータ史. オーム社, 2010.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000011018874-00 , ISBN 9784274209338 -
武田徹 著 , 武田, 徹, 1958-. メディアとしてのワープロ : 電子化された日本語がもたらしたもの. ジャストシステム, 1995.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002512509-00 , ISBN 4883093026 -
週刊朝日 編 , 週刊朝日編集部. 戦後値段史年表. 朝日新聞社, 1995. (朝日文庫)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002428561-00 , ISBN 4022611081 -
経済企画庁調査局 , 経済企画庁調査局. 家計消費の動向 昭和63年版. 大蔵省印刷局, 1989.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I098359504-00
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自由国民社. 現代用語の基礎知識 1987年版. 自由国民社, 1987.
- キーワード
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- ワードプロセッサー
- ワープロ
- タイプライタ
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000311818