当館所蔵資料のうち、参考として以下のものを紹介した。「被布」のほか、「披布」「被風」「披風」の表記が見られた。※旧字体の一部を新字体で表記している。
①『日本国語大辞典 第11巻』
「ひふ【被風・披風・被布】」の項目には「(1)近世の公家(くげ)が、略儀の外出に着用した簡易な盤領(まるえり)の道服の一種」「(2)着物の上にはおる防寒具。男女ともに用いる。(略)現在の被布の祖型。僧侶・医者・俳人などが好んで用いた。」「(3)(被布)明治時代に(2)が変形したもの(略)多く袖がない。」と記載があった。(2)の例文として資料②③からの引用が記載されている。「偐紫田舎源氏」の図がある。
②『事物起源選集 11 ものしり事典 芸能娯楽篇』(『ものしり事典 芸能娯楽篇 下』河出書房 昭和28年刊の復刻)
p.213「被布の始」に「そのおこりは享和のころ」との記載があった。出典は『世のすがた』とあり。
③『新・繊維総合辞典』
「被布」の項目には、「戦国時代の旅行着として始まり享和年間(1801~04)には、江戸の俳人や茶人などの男性と一部の特権階級の女性たちに流行した。明治以降は専ら女性用として広まっている」とあった。
④『日本服飾史 男性編』
江戸時代の町人の姿をした等身大人形(半合羽を着用)の写真とともに、半合羽の紹介をしていて、「寛文の頃創案された。(中略)襟は立って、上部に装束と呼ぶボタン掛けなどがあり、旅行用として用いられた。これが後世の被風、コートなどの原型となった」と書かれている。
⑤『江戸繁昌記』
『新日本古典文学大系 100 江戸繁昌記』所収。p157に「半衣、披布(ヒフ)、袖を連て掛下す」との記載あり。「着物の上に羽織る防寒衣」との語句注釈あり。
⑥『守貞漫稿』
『近世風俗志 2 守貞謾稿』所収。p363に「被布と云う服あり。その始めを詳らかにせず」との記載あり。以下、利用例や形の説明と図がある。
⑦『世のすがた』
『未刊随筆百種 第6巻』所収。p.35-36に「享和のころより被風といふもの流行して、文政の頃は女子或は出家に至るまで、みなこれを著す(略)」という記述があった。後記のp.454に「世のすがた」についての解題が付されている。
そのほか、インターネットで利用できる参考になりそうなデータベースを紹介した。
⑧人間文化研究機構「統合検索システム」
後述の⑨⑩⑪など、国立歴史民俗博物館、国文学研究資料館、国立国語研究所、国際日本文化研究センター、総合地球環境学研究所、国立民族学博物館などの複数のデータベースを一度に検索することができる。
https://int.nihu.jp/?lang=ja&⑨国立民族学博物館「身装文献データベース」
服装関連日本語雑誌記事(カレント)、服装関連日本語雑誌記事(戦前編)等を検索することができる。
https://htq.minpaku.ac.jp/databases/mcd/publications.html⑩国立民族学博物館「身装画像データベース<近代日本の身装文化>」
明治維新(1868年)以降、第二次世界大戦終結(1945年)までを対象として、当時の新聞小説挿絵、写真、図書中の図版、ポスターなどで構成されている。
https://htq.minpaku.ac.jp/databases/mcd/shinsou.html⑪国立歴史民俗博物館「歴博画像データベース」
国立歴史民俗博物館が所蔵している資料についての検索が可能。
https://www.rekihaku.ac.jp/education_research/gallery/imgdb/index.html