レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年1月6日
- 登録日時
- 2022/01/22 10:05
- 更新日時
- 2022/02/17 12:17
- 管理番号
- 県立長野-21-216
- 質問
-
未解決
「虎は千里行って千里還る」ということわざの出典(日本なのか中国なのか)を知りたい。
- 回答
-
「虎は千里行って千里還る」ということわざの出典が日本なのか中国なのかはわからなかった。
『日本国語大辞典 第9巻』小学館国語辞典編集部編 小学館 2001 【813.1/シヨ】 p1373
「とらは千里行って千里帰る(戻る) 虎は一日の間に千里の遠くに出かけてまた戻ってくること
ができる。転じて勢いの盛んなさまのたとえにいう。」
出典は江戸後期の辞典「譬例尽」となっている。
『たとへづくし 譬例尽』松葉軒東井編 同朋舎 1979【814/37/1】 p.92 「虎は千里往って千里還
る」の項目を確認したが解説の有無を確認できなかった。
『角川古語辞典 第4巻』中村幸彦編 角川書店 1994【813.6/ナユ/4】p.720
「千里を往復するという能力、張子虎、虎皮褌、竹との配合などが、絵や説話、演劇、信仰などを通
して日本人の生活に入っている。」
と記載されている。
国立国会図書館の電子展示会「錦絵で楽しむ江戸の名所」の虎ノ門の由来の解説に
「虎ノ門の由来は、付近の屋敷に虎の尾と呼ぶ桜があった。太田道灌の出陣に際し千里行って帰
るという虎にちなんだ」
とあり。【最終確認2022.2.17】
参考文献の『角川日本地名大辞典 13』「角川日本地名大辞典」編纂委員会編 角川書店 1978
【291.03/カド/13】の虎ノ門の項目には出典は『新編江戸志』とあり、
国立国会図書館デジタルコレクション『新編江戸志』(最終確認R4.1.27)
に「本文引用して」とあり、『紫の一本』を出典としている。これに続けて著者の一人である瀬名貞雄
の説が記されており、虎ノ門の建てられた年代と太田道灌とはかみ合わないことが述べられている。
また当館所蔵の『紫の一本』が収録されている
『新編日本古典文学全集 82』小学館 2000 【918/シン/82】
では虎ノ門についてp.44に「その次は虎の御門。」とあるのみで、出陣の件を確認できなかった。
『国書刊行会叢書[225]』国書刊行会編 国書刊行会 1915 【081/16/225】も同様。
『角川古語大辞典 第4巻』中村幸彦編 角川書店 1994【813.6/ナユ/4】 p.723
「虎之御門 太田道灌此城より出陣せば、万民ともに堅固なるべし。千里ゆくとも無事にて千里帰る
と祝して虎の門と名付けと云(紫の一本)此説甚信じがたし。(-中略-)此御門などその時より設
あるべきの理なし(御府内備考・三)」
と記載あり。
『大日本地誌大系1 御府内備考』雄山閣 1970【291.08/12/1】 p.50 に上記の記載あり。出典
はなし。
- 回答プロセス
-
1 ことわざ、故事、慣用句の辞典を調べる。
いずれも記載はあるが、出典はない。
2 『大漢和辞典』を調べる。
「虎」「千」「里」「行」「往」「還」で調べるが確認できず。
3 インターネットにて「虎」「千里」などのキーワードを検索。
国立国会図書館デジタルコレクションで『新編江戸志』にある「虎ノ門」が見つかる。参考文献の『角川日本地名大辞典』から『紫の一本』までたどるが出典は確認できず。
『新編江戸志』には、虎ノ門設置と太田道灌の時代の食い違いについての記述あり。
4 「虎ノ門」の地名で調べる。
『角川古語大辞典』でも上記と同様の記述あり。
5 論文で「虎」のキーワードを検索。
このことわざは見当たらず。
北海道教育大学学術リポジトリ
馬場俊臣著「『虎』に関することわざ:虎をどう捉えてきたか」
『札幌国語研究』16号 p.19-28 2011
愛知大学リポジトリ
鄭高咏著「虎のイメージに関する一考察」『言語と文化』12号 p.113-134 2005
<調査済資料>
・『故事ことわざ活用辞典 言いたい内容から逆引きできる』創拓社 1993 【813.4/コジ】
・『三省堂故事ことわざ・慣用句辞典』三省堂編修所編 三省堂 2010 【813.4/サン】
・『故事・俗信 ことわざ大辞典』向学図書編集 小学館 1982 【388.8/シヨ】
・『小学館ことわざを知る辞典』北村孝一編 小学館 2018 【813.4/キヨ】
・『ことわざと故事・名言辞典』野本米吉著 法学書院 1994 【388.8/ノヨ】
・『故事・ことわざ辞典』新星出版社 1980 【813.4/シン】
・『新編故事こたわざ辞典』鈴木棠三編著 創拓社 1992 【813.4/スト】
・『成語林 故事ことわざ慣用句』旺文社編 旺文社 1992 【813.4/オウ】
・『大漢和辞典 巻9』諸橋轍次著 大修館書店 1960 【813/60A/9】
・『大漢和辞典 巻11』諸橋轍次著 大修館書店 1960 【813/60A/11】
・『大漢和辞典 巻2』諸橋轍次著 大修館書店 1960 【813/60A/2】
・『大漢和辞典 巻4』諸橋轍次著 大修館書店 1960 【813/60A/4】
・『故事成語名言大辞典』鎌田正著 大修館書店 1988 【813.4/カタ】
・『中国故事名言辞典』加藤常賢著 角川書店 1979 【823.4/カジ】
・『中国故事たとえ辞典』連環画 小学館編 小学館 1983【388.82/シヨ】
・『中国故事たとえ辞典』細田三喜夫編 東京堂出版 1980【388.82/ホミ】
・『岩波ことわざ辞典』時田昌瑞著 岩波書店 2000【388.81/トマ】
・『太田道灌 太田道灌公五百三十回忌記念誌』太田道灌顕彰会編
太田道灌顕彰会 2016【289.1/オド】
・『太田道灌 太田道灌公五百二十回忌記念誌』太田道灌公五百二十回忌記念誌編集担当編
太田道灌公墓前祭実行委員会 2006【289.1/オド】
・『太田道灌 太田道灌公五一〇回忌 記念誌』太田道灌公墓前祭実行委員会編
太田道灌公墓前祭実行委員会記念編纂会 1996【289.1/オド】
・『古今著聞集 上・下』橘成季編著 新潮社 1983【918/シン/48】
- 事前調査事項
- NDC
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- 辞典 (813 10版)
- 日本 (291 10版)
- 参考資料
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中村幸彦 [ほか]編 , 中村, 幸彦, 1911-1998. 角川古語大辞典 第4巻 (たーは). 角川書店, 1994.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000002420344-00 , ISBN 4040119401 -
「角川日本地名大辞典」編纂委員会編 , 「角川日本地名大辞典」編纂委員会. 角川日本地名大辞典 1 北海道 上,1 北海道 下,2 青森県,3 岩手県,4 宮城県,5 秋田県,6 山形県,7 福島県,8 茨城県,9 栃木県,10 群馬県,11 埼玉県,12 千葉県,13 東京都,14 神奈川県,15 新潟県,16 富山県,17 石川県,18 福井県,19 山梨県,20 長野県,21 岐阜県,22 静岡県,23 愛知県,24 三重県,25 滋賀県,26 京都府 上,26 京都府 下,27 大阪府,28 兵庫県. 角川書店, 1978.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I010659479-00 -
松葉軒東井 [編] , 宗政五十緒 [校訂] , 松葉軒, 東井 , 宗政, 五十緒, 1929-2003. たとへづくし : 譬喩尽. 同朋舎, 1979.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001442910-00 -
蘆田伊人 編集校訂 , 蘆田, 伊人, 1877-1960. 御府内備考 第1巻. 雄山閣, 2000. (大日本地誌大系 ; 1)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003628731-00 -
鈴木淳, 小高道子校注・訳 , 松永, 貞徳 , 戸田, 茂睡 , 本居, 宣長 , 鈴木, 淳 , 小高, 道子. 近世随想集. 小学館, 2000. (新編日本古典文学全集, 82)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I006131712-00 , ISBN 4096580821
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中村幸彦 [ほか]編 , 中村, 幸彦, 1911-1998. 角川古語大辞典 第4巻 (たーは). 角川書店, 1994.
- キーワード
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- 虎
- 千里
- 太田道灌
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000311046