レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2016年6月28日
- 登録日時
- 2016/10/15 00:30
- 更新日時
- 2022/07/21 14:26
- 管理番号
- ASH2016-04
- 質問
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解決
(1):図書館での複写物を授業参加人数分複製し、授業で配布するのは可能か
(2):(1)の複製を図書館以外で行っても良いのか
- 回答
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(1)著作権法第三五条の一項で認められていますので可能です。
(2)著作権法第三十一条の一項で、図書館内での複写は「一人につき一部」しか認められておらず、図書館では複写の複製が認められておりません。よって、図書館以外の場所で「教育を担任する者及び授業を受ける者」が著作権の範囲内で複製するのは可能です。
- 回答プロセス
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1.著作権法を確認>
【★1】著作権法から図書館や学校での複写に関係する「第五款 著作権の制限」内の三十~三十九条を確認
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S45/S45HO048.html
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(図書館等における複製等)
第三十一条 一項 国立国会図書館及び図書、記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設で政令で定めるもの(以下この項及び第三項において「図書館等」という。)においては、次に掲げる場合には、その営利を目的としない事業として、図書館等の図書、記録その他の資料(以下この条において「図書館資料」という。)を用いて著作物を複製することができる。
一 図書館等の利用者の求めに応じ、その調査研究の用に供するために、公表された著作物の一部分(発行後相当期間を経過した定期刊行物に掲載された個々の著作物にあっては、その全部。第三項において同じ。)の複製物を一人につき一部提供する場合
二 図書館資料の保存のため必要がある場合
三 他の図書館等の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料(以下この条において「絶版等資料」という。)の複製物を提供する場合
(学校その他の教育機関における複製等)
第三十五条 一項 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びにその複製の部数及び態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
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→法三十一条一項と法三十五条が質問内容に該当することを確認。ただし具体的範囲などが分からないため詳しい事例やガイドラインを調査。
2. 【大学図書館における著作権問題Q&A(第8版)】(2012.3.23)から探す
【★2】http://www.janul.jp/j/documents/coop/copyrightQA.pdf
■p.51に以下のQ&Aあり
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Q107:ゼミで利用するために、雑誌に掲載された論文を、教員がゼミ生の人数分複写することに問題はないでしょうか。また、学生が複写する場合はどうでしょうか。
A:法35条1項で「教育を担任する者」及び「授業を受ける者」が「必要と認められる限度において」複製することを、無許諾無報酬で行えるとされています。しかしながら、権利者側からは、図書館内での複製は法31条に基づく複製に限られるべきとの主張があり、図書館に設置された複写機で法35条に基づく複製を認めるかについては、慎重に判断しなければなりません。なお、法35条に基づく複製においても、受講者数の複写に限るなど、権利者の利益を害することのないように細心の注意が必要です。
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→授業参加人数分の複写は可能だが、図書館で複数枚の複写が可能かは判断が難しい。図書館で1枚複写した資料を、その後別の場所で授業人数分複写する必要がありそう。
3.レファレンス協同データベースから探す
<キーワード:著作権 大学 複写>
【★3】レファレンス協同データベース:登録番号1000055722
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000055722
■当館の質問に似た事例を発見
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・質問:授業時間内にある新聞記事を学生に人数分配布したいと思っているのだが、著作権的に問題ないか?
・回答:先ほどお電話でお尋ねいただきました、授業時間内に新聞記事を学生の人数分配布する件でございますが、図書館実務で参考にしておりますガイドラインに、以下のような事例が載っておりましたのでご案内いたします。
■『大学図書館における著作権問題Q&A(第7版)』2009.3.27
http://wwwsoc.nii.ac.jp/anul/j/documents/coop/copyrightQA_v7.pdf
Q107(上記2の第8版:Q107と同じ)
QAは雑誌を例にしておりますが、新聞も同様のものと思われます。上記ガイドラインの内容からすると、先生のご要望は無許諾無報酬で行える範囲内かと思われます。更に厳格な確認をご希望の場合は以下にお問い合わせいただきたく存じます。
■著作権情報センター「著作権テレホンガイド」 TEL(03)5353-6922
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→上記2と同じ判断と考えられる
4.公共社団法人著作権情報センターから探す
【★4】http://www.cric.or.jp/qa/cs01/index.html
■著作権Q&A:【学校教育と著作権】に質問内容に似たQ&Aあり
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Q2 授業の過程で使用するために教員が作成する教材に、既存の著作物を利用する場合、どのような点に注意すればよいですか。
A2 授業の過程では、教科書や副読本以外の補助教材を、教員の手により作成することがあります。その際、全て教員自身が創作する場合だけでなく、既存の著作物を利用して教材を作成する場合も多いと思われます。著作権法では、このような場合に無断で他人の著作物を利用できる例外規定が設けられています。(後略)
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→授業での複写利用は可能だが、図書館での複製については特に言及無し
5.日本書籍出版協会を確認
【★5】日本書籍出版協会のサイトに「学校等での複製」についてのページあり
http://www.jbpa.or.jp/pdf/guideline/act_article35_guideline.pdf
平成16年(2004年)3月公開の『学校その他の教育機関における著作物の複製に関する著作権法第35条ガイドライン』あり
→担当教員もしくは参加者による複製は可能だが、おおよそ50人ぐらいまでと人数に限りあり。また、問題集や連載物などは複写できないことも確認。複製場所については言及無し。
6.当館の所蔵資料を探す
6-1当館のOPACをキーワードで探す
<キーワード:著作権/図書館/大学/学校/授業/先生/複写>
6-2当館のOPACを件名を使って再度検索
<件名:著作権/学校経営/学校図書館>
6-3関連しそうな分類の棚を直接探す
<017:学校図書館/021:著作.編集/374:学校経営・管理.学校保健/375:教育課程.学習指導.教科別教育>
【★6】『学校図書館の著作権問題Q&A 』
→学校図書館や授業での複写に関してQ&A形式で記述があり、図書館での複製に言及したQ&Aがp.26-27にあり。図書館で人数分複製可能だと書いてあるが、これ以外に明言された資料なしのため検討が必要。
【★7】『その論文は著作権侵害? : 基礎知識からQ&A』
→著作権の基礎知識から適切な利用法、Q&A形式の記述あり。p.110に質問内容に酷似する事例”Q14大学の講義で利用するために、文献を学生の人数分コピーして配布することは問題ないか”あり
【★8】『必携!教師のための学校著作権マニュアル』
→p.25~「Ⅱ授業の場面」での教材の利用方法などについて事例をあげて解説あり
【★9】『ガイドブック教育現場の著作権』
→p.49~「授業のためのコピー(複製)における注意点」で著作権法第三十五条の用語解説やガイドラインの紹介、”必要と認められる限度”についての解説などあり
以上
<Web最終確認日:2016/10/21>
(2022/07/21追記)
情報提供により、次のURLが変更されたことが分かった。
(情報提供者:国立国会図書館レファレンス協同データベース事業事務局様)
【★1】著作権法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=345AC0000000048_20220525_504AC0000000048
- 事前調査事項
- NDC
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- 学校図書館 (017 9版)
- 著作.編集 (021 9版)
- 学校経営.管理.学校保健 (374 9版)
- 参考資料
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【★1】著作権法
http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S45/S45HO048.html (Web最終確認日:2016/10/21) -
【★2】大学図書館における著作権問題Q&A(第8版)
http://www.janul.jp/j/documents/coop/copyrightQA.pdf (Web最終確認日:2016/10/21) -
【★3】レファレンス協同データベース:登録番号1000055722
https://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000055722 (Web最終確認日:2016/10/17) -
【★4】公共社団法人著作権情報センター>著作権Q&A>学校教育と著作権>Q2
http://www.cric.or.jp/qa/cs01/index.html (Web最終確認日:2016/10/21) -
【★5】日本書籍出版協会>ガイドライン>学校等での複製
http://www.jbpa.or.jp/pdf/guideline/act_article35_guideline.pdf (Web最終確認日:2016/10/21) -
【★6】『図書館の著作権問題Q&A』日本図書館協会著作権委員会 編著 日本図書館協会 2006
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008348754-00 , ISBN 4820406159 (当館請求記号:017/N772) -
【★7】『その論文は著作権侵害?: 基礎知識からQ&A』服部誠 著 中山書店 2010
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010845733-00 , ISBN 9784521732091 (当館請求記号:0212/H44) -
【★8】『必携!教師のための学校著作権マニュアル』清水康敬 監修,中村司,西田光昭,清水俊一 編著 教育出版 2006
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008153025-00 , ISBN 4316801651 (当館請求記号:374/N37) -
【★9】『ガイドブック教育現場の著作権』本橋光一郎 監修,小川昌宏,下田俊夫 著 法学書院 2006
http://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000008321956-00 , ISBN 4587216259 (当館請求記号:374/O24)
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【★1】著作権法
- キーワード
-
- 著作権
- 学校・大学
- 図書館
- 複写
- 授業
- 配布
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- その他
- 内容種別
- 著作権
- 質問者区分
- 教員
- 登録番号
- 1000198182