大正時代における文房具(万年筆やシャープペンシルなど)の購買層や具体的な普及率等に関する資料は見つかりませんでした。参考までに調査した資料の中から数点紹介します。
・『ステイショナリーと万年筆のはなし』(東京アド・バンク/編 東京アド・バンク 1981.2)
p.50-64に明治から大正にかけての記述があります。価格(当時のモリソバとの値段の比較)や生産の歴史に関する記述ならびに使用していた著名人についての内容がほとんどで消費者階層や普及についての言及がありません。
・『万年筆の達人:最高の万年筆を求めて…』(古山浩一/著 枻出版社 2006.3)
「丸善アテナ万年筆とインクの系譜を辿る」(p.234-243)に大正7年当時の価格について「オノトが7円の時、丸善オリオンが2.8円、アルビオンが5.5円、レディースサイズのポニーアルビオンが5円だった」という記述がありますが、どういう人が買っていったかは書かれていません。
・『文具の歴史』(田中経人/著 リヒト産業 1972.11)
前半部分は、明治以降の文具に関する対談、後半部分は、インキ、鉛筆、万年筆、シャープペンシルなど個々の文具に関する記述内容になっています。いずれも特に購買層ならびに普及等に関する記述はなさそうです。
・『舶来事物起原事典』(富田仁/著 名著普及会 1987.12)
「万年筆」の項目に「万年筆は日露戦争のとき、軍人たちに支給され、それが戦火の中での事務処理にきわめて便利だったということで、日露戦争後広く一般にも普及するようになった」とあります。この記述以外は歴史に関する記述となっています。
・『東京文具発展史』(東京文具商報社 1929)
明治以降の東京の文具業界の主に人物誌。万年筆については記述はありません。
・『万年筆国産化一〇〇年:セーラー万年筆とその仲間たち』(桐山勝/著 三五館 2011.3)
セーラー万年筆を中心とした国産万年筆の歴史。製造側と文化人の話が中心のようです。
また、大正当時の家庭生活に関する資料も調査しましたが、文具類に関する記述は見つかりませんでした。こちらの方も参考までに3点紹介します。
・『大正文化 帝国のユートピア:世界史の転換期と大衆消費社会の形成』(竹村民郎/著 三元社 2004.2 請求記号:210.69/48N)
・『日常生活の誕生:戦間期日本の文化変容』(バーバラ・佐藤/編 柏書房 2007.6 請求記号:210.69/65N)
・『大正期の家庭生活』(湯沢雍彦/編 クレス出版 2008.8 請求記号:210.69/70N)