レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021/08/11
- 登録日時
- 2021/09/02 00:30
- 更新日時
- 2021/09/24 11:00
- 管理番号
- 10174842
- 質問
-
未解決
1961年の日英文化協定により、オックスフォード大学附属東洋美術館(Ashmolean Museum)に40点の現代版画が寄贈されたと外交青書に書かれているが、その寄贈についての経緯(誰がどうやって40点の版画を選定したか、なぜアシュモリアン博物館が選ばれたのか)を調べたい(公文書関係を除く)。
アシュモリアンやオックスフォード大学側にはこれに関する資料が残されていないようである。
- 回答
-
以下のとおり、主として美術関係の資料を確認しましたが、日英文化協定に基づくアシュモリアン博物館への現代版画の寄贈の経緯等は判明しませんでした。
[主な調査済資料およびウェブサイト]
【 】内は国立国会図書館請求記号です。書誌事項末尾に◎を付した資料は国立国会図書館デジタルコレクションの国立国会図書館/図書館送信参加館内公開資料です。
1. 美術関係資料
平山郁夫, 小林忠 編著・監修『秘蔵日本美術大観 4 (大英図書館,アシュモリアン美術館,ヴィクトリア・アルバート博物館)』講談社, 1994.2【YP11-245】
* pp.102-104「オックスフォード大学所蔵の日本美術品」:アシュモリアン美術館東洋美術部次長オリヴァー・イムピーの文章であり、「一九六一年の東洋美術部創設にあたり、日本政府から贈られた現代版画のコレクションもある」(p.103)との記載があります。
Japanese paintings in the Ashmolean Museum, Oxford / Janice Katz ; with an introductory essay by Oliver Impey
Ashmolean Museum, c2003【K3-B46】
* 寄贈の現代版画に相当するものは見当たらないようでした。
『日本版画美術全集 第6巻』講談社, 1961【738-N684】◎
* pp.101-115「第6部 日本版画年表」
東京国立文化財研究所美術部 編『日本美術年鑑 昭和37年版』東京国立文化財研究所, 1963【705.9-N684-B】
* pp.5-6「昭和36年美術史年表」8月
* 「物故者記事」欄等を除き、東京文化財研究所刊行物リポジトリで閲覧可能です。
http://doi.org/10.18953/00005625
* 『日本美術年鑑』の美術界関連記事は、東文研統合検索( http://www.tobunken.go.jp/archives/ )での検索が可能です。「文化協定」等のキーワードで検索し、他の年度についても概観しましたが、関連の記載は見当たりませんでした。
東京国立近代美術館 編『1960年代-現代美術の転換期』東京国立近代美術館, c1981【K111-31】
『日本版画協会史 : 1931-2012』日本版画協会, 2012.10【K6-J98】
2. 寄贈された版画の作家に関する資料
以下の資料の年譜を中心に確認しました。
・利根山光人
世田谷美術館 編『利根山光人展 : 太陽と古代・そして永遠への憧憬』世田谷美術館, 1995【KC16-G12】
* 年譜pp.121-129
・斎藤清
斎藤清 [画], 福島県立美術館 編『斎藤清展 : 生誕100年』福島県立美術館協力会, 2007.7【KC16-J248】
* 斎藤清年譜pp.126-143
・橋本興家
『橋本興家日本の城全版画集』講談社, 1978.9【YP14-516】
* 橋本興家略年譜pp.172-174
・山口源
山口源 [画], 静岡県立美術館 編『生誕100年山口源回顧展 (静岡の美術 ; 8)』静岡県立美術館, c1998【KC16-G1917】
* 山口源年譜pp.189-196:1961年11月に「日本外務省からの要請で英国ケンブリッヂ大学日本館に版画を寄贈する」(p.193)との記載がありますが、アシュモリアンに関するものは見当たりませんでした。
・平塚運一
平塚運一 [画]『平塚運一展 : 木版画に捧げた102歳の生涯』東日本鉄道文化財団, c2000【KC16-G2142】
* 平塚運一年譜pp.116-127
・棟方志功
東京文化財研究所ウェブサイト>物故者記事>棟方志功
https://www.tobunken.go.jp/materials/bukko/9584.html
3. 日英文化協定関係資料(公文書を除く)
3-1. 日英文化協定および日英交流
中井浩「日英文化協定の締結とその意義--両国の国民的な双互理解を深め建設的方向に前進した日英関係」(『時の法令』(通号 384) 1961.4.13 pp.28-33【Z2-50】◎)
* pp.28-29に、国際文化事業実施および国際文化振興会補助金として、外務省に6,400万円の1961年度予算が計上されており、この中から英国との交流に必要な割振りをする旨の記載があります。
サー・ヒュー・コータッツイ, ゴードン・ダニエルズ 編著, 横山俊夫 解説, 大山瑞代 訳『英国と日本 : 架橋の人びと』思文閣出版, 1998.11【A99-GZ-G2】
宮永孝 著『日本とイギリス : 日英交流の400年』山川出版社, 2000.7【GB381-G54】
大木裕子「調査資料 戦後日本の芸術分野における国際文化交流」(『文化経済学』3(2) (通号 13) 2002.9 pp.87-96【Z71-B430】)
* J-STAGEで全文の閲覧が可能です。
https://doi.org/10.11195/jace1998.3.2_87
3-2. 協定関係者(寄贈主体となった可能性のある機関・団体等)
以下に、「日英文化協定に基づく第一回東京混合委員会」(1962(昭和37)年6月29日)についての言及があります。
国立公文書館デジタルアーカイブ:「日英文化協定に基づく第2回東京混合委員会の開催について」
https://www.digital.archives.go.jp/img/2795878 (5-6コマ目)
「両国代表は、両国間の文化交流の実績について検討するとともに」とあることから(6コマ目)、第一回東京混合委員会以前に行われた交流について、当該会議の出席機関および団体(5コマ目)が関係している可能性を想定し、以下の資料を概観しました。
(1)外務省
大野勝巳「在英六年の思い出の中から」(『経団連月報』12(8) 1964.8 p.15-19【Z3-170】◎)
* 筆者は、1961年当時の駐英日本大使です。
(2)国際文化振興会(KBS)
『國際文化』國際文化振興會, [1938]-1972【Z11-170】◎
* 国際文化振興会の機関誌です。
* 1961年の「内外短信」、「KBSニュース」および目次を通覧しました。
『KBS30年のあゆみ』国際文化振興会, 1964【061-Ko548k】◎
国際交流基金ライブラリー 蔵書検索( https://lib-opac.jpf.go.jp/drupal/ )
(3)日英協会
日英協会 編纂『日英協会100年史』博文館新社, 2009.3【UA81-J41】
(4)英国文化振興会(ブリティッシュ・カウンシル)
The British Council : the first fifty years / Frances Donaldson
J. Cape, 1984【AG-611-A2】
ウェブサイトの最終アクセスは、2021年8月10日です。
- 回答プロセス
- 事前調査事項
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外交青書に書かれている文言は以下にある。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/bluebook/1962/s37-7-3.htm
(4 最近の主要文化交流事業の中の「美術関係催物」(国外開催)1961年4月の項)
ロンドンの日本協会(Japan Society)が発行している「Proceedings」には現代版画の寄贈について書かれた記事はない。
当時の日本の新聞(朝日、読売、毎日、日経およびJapan Times)では、日英協定については書かれているが、アシュモリアンへの版画の寄贈について書かれた記事は見つけられなかった。
The Times(1961年8月10日)には、8月9日に駐英国日本大使からオックスフォード大学の学長に40点の現代版画が贈呈された旨の記事があるが、誰が選定したのか、何故アシュモリアンなのかという事については書かれていない。記事中に出てくる作家は、利根山光人、斎藤清、橋本興家、山口源、平塚運一、棟方志功である。
- NDC
-
- 版画 (730 10版)
- 参考資料
- キーワード
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 人文(レファレンス)
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 登録番号
- 1000303992