レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年10月26日
- 登録日時
- 2023/11/08 00:30
- 更新日時
- 2024/03/19 00:30
- 管理番号
- 3A23009626
- 質問
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解決
1939年、奥野椰子夫作詞、服部良一作曲の「夜のプラットホーム」が発売禁止になった後、服部良一が歌詞を英語に替え、洋盤と偽って発売したというのは本当か。
- 回答
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以下の資料に関連する記述がありました。
(1) 『ぼくの音楽人生 -エピソードでつづる和製ジャズ・ソング史-』 (服部 良一/著 日本文芸社 1993.3)
p.179-192「東宝系映画音楽」の章に「夜のプラットホーム」の発売禁止処分について記述があり、p.182に「この曲には、もう一つ話がある。惜しい曲なので、こちらも一案を浮かべ、コロムビアの洋楽部で英語のタイトルと歌詞をつけて洋盤で売り出したのである。日米開戦前だったので英語はまだ許されており、これはそのまま店頭に出て、かなりのヒットを記録した。(中略)『アィル・ビー・ウエイテング』(待ちわびて)の曲名で、歌は洋楽部に籍を置く日独混血児のファクトマンという声楽を勉強していた青年が、ビック・マックスウェルの芸名で吹き込んだのである。(中略)作曲者はR・ハッター。つまり服部良一の隠し名である。」とあります。
(2) 『上海ブギウギ1945 -服部良一の冒険-』 (上田 賢一/著 音楽之友社 2003.7)
p.86-118「3 特殊工作員、服部良一」のp.95に「「夜のプラットホーム」はその二年後、歌詞を英語に替え、「I'll Be Waiting」という英語のタイトルと、さらに「待ち侘びて」といかにもそれらしい邦題までつけ洋盤と偽って発売。歌と演奏は「ヴィック・マックスウェルと彼とダンス・オーケストラ」。作曲と編曲は「R・ハッター」。(中略)ヴォーカルの「Vic Maxwell」とはコロムビア・レコードの社長秘書の日独ハーフの青年、ファクトマン。そして作編曲の「R.Hatter」とは服部さん。HATTORIをもじった変名だった。R・ハッターの変名で洋盤を出したのには、別に深い意味はなく、面白そうだからやってみただけのことだと服部さんは言う。」とあります。
(3) 『大歌謡論』 (平岡 正明/著 筑摩書房 1989.8)
「第十四章 「何日君再来」のドゥエンデ」のp.501-502に「夜のプラットホーム」の発売禁止処分について記述があり、p.502に「せっかくの自信作の発禁をおしんだ服部良一は、これを外国の曲ということにしてコロンビアの洋盤で売りだした。R・ハッター作、ビッグ・マックスウェルの歌、コロムビア・ジャズ・バンドの演奏で「アイル・ビー・ウェイティング」という曲ということにし、流行したのはいいけれど、戦後、服部良一はR・ハッターの曲を盗作したと非難されたそうだ。」とあります。
(4) 『月がとっても青いから -マイ・ラスト・ソング 3-』 久世 光彦/著 (文芸春秋 2001.2)
p.49-54「夜のプラットホーム」のp.51に「この曲は、実は昭和十四年にはもうでき上がっていた。(中略)ところが時代が時代だったので、発売が中止になったのである。諦めきれない服部良一は、歌詞を英訳し、アレンジも新たにして、洋盤として世に出したのだ。(中略)作曲者の名前は、服部良一をもじって、R・ハッターだというから面白い。」とあります。
(5) 『潮』 1981年9月号(281号) (潮出版社 1982.9)
p.180-201 中澤まゆみ「「ダイナ」はもう聞こえない」のp.186-188「外人名でジャズをかいた服部良一」にて「夜のプラットホーム」についての記述があり、p.187に「「夜のプラットホーム」は「I‘m Waiting(待ちわびて)」と改題された。作曲者はハッター(Hatter)。服部の「o」を「e」に替えて、最後の「i」をはぶいたペンネームである。作詞と歌は、コロムビアの洋楽にいたファクトマンという日独混血の男が担当し、「マスクウェル楽団」という名前をでっちあげて、コロムビア・オーケストラが演奏した。」とあります。
(6) 『 新潮』 81巻12号(959号) (新潮社 1984.12)
p.280-302 安岡章太郎、色川武夫「〔対談〕昭和史-はぐれ者の来歴」のp.292-294「映画・ヒット曲を通じて入った西洋」のp.293-294で服部良一について語られており、p.294の安岡氏の言に「「夜のプラットホーム」っていうのあるだろう、戦後はやった。あれは英語の歌だったんですよ。(中略)あれも服部良一が作ったの。「さよなら、さよなら」というのは、シナ事変が始まったとき、直ちに禁止になったわけ。(中略)英語でつくりかえて売り出したんですよ。「グッバイ、グッバイ」というの、そしたら、これは検閲にひっかからなかった。(中略)これは僕はアメリカの歌だと思っていて、アメリカの歌の中にも、なかなかいいのがあると思っていたら、服部良一なんだ。」とあります。
(7) 国立国会図書館デジタルコレクション『中南米音楽 = La musica iberoamericana』 (208) (中南米音楽 1971-07) (図書館・個人送信限定)
https://dl.ndl.go.jp/pid/2267610/1/53 (2023.11.10確認)
p.104-105(コマ番号53) 蟹江丈夫「タンゴ・エンハポン発展史」はアルゼンチン・タンゴに関する記事ですが、日本コロムビアのレコード「待ち侘びて」に触れられており、「このレコードの演奏者、ヴィック・マックス・ウェル・アンド・ヒズ・ダンス・オーケストラ、なるもの、実は全部、コロムビア関係の日本の楽員である。(中略)しかも作曲者も、服部良一氏ではなくハッター・アンド・マックス・ウェルとなっている。もちろん、ハッターは服部氏をもじったものであることは間違いないが、この点、終戦直後の新聞の投稿欄に、「外国の作品を盗むなんてけしからん……云々」という投書が掲載され服部氏が「あれは当時の風潮から、日本人名ではうまくないとエディター側の意向もあってあのようなかたちになった。しかし、正真正銘の私の作品です」と答えておられた。」とあります。
(8) 国立国会図書館デジタルコレクション『明日の農村』 (187) (日本共産党中央委員会 1990-06) (図書館・個人送信限定)
https://dl.ndl.go.jp/pid/1771416/1/30 (2023.11.10確認)
p.54-57(30-31) 矢沢寛「"独断と偏見"の流行歌(はやりうた)50年私史-6-メ-デ-事件と講和条約発効のころ」のp.57(コマ番号31)「星はまたたき夜ふかく……」の項にて「夜のプラットホーム」について記述されており、「ところが淡谷のり子の吹き込んだレコードが出るや、たちまち検閲にひっかかって発売禁止。作曲した服部良一は一計を案じて、「アィル・ビー・ウェイティング(待ちわびて)」とタイトルをつけ、英語の歌詞でコロムビアの洋盤として売り出した。歌は洋楽部にいた混血の青年に歌わせ、作曲もR・ハッターと、服部良一をもじったペンネームで。」とあります。
(9) 国立国会図書館デジタルコレクション『月刊IM = Journal of image & information management』 30(12)(251) (日本文書情報マネジメント協会 1991-11) (図書館・個人送信限定)
https://dl.ndl.go.jp/pid/3323871/1/22 (2023.11.10確認)
p.40(コマ番号22) ディック・ミネ「コラム・第20回」に「服部良一氏は「R・ハッター」という一見外国人が作曲したようにして、あの有名な「夜のプラットホーム」を発表した。そして、戦後しばらくは、この名でとおされた。服部さんも粋な人である。」とあります。
- 回答プロセス
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1.「Google」にて、キーワード“夜のプラットホーム”を検索。「Wikipedia」の「夜のプラットホーム」のページに関連記述あり。参考文献を確認し、資料(2)が見つかる。
2.資料(2)の記述より、「国立国会図書館デジタルコレクション」をキーワード“服部良一 Hatter”で検索。資料(5)が見つかる。
3.資料(2)の記述より、「国立国会図書館デジタルコレクション」をキーワード“服部良一 ハッター”で検索。資料(7)(8)(9)が見つかる。
4.資料(2)の記述より、「国立国会図書館デジタルコレクション」をキーワード“服部良一 I'll Be Waiting”、“服部良一 待ちわびて”で検索。有用資料見つからず。
5.「Googleブックス」をキーワード“服部良一 ハッター”で検索。資料(1)(3)(4)(6)が見つかる。
6.「Googleブックス」をキーワード“服部良一 Hatter”で検索。有用資料見つからず。
7.「Googleブックス」をキーワード“服部良一 I'll Be Waiting”、“服部良一 待ちわびて”で検索。新たな資料は見つからず。
- 事前調査事項
- NDC
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- 声楽 (767 9版)
- 参考資料
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- 当館書誌ID <0000305946> ぼくの音楽人生 -エピソードでつづる和製ジャズ・ソング史- 服部 良一/著 日本文芸社 1993.3 9784537023459 資料(1)
- 当館書誌ID <0010557035> 上海ブギウギ1945 -服部良一の冒険- 上田 賢一/著 音楽之友社 2003.7 9784276211285 資料(2)
- 当館書誌ID <0000182893> 大歌謡論 平岡 正明/著 筑摩書房 1989.8 9784480871305 資料(3)
- 当館書誌ID <0000850931> 月がとっても青いから -マイ・ラスト・ソング 3- 久世 光彦/著 文芸春秋 2001.2 9784163571300 資料(4)
- 当館書誌ID <0080296483> 潮 279〜281号 潮出版社 1982.7-9 資料(5)
- 当館書誌ID <0080302186> 新潮 81巻9〜12号 新潮社 1984.9-12 資料(6)
- 国立国会図書館デジタルコレクション『中南米音楽 = La musica iberoamericana』 (208) (中南米音楽 1971-07) (図書館・個人送信限定) https://dl.ndl.go.jp/pid/2267610/1/53 (2023.11.10確認) 資料(7)
- 国立国会図書館デジタルコレクション『明日の農村』 (187) (日本共産党中央委員会 1990-06) (図書館・個人送信限定) https://dl.ndl.go.jp/pid/1771416/1/30 (2023.11.10確認) 資料(8)
- 国立国会図書館デジタルコレクション『月刊IM = Journal of image & information management』 30(12)(251) (日本文書情報マネジメント協会 1991-11) (図書館・個人送信限定) https://dl.ndl.go.jp/pid/3323871/1/22 (2023.11.10確認) 資料(9)
- キーワード
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- 服部良一
- 夜のプラットホーム
- R.ハッター
- R.Hatter
- I'll Be Waitting
- 待ちわびて
- 待ち侘びて
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- その他
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000340770