レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2022年10月31日
- 登録日時
- 2023/01/18 15:39
- 更新日時
- 2023/04/15 12:53
- 管理番号
- 関大総図 22A-13J
- 質問
-
解決
現在までのペン習字参加人口がどのように推移してきたか知りたい。
- 回答
-
本学所蔵の資料・白書等から調査しましたが、ペン習字人口に関するデータは見つけることができませんでした。
そこで視点を変え、「ペン習字」の上位概念である「硬筆」に着目しました。
「硬筆」とはペン・鉛筆などの先のかたい筆記具の事を指し、この「硬筆」に関する技術や知識を審査する検定試験として「硬筆書写検定」があります。
検定試験というものは、趣味や生涯学習の目標のひとつとなるため、「硬筆書写検定試験」の受験者数を調べることで少なくとも、それ以上の硬筆参加人口、つまりペン習字参加人口がいると考えられます。
そこで硬筆書写検定の受験者数を調査しました。
その調査結果は以下になります。
年度 受験者数
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~1979 不明
1980(昭和55) 184878 *1
1981~1989 不明
1990(平成02) 431131 *1
1991(平成03) 411001 *2
1992~1999 不明
2000(平成12) 162531 *1
2001~2007 不明
2008(平成20) 70000(推定)*3
2009(平成21) 70000(推定)*3
2010(平成22) 70738 *1
2011(平成23) 70000(推定)*3
2012(平成24) 70000(推定)*3
2013(平成25) 70000(推定)*3
2014(平成26) 70000(推定)*3
2015(平成27) 69274 *4
2016(平成28) 66749 *6
2017(平成29) 63301(推定)*5
2018(平成30) 63300(推定)*5
2019(令和元) 57731 *6
2020(令和02) 43616 *1
2021(令和03) 49738 *6
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*注釈については回答プロセス参照
1960~1980年度のデータは残念ながら得られませんでしたが、1981年3月19日読売新聞朝刊8面によると、「日本書写技能検定協会が実施している技能検定は(中略)昨年までに1~4級合わせて262万人が受験している」とあり、そこから「硬筆書写検定」が1964年より試験制度を設けてから1981年までの17年間に平均で年間15.4万人が受験したと推測されます。
また受験者数以外の情報としまして
1968年には「硬筆書写技能検定」が「文部省認定」の許可を取得した事や、1973年「がくぶん」が「現代ボールペン習字講座」開講するといった影響により、ペン習字人口が増加したと推測されます。
1970年代後半~1990年代にかけて新聞紙面上に「ペン字」「ペン習字講座」「通信講座」「ボールペン字講座」といった広告が見られるようになり、大衆誌などでは、「大人向けペン習字(特に20~40代のサラリーマンやOL)がブーム」「ペン習字 書字個性別練習法(個性ペン)が大人向けに人気がある」といった記事により「ペン習字」人口の増加にも拍車がかかったと考えられます。
2000~2007年度のデータに関しても得られませんでしたが、関連する情報として、2005年に「硬筆書写検定」を含めた社会教育関連技能検定の認定制度が廃止されています。しかしながら2008年には検定試験の認定制度が復活しているため、恐らく2000年代前半は、受験者数が大幅に減少したと考えられます。
以上より、ペン習字の参加人口の推移を硬筆書写検定の受験者数等から推測しますと、1960年代から1980年代にかけて段階的に増え、1990年前後でピークに達し、2000年代にはピークの1/3、2010年代には1/6程度に落ち込み、以降は減少の一途をたどると推測されます。
なお、硬筆書写技能検定 公式テキスト(一般財団法人日本書写技能検定協会)の目次を確認すると、「硬筆書写技能検定の過去の受験状況」が掲載されているようですので、一度こちらを見てみるのも良いかと思います。
≪参考文献≫
・一般財団法人 日本書写技能検定協会
https://www.nihon-shosha.or.jp/index.html 【最終アクセス日:2023/1/19】
・平成27年度事業報告 - 日本書写技能検定協会
https://www.nihon-shosha.or.jp/pdf/h27-jigyohoukoku.pdf 【最終アクセス日:2023/1/19】
・令和2年度事業報告 - 日本書写技能検定協会
https://www.nihon-shosha.or.jp/pdf/r2-jigyohoukoku.pdf 【最終アクセス日:2023/1/19】
・日本書写技能検定協会「協会の沿革」
「平成20年3月10日現在 設立44年を経過し、これまでの総受験者数は1068万名を数え、合格者数は654万名に達している。」※2023/1/19現在リンク切れ
WaybackMachine(https://archive.org/web/)にて復元可能なことを確認。
・日本書写技能検定協会「協会の沿革」
「平成21年3月10日現在 設立45年を経過し、これまでの総受験者数は1078万名を数え、合格者数は661万名に達している。」※2023/1/19現在リンク切れ
WaybackMachineにて復元可能なことを確認。
・日本書写技能検定協会「協会の沿革」
「平成22年3月10日現在 設立46年を経過し、これまでの総受験者数は1088万名を数え、合格者数は668万名に達している。」※2023/1/19現在リンク切れ
WaybackMachineにて復元可能なことを確認。
・日本書写技能検定協会「協会の沿革」
「平成24年3月10日現在 設立48年を経過し、これまでの総受験者数は1106万名を数え、合格者数は681万名に達している。※2023/1/19現在リンク切れ
WaybackMachineにて復元可能なことを確認。
・日本書写技能検定協会「協会の沿革」
「平成25年3月10日現在 設立49年を経過し、これまでの総受験者数は1116万名を数え、合格者数は688万名に達している。※2023/1/19現在リンク切れ
WaybackMachineにて復元可能なことを確認。
・日本書写技能検定協会「協会の沿革」
「平成26年3月10日現在 設立50年を経過し、これまでの総受験者数は1126万名を数え、合格者数は695万名に達している。※2023/1/19現在リンク切れ
WaybackMachineにて復元可能なことを確認。
・日本書写技能検定協会「協会の沿革」
「平成27年3月10日現在 設立51年を経過し、これまでの総受験者数は1136万名を数え、合格者数は701万名に達している。※2023/1/19現在リンク切れ
WaybackMachineにて復元可能なことを確認。
・日本書写技能検定協会「硬筆・毛筆の書写技能検定について」
平成28年度 受験者状況表※2023/1/19現在リンク切れ
WaybackMachineにて復元可能なことを確認。
・日本書写技能検定協会「硬筆・毛筆の書写技能検定について」
令和元年度 受験者状況表※2023/1/19現在リンク切れ
WaybackMachineにて復元可能なことを確認。
・日本書写技能検定協会「硬筆・毛筆の書写技能検定について」
令和3年度 受験者状況表
https://www.nihon-shosha.or.jp/about.html【最終アクセス日:2023/1/19】
・「朝日新聞」2008.1.17夕刊, p9
「日本ペン習字研究会講座を開く『がくぶん総合教育センター』の会員数が1980年には10万人に上った。」
・「AERA」6(49), 1993/11/22, p37
「日本ペン習字研究会の場合、ここ五年間の受講者は、毎年四万~五万人」「書写技能の受験者も年間のべ40万人を超え、十年前と比較しほぼ倍増した。」
・「週刊朝日」1984.9.14, 「最新ペン字練習法拝見」
・「週刊朝日」1985.01.18, p55-57 「大人向けペン習字のモテモテぶり」
・「産経新聞」1992.9.26, 朝刊東京版・生活面
「硬筆書写検定 志願者(平成3年度)」
・産経新聞2001.9.4朝刊東京版・第3社会面
「当時の文部科学省は、社会教育関連の技能検定について、同省が“お墨付き”を与える認定制度を、平成十七年度をめどに順次廃止していく方針を決めた。」
・産経新聞2008.1.20朝刊東京版・総合3面
「文部科学省は19日、実用英語技能検定(英検)など民間団体が行っている検定試験について、公益法人による第三者評価機関を設置して認定制を復活させる方針を固めた」
- 回答プロセス
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*1:日本書写技能検定協会に調査を依頼
*2:産経新聞 1992.9.26, 朝刊東京版・生活面より
*3:日本書写技能検定協会「協会の沿革」より、平成20(2008)年度から平成26(2014)年度にかけては、
硬筆書写技能検定、毛筆書写技能検定合わせた総受験者は毎年10万人前後を推移。
そこで平成25、平成26年の2検定において硬筆書写技能検定の総受験者数に対する受験者の割合が7割強である事から、
2008~2014年度の受験者数は恐らく7万人前後だったと推測。
*4:日本書写技能検定協会 平成27年事業報告より
*5:2016,2018年度の硬筆受験者数累計差から平均を算出
*6:日本書写技能検定協会 受験者状況表より
- 事前調査事項
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「レジャー白書」には書道人口の調査統計はあるが、ペン習字人口の調査統計は見つからなかったとの事。
「社会生活基本調査」の項目には「書道」はあるが、「ペン習字」はなかったとの事。
- NDC
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- 日本 (351)
- 書.書道 (728)
- 参考資料
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- (絶滅危惧趣味:その三十九)ボールペン習字 あこがれの美子ちゃんが復活. 朝日新聞 2008年1月17日 夕刊 p. 9
- ワープロ時代にペン字がウケる 「書く文化」は不滅です. AERA 6(49) p. 36-38, ISSN 09148833
- 最新ペン字練習法拝見. 週刊朝日 1984年9月14日
- 大人向けペン習字のモテモテぶり. 週刊朝日 1985年1月18日 p. 55-57
- 【すぺしゃりすと】硬筆書写検定. 産経新聞 1992年9月26日 朝刊 生活面
- 文科省 17年度めど技能検定認定を廃止 英検など21種類. 産経新聞 2001年9月4日 東京夕刊 社会面
- 検定試験、認定復活へ 産業界 お墨付き、やはり必要 文科省. 産経新聞 2008年1月20日 東京朝刊 総合3面
- キーワード
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- ペン習字
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 学部生
- 登録番号
- 1000327566