レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2020年08年04日
- 登録日時
- 2021/08/09 13:57
- 更新日時
- 2021/11/20 12:42
- 管理番号
- 9000032211
- 質問
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解決
身延線南甲府駅の歴史などに関する文献を探している。ネットなどの情報では、1928(昭和3)年に建てられた旧「富士身延鉄道」の本社となっている。このレトロモダンな駅舎が、どのようにして建てられ、使われ、今に至るのか(取り壊されず「保存」)、そのあたりのいきさつを知りたい。
- 回答
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(1)どのようにして建てられたか
当時の名称は甲府南口駅。設計者・施工者は不明。『甲府市史』別編2には、「地下道を通ってプラットホームへ抜ける工法」「鉄筋コンクリート造、二階建、昭和3年竣工」とある。この地下道はいまはない。
『山梨の近代化遺産』鉄筋コンクリート2階建て、延べ床面積997.2平方メートル。本社と駅を兼ねていた。
『都市の記憶』2によれば、1923(大正12)年の関東大震災を経て、鉄筋コンクリート造りのはしりだった。ファサードはアール・デコ調、「軒飾りや外壁のテラコッタ装飾といった繊細なデザイン感覚」もあった。
(2)どのように使われたか
『甲府市史』別編2には、「甲府市の南部工業地帯の生業基盤をささえてきた」「貨物の輸送にあたってきた」「1日の乗降客は約800人」とある。
『山梨の近代化遺産』によれば、「長年静岡方面からの貨物の集積地として機能」していたが2001(平成13)年に貨物の取り扱いに幕。
「ザやまなし」1994年5月号によれば、一日の乗降客数は約1600人。一般客のほか、宝飾会社や市立甲府病院関係の利用客が多い。
『都市の記憶』2によれば、1926(大正15)年竣工して富士身延鉄道本社が置かれ、駅舎は1928(昭和3)年に完成。
(3)どのように保存されたか
『山梨の鉄道』によれば、昭和7年から国有化運動が盛んになり、1938(昭和13)年~国が借り上げ、1941(昭和16)年に国鉄に買収された。買収された後の名称は身延鉄道。南甲府駅地下道は開通当時からある。かつては貨物ヤードがあったが現在は電留線や特急の車内清掃場所、民間の葬儀場などになっている。駅舎はかつての富士身延鉄道本社屋で1928(昭和3)年3月30日開業。乗車人員は580人程度。
「ザやまなし」1994年5月号によれば、地下道は駅の所有物であったがいつのまにか市道になったとある。
(ここでいう「南甲府駅地下道」、「市道になった」地下道とは駅の東側と西側をつなぐ自由通路の地下道のこと。)
『写真集甲府物語』には開業当時のホームと昭和30年代の駅舎の写真。「開業以来(変わっていない)」とある。
『山梨の近代化遺産』によると「外観はほぼ当時のまま残る」「現時までの改修で駅内部では建築当時の面影を残すものは少なくなっている」とある。1987(昭和62)年の分割民営化によりJR東海の所管。
『都市の記憶』2によれば、最近では駅舎を核として町おこしの動きが具体化してきたとある。
詳しくは参考資料をご覧ください。
- 回答プロセス
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1.『甲府市史』別編4索引→通史編3:甲府丸滝線(のち富士身延鉄道、現在JR身延線)が昭和3年に開通して南甲府駅が開設)、別編2(項目有)に記述。
2.甲府市の写真集を見る。
『目で見る甲府の100年』『甲府市の昭和』『甲府市昭和大全』には写真なし。
『写真集 甲府物語』p.44に開業当初のホームと昭和30年代の駅舎あり。
3.地域資料の鉄道関連資料を見る。
『中央線甲府駅東海道線富士駅間電鉄全通記念』→写真あり。当時は甲府南口駅か。
『山梨の鉄道』p.149,155-158に駅の写真、説明あり。1の『甲府市史』にあった甲府丸滝線とは、甲府から身延町丸滝までの路線の事とわかる(p.148)。
『富士身延鉄道』『富士身延鉄道沿線名所図絵』→甲府南口駅。駅周辺の名所として甲府市、住吉神社、遊亀公園、一蓮寺等が紹介されている。
4.地域資料の建築関連資料を見る。
『山梨県の近代和風建築』『山梨の建築』『山梨県の近代化遺産』に記述なし。
『山梨の近代化遺産』p.28,29に南甲府駅あり。
5.国会図書館オンライン「南甲府駅」で検索→該当資料で所蔵しているものを見る。
6.自館レファレンスデータベース「身延線」で検索。参考資料を見る。その他、以前レファレンスで使用した国鉄の記念誌を見る。『日本国有鉄道百年史』6巻p.532富士身延鉄道について説明があるが駅舎については他の巻にもなし。
7.山梨日日新聞データベースで検索。『山梨の近代化遺産』と同様の記述。
- 事前調査事項
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Wikipediaなどネット情報は確認済み。
- NDC
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- 鉄道運輸 (686 10版)
- 西洋の建築.その他の様式の建築 (523 10版)
- 参考資料
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甲府市市史編さん委員会/編 , 甲府市市史編さん委員会. 甲府市史 別編 2. 甲府市, 1988.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005679152-00 (p.142,143) -
「写真集甲府物語」編集委員会/企画・編集 , 甲府市. 甲府物語 : 市制100周年記念 写真集. 甲府市, 1990.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005678112-00 (p.44) - 山梨日日新聞社, 1994.05.01. ザやまなし 1994年5月号 (p.p.10,11)
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鈴木‖博之 , 増田‖彰久 , 小沢‖英明 , 吉田‖茂 , オフィスビル総合研究所. 都市の記憶 2. 白揚社, 2005.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005884334-00 , ISBN 4826901224 (p.192,193) -
山梨日日新聞社 編集 , 山梨日日新聞社. 山梨の近代化遺産. 山梨日日新聞社, 2017.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I028008056-00 , ISBN 9784897103150 (p.28,29) -
富士身延鉄道株式会社/編 , 富士身延鉄道株式会社. 中央線甲府駅東海道線富士駅間電鉄全通記念. 富士身延鉄道株式会社, 1928.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005552523-00 (p.28,29) -
伊藤隆之 撮影 , 米山勇 監修 , 伊藤, 隆之 , 米山, 勇, 1965-. 日本(にっぽん)近代建築大全 東日本篇. 講談社, 2010.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000010880990-00 , ISBN 9784062160278 (p.248) -
川島令三 著 , 川島, 令三, 1950-. 山梨の鉄道. 山梨日日新聞社, 2003. (山日ライブラリー)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000004308112-00 , ISBN 4897107156 (p.149,155-158) -
吉田 初三郎/編 , 吉田‖初三郎. 富士身延鉄道沿線名所図絵. 富士身延鉄道株式会社, 1928.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I043767686-00 (1冊) -
甲府市市史編さん委員会/編 , 甲府市市史編さん委員会. 甲府市史 通史編 第3巻. 甲府市役所, 1990.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005678083-00 (p.502)
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甲府市市史編さん委員会/編 , 甲府市市史編さん委員会. 甲府市史 別編 2. 甲府市, 1988.
- キーワード
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- 鉄道
- 駅舎
- 南甲府駅
- 身延線
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000302975