レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年4月5日
- 登録日時
- 2023/03/08 09:27
- 更新日時
- 2023/05/16 13:20
- 管理番号
- 中央0138-230308
- 質問
-
解決
墨匠である臣 汪承霈恭(おうしょうれい)とはどのような人物か、またその作品について知りたい。
臣(小文字表記) 汪承霈恭と表記されている。臣にどういう意味があるのかはわからない。
- 回答
-
〈汪承霈はどのような人物か〉
②③⑤⑥より、汪承霈は「おうしょうはい」と読む。
①③⑤⑥より、生年不明、没年は1805年。汪由敦(おうゆとん)の子。
乾隆期に内廷画家として花鳥画等を描いていた。
字は春農、号は時斎、浙江銭塘(現在の浙江省杭州市)の人。
工部左侍郎、兵部尚書などを歴任した人物で、詩詞をよくし、書画にも優れていた。
筆の代わりに指を用いて描く絵画である指墨に長けていた。
調査の結果、「墨匠である」という情報は見つからなかった。
〈作品を調べる〉
①④⑦より、作品としては「画万年花甲」や「百耋圖」、「写生手巻」等があり、
以下のURLからインターネット上で画像が確認できる。
「画万年花甲」https://theme.npm.edu.tw/exh107/MyriadPlants/jp/page-3.html
「百耋圖」https://dl.ndl.go.jp/pid/1906637/1/4(国立国会図書館デジタルコレクション)
「写生手巻」(部分)https://dl.ndl.go.jp/pid/1236624/1/166(国立国会図書館デジタルコレクション)
また、回答プロセス⑧より、「故宮典蔵資料検索」で29点の汪承霈の作品を見ることができる。
また、以下の書籍で作品を見ることができる。
⑨『中國繪畫總合圖録 [正編]第2巻』(東京大学出版会 1982)
PⅡ-179中央 図「E15-062汪承霈 洞天八仙圖」画像掲載あり(白黒)。
⑩『中國繪畫總合圖録 [正編]第4巻』(東京大学出版会 1983)
PⅣ-281右下 図「JP14-211-7汪承霈 牡丹圖扇面」画像掲載あり(白黒)。
〈「臣」について調べる〉
⑪『中国宮廷美術史』より、乾隆期に宮廷画家は絵画作品の上に「臣」という字を落款していた。
- 回答プロセス
-
1.利用者のメモ「臣 汪承霈恭」の、どの部分を「おうしょうれい」と読むのかを調べる
googleで検索
キーワード「臣 汪承霈恭」
故宮博物院https://digitalarchive.npm.gov.tw/Painting/Content?pid=9367&Dept=P
「清汪承霈寫生 冊 百合」という絵(画像掲載あり)の作者の欄に「汪承霈」と記載あり。
キーワード「汪承霈」
①故宮博物院の過去の展示「瓶花と盆景画 特別展」
https://theme.npm.edu.tw/exh107/MyriadPlants/jp/page-3.html
「画万年花甲」という絵(画像掲載あり)の作者として紹介文あり。
以下、紹介文より抜粋。
「汪承霈(?-1805)、字は春農、号は時斎、浙江銭塘(現在の浙江省杭州市)の人。」
「乾隆12年(1747)に挙人に及第。工部左侍郎、兵部尚書などを歴任」
「詩詞をよくし、書画にも優れていた。」
紹介文には「墨匠」「墨を作った」等の記載はない。
補足)利用者のメモ「墨匠」について調べる
OPACキーワード「墨匠」で検索
『日本の手仕事 [1]』(遠藤ケイ/絵と文 汐文社 2017)5012146782
P28「墨をつくる職人を、敬意をこめて墨匠さんと呼びます」とある。
2.「汪承霈」という人物について、自館所蔵資料に記述がないか探す。
2-1.事典で調べる
「霈」の読み方を調べる
②『漢字源』(藤堂明保/編 学研教育出版 2011)5030314727
P1731「霈」ハイ と記載あり。
上記の読み方より、「汪承霈」は「おうしょうれい」ではなく「おうしょうはい」と読むことが
わかる。
「汪承霈(おうしょうはい)」を事典で探す
以下記載なし
『東洋人名・著者名典拠録索引』(日外アソシエーツ 2010)4030006599
『東洋人物レファレンス事典 文芸篇』(日外アソシエーツ株式会社/編
日外アソシエーツ 2013)4030009072
『中国人名事典』(日外アソシエーツ株式会社/編 日外アソシエーツ 1993)5030126253
2-2.OPACキーワード「故宮博物院」で検索
以下記載なし
『故宮博物院 5』(日本放送出版協会/編 日本放送出版協会 1999)5003573630
『台北故宮博物院』(平凡社 2007)5004819891
2-3.OPACキーワード「中国 絵画」で検索
以下記載なし
『花鳥・山水画を読み解く』(宮崎法子/著 角川書店 2003)5004222781
『中国絵画入門』(宇佐美文理/著 岩波書店 2014)5005482640
『中国絵画の流れ』(任道斌/著 露満堂 1997)5003355251
3.「汪承霈」という人物について、データベースで探す。
3-1.国立国会図書館デジタルコレクション
キーワード「汪承霈」で検索
③『乾隆皇帝』(杉村勇造/著 二玄社 1961)
136コマ P180 12行目から「乾隆内廷画人として知られている者は七十余人あるが…」
「花鳥画 汪承霈はい(安徽休寧人·花鳥人物を兼る)」と記述あり。
https://dl.ndl.go.jp/pid/2989449/1/136
④『芸術資料第四期 第九册』(金井紫雲/編 芸艸堂 昭和15)
3コマに汪承霈筆とあり4コマに 百耋圖(原色版)がみられる。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1906637/1/3
https://dl.ndl.go.jp/pid/1906637/1/4
『支那名画宝鑒』(原田尾山/編 大塚巧芸社 昭11)
492コマ P944 百耋圖(白黒版)「山水・花卉・人物を善くし、兼ねて指頭画を工にし、
また詩古文詞に長じた。著に時晴齋集がある」とある。
https://dl.ndl.go.jp/pid/8312283/1/492
補足)「指頭画」(しとうが)とは中国絵画において筆の代わりに、指を用いてかく絵画。
指墨ともいう。
(『世界大百科事典 12 改訂新版 シ-シヤ』(平凡社 2009)5030328917の
P415より)
『虫と芸術』(金井紫雲/著 芸艸堂 昭和9)
43コマ P5 10行目「蝶を書いて驚くべき努力を見せた作に、汪承霈の『百耋圖卷』…」
12行目から汪承霈についての記述あり。
https://dl.ndl.go.jp/pid/1236410/1/44
『世界陶磁全集 第12』(座右宝刊行会/編 河出書房 1956)
214コマ P204 上段中央あたり 名書家の中に「汪承霈」名のがある。
https://dl.ndl.go.jp/pid/8799428/1/214
⑤『支那人名辞書 下』(難波常雄 等/編 啓文社 明36)
286コマ P1551 上段左 「ワウショウハイ 汪承霈 (清)由敦の子。
字は春農。号は時斎。官、兵部尚書に至る。」と記載あり。
https://dl.ndl.go.jp/pid/779712/1/286
⑥『支那書画名家詳伝 11』(近藤元粋/編 青木嵩山堂 明42-大2)
87コマ P61 上段 「汪承霈 ワウショウハイ 字ハ受時。時斎ト号ス。休寧ノ人。乾隆中。
孝廉ヲ以テ家ヲ起ス。仕ヘ兵部尚書ニ至ル。山水花卉人物ヲ工ニシ。兼テ指墨ニ長シ。
詩古文詞ヲ善クス。」と記載あり。
https://dl.ndl.go.jp/pid/850684/1/87
⑦『宋元明清名画大観 下巻』(日華古今絵画展覧会/編 大塚巧芸社 昭和6)
166コマ P286 「汪承霈 写生手巻」(部分。白黒版)
https://dl.ndl.go.jp/pid/1236624/1/166
3-2.故宮収蔵品データベース
「「品名検索」欄に「汪承霈」を入力し、検索。
29件ヒット。汪承霈の作品を画像で見ることができる。
⑧ https://digitalarchive.npm.gov.tw/List/Index?mode1=%E5%93%81%E5%90%8D%E6%AA%A2%E7%B4%A2&Page=0&PageSize=10&CurrentPage=0&IsQueryTotal=False&IsQueryBronze=False&IsQueryCeramics=False&IsQueryJade=False&IsQueryEnamel=False&IsQuerySculpture=False&IsQueryLacquerware=False&IsQueryCoin=False&IsQueryStationery=False&IsQueryMiscellaneous=False&IsQueryFabric=False&IsQuerySilkEmbroidery=False&IsQueryPainting=True&IsQueryBook=False&IsQueryPost=False&IsQueryRubbing=False&IsQueryFan=False&IsQueryRareBook=False&IsQueryDocument=False&IsQueryOther=False&Image100=False&Image600=False&flag=0&UDESC=False&UASC=True&DDESC=False&DASC=False&TDESC=False&TASC=False&ADESC=False&AASC=False
4.「汪承霈」という人物について、県内所蔵資料に記述が無いか探す。
4-1.googlebooksにてキーワード「汪承霈 中国」で検索。
『中國繪畫總合圖録 [正編]第5巻』(東京大学出版会 1983)
P70索引 「汪承霈」記載あり。図の番号は「E15-062」と「JP14-211-7」記載あり。
⑨『中國繪畫總合圖録 [正編]第2巻』(東京大学出版会 1982)
上記の索引より、図「E15-062」をさがす。
PⅡ-356下から6行目に「E15-062 汪承霈 洞天八仙圖」記載あり、
PⅡ-179中央あたり 図「E15-062」画像掲載あり(白黒)。
⑩『中國繪畫總合圖録 [正編]第4巻』(東京大学出版会 1983)
上記の索引より、図「JP14-211-7」をさがす。
PⅣ-615下から5行目に「JP14-211-7 汪承霈 牡丹圖扇面」記載あり、
PⅣ-2819右下あたり 図「JP14-211-7」画像掲載あり(白黒)。
4-2.③『乾隆皇帝』(杉村勇造/著 二玄社 1961)P180の「乾隆内廷画人」という記述のうち、
「内廷」の意味を調べる
『広辞苑 第7版[普通版]』(新村出/編 岩波書店 2018)5030560949
P2150「宮廷の内部」
上記を受けて、googleでキーワード「中国 宮廷画家 本」で検索。
⑪『中国宮廷美術史』(王凱/著 大学教育出版 2015)
P165最後から6行目「雍正の時期…宮廷画家は「画画人」と称された。乾隆の時期…依然として
「画画人」と呼んでいた。この時の絵画作品の上に「臣」という字を落款している。」と記述あり。
『清王朝の宮廷絵画』(王凱/著 大学教育出版 2016)記載なし。
[インターネット最終確認日は全て2023/04/05]
- 事前調査事項
- NDC
-
- 東洋画 (722)
- 参考資料
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-
鈴木/敬. 中國繪畫總合圖録 [正編]第2巻. 東京大学出版会, 1982.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I053791770-00 -
鈴木/敬. 中國繪畫總合圖録 [正編]第4巻. 東京大学出版会, 1983.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I053812372-00 -
王凱 著 , 王, 凱. 中国宮廷美術史 = Chinese Imperial Court history of art. 大学教育出版, 2015.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I026322643-00 , ISBN 9784864293303 -
藤堂明保, 松本昭, 竹田晃, 加納喜光 編 , 藤堂, 明保, 1915-1985 , 松本, 昭 , 竹田, 晃, 1930-. 漢字源 : 二色刷 改訂第5版. 学研教育出版, 2011.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000011069612-00 , ISBN 9784053031013 (当館資料番号 5030314727)
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鈴木/敬. 中國繪畫總合圖録 [正編]第2巻. 東京大学出版会, 1982.
- キーワード
-
- 汪承霈
- 故宮博物院
- 中国
- 宮廷画家
- 絵画
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 人物
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000329949