レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年3月28日
- 登録日時
- 2021/04/25 14:29
- 更新日時
- 2021/10/26 15:12
- 管理番号
- 武蔵浦和-1-00125
- 質問
-
未解決
嘉永4年(1851年)にインドネシアのバタビアから長崎に入港したオランダ商船の大きさが知りたい。
埼玉県立熊谷図書館所蔵の『和蘭風説書』に、「長さ 貮拾三間六夕 幅 五間貮夕」と記載されている。
これは、現在の単位(メートル法)ではどのくらいの大きさなのかを知りたい。
この船の形も知りたい。
- 回答
-
質問の「夕」は、容積を表す単位であることが分かった。
容積を表す「夕」は、長さや幅の単位になり得るのか調べがつかず、
「夕」は「尺」と同じとみなし、次のとおり計算したものを利用者に説明した。
1尺=30.303cm=0.303m
1間=6尺となるらしいので、これで質問の長さを計算
長さ 23間6尺は、
23間×6尺=138尺
138尺+6尺=144尺
144尺×0.303m≒43m63cm
幅 5間2尺は、
5間×6尺=30尺
30尺+2尺=32尺
32尺×0.303m≒9m69cm
船の形状は調べがつかず。
- 回答プロセス
-
・まず、インターネットで簡単に検索してみる。
1間=6尺なので 23間=41.81818182 m
5間= 9.09090909 m と思うが
黒船来航が嘉永6年なので、帆船ではないかと思うが蒸気船の可能性もあると思う。
「夕」は尺貫法の「勺」と同義。勺は容積を表す単位。1勺≒18.039ml
『オランダ風説書と近世日本』松方冬子/著 東京大学出版会 2007年
質問に関する船の記述はなし。
・館内の書架を見てみる。江戸時代、船に関する書架など。
K210『歴史の流れがわかる時代別新・日本の歴史7』(学研教育出版 2010)など、
児童書にも出島での交易を扱った部分に商船の絵は出てくる。
ただし、それが嘉永4年に来航したものと同一かどうかは分からない。
・『和蘭風説書』とは何か調べる。
→ジャパンナレッジではわからなかったので、CiNiiで“和蘭風説書”を検索
北野耕平「嘉永三年和蘭風説書-資料紹介-」『海事資料館年報』7,p.8-12,1979
p.8 江戸時代に長崎港内にあった出島の和蘭商館に○○○(←漢字。カルバ=バタビア,現インドネシアのジャカルタ)から
到着した蘭船乗組の新商館長が日本側に提供した海外情報を『和蘭風説書』と称した とあり。
・図書館業務システムで検索 船の歴史に関する本を見てみる。
“オランダ商船”→× 小説1件のみヒット
“商船”&分類21*→ 14件ヒット
“550.2”分類検索
550.21『異様の船』安達裕之/著 平凡社 1995
質問に関する記載なし。
550.21『船舶百年史 前篇』上野喜一郎/編 成山堂書店 2005
黒船来航(1853(嘉永6)年)以降の話。日本の船の話。
550.21『船舶百年史 後篇』上野喜一郎/編 成山堂書店 2005
時代が質問より後の内容。
550.2『船の歴史事典』アティリオ・クカーリ/共著 原書房 1985
巻末の船名索引では、カタリーナ号の名前なし。
全体に目を通しても、質問に関する船の記載はなし。
・原文を確認したいので、埼玉県立熊谷図書館から質問の本を借用
210.5『和蘭風説書集成 上巻』吉川弘文館 1977
質問に関する記載はなく、凡例や解説のところにも船に関する記載はないので返却
210.5『和蘭風説書集成 下巻』吉川弘文館 1977
p.236~237に質問の箇所あり。
p.226 第255号 弘化4未年(1847年)風説書の阿蘭陀船についてのところに次の記述あり。
長さ 貳拾三間五合三□(□は木へんに夕)
幅 六間貳合七□…
とあり、□に*印が付いていて、
上の注に「*長圖本(p.4によると『縣立長崎圖書館所藏本』のこと)・和蘭風説書「□」「夕」に作る。以下同じ」
と書かれている。
これ以降の文書は「夕」にしたようだ。
・漢和辞典で木へんに夕の字を調べてみる。
R813.2『大漢和辞典 巻6 修訂第2版』諸橋轍次/著 大修館書店 1989年
p.168 木へんに夕の字
杓(6-14466)の譌字(かじ。異字)
p.146 杓(14466)
①ひしゃくの柄
②星の名。
③すゑ。末
④ひきあげる
⑤うつ
①まと
②しるし
①ひしゃく
②くむ
③ひく
④まる木ばし
長さや単位のことは書いていない。
・『国史大辞典』で「しゃく」を見てみる
R210.03『国史大辞典 7』国史大辞典編集委員会/編 吉川弘文館 1986年
p.206 しゃく
「勺」「尺」「笏」「爵」があり。「勺」と「尺」が単位の説明項目となっている。
「勺」だと容積、土地面積の単位
「尺」だと長さの単位
・武蔵浦和の550.2の書架を見てみる
×550.2『図説船の歴史』庄司邦昭/著 河出書房新社 2010.7
×550.2『図説世界史を変えた50の船』イアン・グラハム/著 原書房 2016.2
×550.2『船の歴史文化図鑑』ブライアン・レイヴァリ/著 悠書館 2007.9 オランダ船は載っていない
・船の歴史に関する本を見ていくのは一旦やめて、単位の本で「タ」を調べてみる
・ジャパンナレッジで検索
「タ」→質問に合いそうなものはヒットせず。
「しゃく」→「勺・タ」(日本国語大辞典)
容積の単位、一升の百分の一、一合の十分の一(約0.018リットル)。
面積の単位、一歩(または一坪)の百分の一(約0.033平方メートル)。
・単位に関する本を見てみる
×R609.03『図解単位の歴史辞典』小泉袈裟勝/編著 柏書房 1990.11
p.118 しゃく【勺】
漢以後用いられる体積の単位、合の10分の1。
ほかに「しゃく」は「尺」、「隻」があるが、「タ」のことは記載なし。
×R609.03『丸善単位の辞典』二村隆夫/監修 丸善 2002.3
p.156 「尺」
長さ。1尺=10/33m。
「勺」
面積。歩(坪)の100分の1。
「勺」
体積。1勺=0.01升=0.1合≒18.039ml
「勺」
長さ。登山の路程で合の10分の1.→合
p.121 「合」
面積と体積の単位の項目しかない。
×609『単位のキホンがわかる本』長島秀樹/監修 成美堂出版 2019.12
p.19 「日本で使われていた長さの単位」表
「里」「町」「丈」「間」「尺」「寸」「分」だけ載っている。
p.99 「日本の面積の表し方」表
「町」「反」「畝」「坪(歩)」だけ載っている。
p.104 「日本の体積の表し方」表
「石」「斗」「升」「合」「勺」だけ載っている。
・船の長さを調べたいのに、「杓」だと容積になってしまう。
そもそも江戸時代に船の長さはどう表現されていたのかgoogle検索してみる
“船の長さ&単位&江戸時代”
→レファ協事例(島根県立図書館)がヒット
「江戸時代に海上の距離を測るために用いられていた単位について調べたい。
現代は「海里」が使われているが、江戸時代も使われていたかどうか、
使われていれば現代と同じ長さかどうか知りたい。」(管理番号:島根参2014-09-002)
609『単位のいま・むかし 続』小泉袈裟勝/著 日本規格協会 1992.9
p.99「江戸時代の単位」で、江戸時代の長さの単位「尺」は0.303mとあり。
よって、「杓」は「尺」と同じと考えてみる。
上のほうで見てきた単位の事典より
1尺=30.303cm=0.303m
1間=6尺 となるらしいので、これで質問の長さを計算
→長さ 23間6尺とすると
23間×6尺=138尺
138尺+6尺=144尺
144尺×0.303m≒43m63cm
幅 5間2尺とすると
5間×6尺=30尺
30尺+2尺=32尺
32尺×0.303m≒9m69cm
- 事前調査事項
- NDC
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- 日本史 (210 10版)
- 海洋工学.船舶工学 (550 10版)
- 度量衡.計量法 (609 10版)
- 参考資料
- キーワード
-
- 度量衡
- 江戸時代
- 船舶工学
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000297555