レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2013年11月12日
- 登録日時
- 2013/11/17 17:57
- 更新日時
- 2020/06/09 10:50
- 管理番号
- 13-08
- 質問
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解決
デラウェア州法、ドイツの会社法で第三者割当増資に関連する部分を見たい。
- 回答
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回答プロセスであげた論文類の他、以下を紹介した。
・ニューヨーク証券取引所上場規則312.03(c)(d)
・ドイツ株式法182条以下
・ヴェルンハルト・メーシェル著;小川浩三訳『ドイツ株式法』桐蔭横浜大学ドイツ法講義シリーズ 2(信山社 2011年)
・高橋英治著『ドイツ会社法概説』(有斐閣 2012年)
- 回答プロセス
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■ インタビュー
利用者によれば、神野雅行「第三者割当増資について」(デトロイトトーマツ ファイナンシャルアドバイザリー(DTFA)メールマガジン 2012年8月29日号)に「他国と比較しても日本では企業にとって比較的楽に第三者割当増資を実施することができると言われています」とあり、実際に日本と海外でどのように規定が異なるのか比較するため、関連する法令を見たいとのこと。日本では会社法に規定がある。
なお、上記の神野雅行「第三者割当増資について」によれば、第三者割当増資とは「会社の資金調達方法の一つで、特定の第三者に新株を引き受ける権利を与えて行う増資のことであり、会社法上の公開会社では、通常、取締役会の決議にて機動的に資金調達を行うことが出来」るとある。
■ 第三者割当増資についての基本情報
1. 契約データベースJapanKnowledgeLibで「第三者割当増資」を検索
デジタル大辞泉に
「株主であるかを問わず、特定の第三者に新株引受権を与える第三者割当によって増資を行うこと。
この増資によって会社の自己資本を充実させ、財務内容を健全化することができる」とある。
このうち「新株引受権」を同じくJapanKnowledge+で検索、
法律用語辞典(第4版)に「会社が新株を発行する場合にその株式を優先的に引き受ける権利(以下略)」
とあり、第三者割当増資とは新株引受権に関わる用語と思われる。
2. CiNii Articlesで「第三者割当」を検索
岡本智英子
「上場会社における第三者割当増資を巡る問題:会社法制の見直しに関する中間試案・要綱案(第1次案)を中心に」
『ビジネス&アカウンティングレビュー』10号 25-42(2012年)を確認。
p.26 「海外政府から、日本企業における第三者割当増資の不透明さなどの指摘を受けた」との記述があり、
注で岩原紳作「総論―会社法制見直しの経緯と意義」『ジュリスト』1439号 12-20(2012年)をあげている。
3. 2より、当館所蔵の『ジュリスト』1439号の岩原論文を確認
p.16
「ドイツ等のEU諸国では(中略)新株発行には原則として株主総会の決議が必要とされている」
「日本の現行法のモデルになったアメリカの各州会社法では、取締役会決議により新株発行ができるが、
実際には証券取引所の上場規則により、(中略)一定の場合には株主総会による承認が必要とされている」
とあり、注で1965年ドイツ株式法182条以下や、ニューヨーク証券取引所上場規則312.03(c)(d)をあげている。
■ デラウェア州会社法
4. Googleで「デラウェア会社法」を検索
ジェトロの「デラウェア州での会社設立の手続き:米国」というページで、
デラウェア州政府のページ「Online Delaware Code」の「GENERAL CORPORATION LAW(会社法)」を紹介。
こちらでデラウェア会社法を閲覧できるが、どの部分に第三者割当増資に関わる記述があるか不明。
5. CiNiiで「デラウェア 第三者割当」「デラウェア 新株引受」「デラウェア 新株発行」などのキーワードを検索
ヒットなし、もしくは当館で所蔵しておらず、ただちに内容を確認できるものなし。
6. 学術機関リポジトリデータベースJAIROで「新株発行」を検索
二上季代司「新株発行の割当規制における上場規則の役割」『彦根論叢』374号 137-150(2008年) がヒット。
p.140
「アメリカの多くの州会社法では、株主新株引受権は会社法に明定されていない。(中略)
デラウェア(中略)など、代表的なアメリカの上場企業のほとんどが登記上の本社を置いている州が含まれる」
p.146
「連邦レベルの会社法のないアメリカでは、しばしば証券取引所上場規則が、
その代替的役割を担っている場合が多く(中略)第三者割当増資や公募によって株主利益および
支配権の希薄化が生じることに対し、次のような歯止めをかけている」
としてニューヨーク証券取引所の上場規則312.03(c)(d)、NASDAQの上場規則4350(i)(1)(B)(D) をあげている。
→ 二上論文に従えば、以下のように整理できる。
・デラウェア会社法には株主新株引受権について明確に定められていない
・第三者割当増資に対しては、証券取引所上場規則で歯止めをかけている
7. 3・7より、ニューヨーク証券取引所とナスダックの上場規則を確認
NYSE Listed company manual → Webで閲覧可。
NASDAQ Stock Market Rules → Webで閲覧可だが、4350の項は削除された模様。
■ ドイツ株式法
8. 京都大学国際法政文献資料センター公開の「外国の法律・政治行政資料の調べ方・文書の入手方法」を参照
紹介されていたGesetze im WWWのページを確認、Aktiengesetz(AktG) から株式法182条以下を閲覧可。
9. OPACで「ドイツ株式法」を検索
ヴェルンハルト・メーシェル著;小川浩三訳『ドイツ株式法』(信山社 2011年)がヒット。
92-95「増資と減資」の項で新株引受や182条以下の条文について触れている。
この他、書架をブラウジングして見つけた高橋英治著『ドイツ会社法概説』(有斐閣 2012年) にも、
p.266-276 を中心に新株引受権についての記述があった。
- 事前調査事項
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神野雅行「第三者割当増資について」(デトロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー(DTFA)メールマガジン 2012年8月29日号)
https://www2.deloitte.com/content/dam/Deloitte/jp/Documents/mergers-and-acquisitions/jp-ma-term-daisanshawariate-20120828.pdf
(2020年6月9日最終確認)
- NDC
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- 社会科学 (3)
- 参考資料
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- JapanKnowledge Lib(有料契約データベース)
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岡本智英子「上場会社における第三者割当増資を巡る問題 : 会社法制の見直しに関する中間試案・要綱案(第1次案)を中心に」『ビジネス&アカウンティングレビュー』10号 25-42(2012年)
http://kgur.kwansei.ac.jp/dspace/handle/10236/9794 (2020年6月9日最終確認) - 岩原紳作「総論―会社法制見直しの経緯と意義」『ジュリスト』1439号 12-20(2012年)
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二上季代司「新株発行の割当規制における上場規則の役割」『彦根論叢』374号 137-150(2008年)
https://shiga-u.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=8031&item_no=1&page_id=13&block_id=21 (2020年6月9日最終確認) -
ニューヨーク証券取引所上場規則
NYSE Listed company manual
http://nysemanual.nyse.com/LCM/Sections/ (2020年6月9日最終確認) -
ドイツ株式法 182条以下 ※Gesetze im WWW のページで閲覧
Aktiengesetz 182
http://dejure.org/gesetze/AktG/182.html (2020年6月9日最終確認) - ヴェルンハルト・メーシェル著;小川浩三訳『ドイツ株式法』桐蔭横浜大学ドイツ法講義シリーズ 2(信山社 2011年) , ISBN 9784797255423
- 高橋英治著『ドイツ会社法概説』(有斐閣 2012年) , ISBN 9784641048089
- キーワード
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- 第三者割当増資
- 会社法
- 新株引受権
- デラウェア州会社法
- ニューヨーク証券取引所
- 上場規則
- ドイツ株式法
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 学生
- 登録番号
- 1000140666