レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2023年4月6日
- 登録日時
- 2023/09/11 14:45
- 更新日時
- 2024/03/21 16:58
- 管理番号
- 吹-85-2023-002
- 質問
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解決
井於神社(いおじんじゃ)が掲載されている資料「延喜式(えんぎしき)」神名帳(じんみょうちょう)で、神社名の下に記入してある「鍬靱」とは何か。
- 回答
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「鍬靱」とは、農具の鍬(くわ)と武具の靱(うつぼ)である。
下記の資料を紹介した。
●神社について書いてあるもの
(1)『わがまち茨木 神社・仏閣編』(茨木市/[ほか]編集 茨木市 1989)p25
(2)『史跡 ぶらりみてある記』(茨木市市長公室広報公聴課/編 茨木市市長公室広報公聴課 1988)p29
●幣帛(へいはく)について書いてあるもの
(3)『事典神社の歴史と祭り』(岡田莊司/[ほか]編 吉川弘文館 2013.4)p3
(4)『神道いろは 神社とまつりの基礎知識』(神社本庁教学研究所/監修 神社新報社 2004.1)p36
(5)『神社の由来がわかる小事典』(三橋健/著 PHP研究所 2007.7)p59
●鍬靱について書いてあるもの
(6)『図説伊勢神宮』(松平乘昌/編 河出書房新社 2008.8)p16
(7)『シリーズ昔の農具 1 くわ・すき・田打車』(小川直之/監修 農山漁村文化協会 2013.2)p6
- 回答プロセス
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最初に井於神社がどこにあるのかを確認した。
インターネットで「井於神社」と検索したところ、神社の公式サイトがあった(最終確認2023.9.11)。井於は「いお」と読み、鎮座地は大阪府茨木市蔵垣内(おおさかふいばらきしくらかきうち)、JR京都線の千里丘駅(せんりおかえき)より徒歩6分とあった。千里丘図書館の近くだが所在地が茨木市であったため、吹田市立図書館に資料はあまりなかった。
当館の検索機で「茨木」「神社」のキーワードをかけあわせて検索してみると、回答欄(1)がヒットした。これは茨木市内にある神社仏閣を調査した資料で、p25に井於神社の所在地や祭神、創立、地図等が外観の写真とともに箇条書きの形で掲載されていた(こちらの資料では、神社名の読みが「いのへ」となっていた)。この資料の参考文献のページに回答欄(2)があったので茨木市立図書館より取り寄せてみたところ、p29に井於神社が地図とともに収録されており、由来等が詳しく載っていた。
次に本題の「延喜式」神名帳で井於神社の下に記入してある「鍬靱」とは何かを調べる。
まず神名帳について調べた。
『日本国語大辞典 第7巻 しゅんふ-せりお 第2版』(小学館国語辞典編集部 2001.7)p718によると、「神社とその祭神の名を記す帳簿。とくに「延喜神名式」(延喜神名帳)を指すことが多い。(中略)奈良時代以降、祈年祭に国家から幣帛(官幣・国幣)を受ける官社の国郡別の一覧表で、(中略)この神名帳に記載されている神社は「式内の社」とよばれ、それ以外の「式外(しきげ)の社」と区別された(以下、略)」とあった。
そこで、延喜式、式内社や祈年祭についてさらに確認した。
「延喜式」とは平安時代に書かれた法令集である(『延喜式』(虎尾俊哉/著 吉川弘文館 1978.6)はしがきp1に“『延喜式』は、十世紀のはじめごろに編纂された法典である。”の記述あり)。
「式内社」とは延喜式神名帳(延喜神名式)という神社一覧に記載されている神社。伊勢神宮の公式サイトによると、祈年祭は「春の耕作始めにあたり、五穀豊穣を祈るお祭りで、「としごいのまつり」とも呼ばれます。」とあり(最終確認2023.9.11)、「式内社」は朝廷や国から神様をまつるための幣帛(神様へのお供え物)を授けられた神社を指すことが分かった。
さらに神社関係の本を確認する。
回答欄(3)のp3に「延長五年(九二七)に完成した『延喜式』は、祭祀で使う品々を列挙し、筆頭に、神々への捧げ物「幣帛」をあげる。幣帛の内容は、織物の布帛類を基本とし、祈年祭・月次祭・鎮花祭・大忌祭・風神祭など重要な祭祀では、刀・弓矢、盾などの武器・武具類、農具の鍬、鉄素材、馬・馬具が加わる。」とあった。
『新漢語林 第2版』(鎌田正/[ほか]著 大修館書店 2011.4)によると、神社名の下に記入してある漢字は、「鍬」(くわ。農具の一種)p1480、「靱」(=靫。うつぼ、ゆぎ。矢入れ)p1545とあり、農具のくわと武具の靱であると判明した。
回答欄(4)p36には、御神前へのお供えに使用する祭器具として幣帛が紹介されている。
回答欄(5)p59には「神社(祭神)に格式が定められると、その社格に基づいて奉献する幣帛の品目や数量も異なってきた。『延喜式』「四時祭」にはそれらが詳しく規定されている。」とあった。
つまり幣帛として、鍬と、靱という矢を入れる容器が井於神社に贈られたということが分かった。
回答欄(6)p16には、伊勢神宮の神宝として納められた品の中に「靭」があり、写真つきで確認できた。また回答欄(7)p6に鍬の項目があった。
- 事前調査事項
- NDC
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- 神社.神職 (175)
- 日本史 (210)
- 日本 (291)
- 参考資料
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茨木市, 茨木市教育委員会 編 , 茨木市 , 茨木市教育委員会. わがまち茨木 神社・仏閣編. 茨木市, 1989.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001992971-00 - 茨木市市長公室広報公聴課/編. 史跡 ぶらりみてある記. 茨木市市長公室広報公聴課, 1988. p. 29
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岡田莊司, 笹生衛編 , 岡田, 荘司 , 笹生, 衛. 事典神社の歴史と祭り. 吉川弘文館, 2013.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I004884532-00 , ISBN 9784642080859 -
神社本庁教学研究所 監修 , 神社本庁. 神道いろは : 神社とまつりの基礎知識. 神社新報社, 2004.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007307277-00 , ISBN 4915265994 -
三橋健著 , 三橋, 健. 神社の由来がわかる小事典. PHP研究所, 2007. (PHP新書, 469)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I010376327-00 , ISBN 9784569693965 -
松平乘昌編 , 松平, 乘昌. 図説伊勢神宮. 河出書房新社, 2008. (ふくろうの本,)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I003963161-00 , ISBN 9784309761176 -
小川直之 監修 , こどもくらぶ 編 , 小川, 直之, 1953- , こどもくらぶ. シリーズ昔の農具 1. 農山漁村文化協会, 2013.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I024231601-00 , ISBN 9784540122477 -
日本国語大辞典第二版編集委員会, 小学館国語辞典編集部 編 , 小学館. 日本国語大辞典 第7巻 第2版. 小学館, 2001.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000002-I000003020831-00 , ISBN 4095210079 -
虎尾 俊哉/著 , 虎尾‖俊哉. 延喜式. 吉川弘文館, 1978. (日本歴史叢書 ; 8)
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000001-I005602971-00 -
鎌田正, 米山寅太郎著 , 鎌田, 正 , 米山, 寅太郎. 新漢語林 第2版. 大修館書店, 2011.
https://iss.ndl.go.jp/books/R100000096-I003581525-00 , ISBN 9784469031638
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茨木市, 茨木市教育委員会 編 , 茨木市 , 茨木市教育委員会. わがまち茨木 神社・仏閣編. 茨木市, 1989.
- キーワード
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- 井於神社(いおじんじゃ)
- 延喜式(えんぎしき)
- 神名帳
- 幣帛
- 祈年祭
- 官社
- 社格
- 式内社
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 事実調査
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000338469