レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年1月17日
- 登録日時
- 2021/01/17 16:58
- 更新日時
- 2023/11/04 11:38
- 管理番号
- 2908
- 質問
-
解決
ひらがなの「る」だけで春を表現した詩があるらしい。
作者は草野心平で、詩題は「春殖」だったと思う。
その詩を収録した資料を閲覧したい。
- 回答
-
『日本詩人全集 24 金子光晴 草野心平』(金子光晴/著、草野心平/著、安東次男/編、山本太郎/編 新潮社 1979年)、
『日本の詩歌 21 金子光晴.吉田一穂.村野四郎.草野心平』(金子光晴/ほか著 中央公論社 1968年)
ほか5冊を提供。
草野心平の詩集『第百階級』収録の詩「春殖」(旧題「生殖 Ⅰ」)で、
「るるるるるるるるるるるるるるるるるるるる」
と、ひらがな「る」のみで蛙の連なった卵や生殖の歓びの声などを表現している。
なお、「る」の字数は資料により異なる。
- 回答プロセス
-
『現代日本文学綜覧シリーズ 8-[1] 詩歌全集・作品名綜覧 上』(青山毅/編 日外アソシエーツ 1988年)で「春殖」を収録する全集を調査。
p.835より、『現代詩人全集 第5巻 現代 1』(金子光晴/ほか著 角川書店 1960年)等の5冊に収録されていることが分かる。
そのうち当館で所蔵していた以下の資料1~2を確認。いずれも「春殖」が掲載されていた。
草野心平の詩集『第百階級』に収録された、ひらがな「る」のみの詩である。
1.『日本詩人全集 24 金子光晴 草野心平』(金子光晴/著、草野心平/著、安東次男/編、山本太郎/編 新潮社 1979年)p.194
2.『日本の詩歌 21 金子光晴.吉田一穂.村野四郎.草野心平』(金子光晴/ほか著 中央公論社 1968年)p.296
さらに図書館システムでキーワード「草野心平」を検索して見つかった数十冊のうち、当該詩が収録されていると思われた数冊を確認。
資料3~7にも掲載されていた(ただし、資料3~5は詩題が「生殖 Ⅰ」となっている)。
3.『草野心平詩集』(草野心平/[著]、入沢康夫/編 岩波書店 1991年)p.48~49
4.『草野心平研究序説』(深沢忠孝/著 教育出版センター 1984年)p.189
5.『草野心平の世界』(大滝清雄/著 宝文館出版 1985年)p.58
6.『少年少女のための日本名詩選集 10 草野心平』(草野心平/[著]、萩原昌好/編 あすなろ書房 1986年)p.42~43
7.『日本語を味わう名詩入門 12 草野心平』(草野心平/[著]、萩原昌好/編、秦好史郎/画 あすなろ書房 2012年)p.26~27
また、詩について以下のことが分かった。
・最初の詩題は「生殖 Ⅰ」で、のちに「春殖」に改められた。(資料4)
・蛙の連なった卵(を産んでいく動作)(資料4~7)、一列に並んだおたまじゃくし(資料6,7)、蛙が生殖するときの歓びの声(資料4)、蛙の生殖による生命の弾力性(資料5)、蛙の生殖期(春~梅雨)のもの憂い暖かな外気(資料5)等、詩の解釈はさまざま。
・「る」の字数は版により異なる。作者は「一頁一行で多くはいる方がいい。」「ただしこの、る列が二行に亘っては絶対に困るのである。(略)まるっきり駄目になるからである。」と考えている。(資料4,5)
念のため各資料で「る」の数を確認すると、19字(資料5)、20字(資料3,4)、24字(資料1)、27字(資料6,7)、29字(資料2)と異なっていた。
質問者に確認したところ、この詩で間違いないとのこと。
資料1~7を提供した。
2023.8.16追記
国立国会図書館デジタルコレクション収録の以下の資料等からも「春殖」が閲覧できる。
『詩の本 第2巻』では「(「る」の字数が本によって異なることを)私はまるで気にとめない。本来ならば『る』が百でも二百でもずらっと一列に並んだ方がいいのだが、そんな大きな本はまずないから、一頁になるたけ多くの『る』が並べばいいことにしている。(略)多分出版社の校正のときに『る』はいくつが本当かという問いに対して、一頁一行で多くはいる方がいい、というアイマイな返事をするからによるのだろう。ただしこの、る列が二行に亘っては絶対に困るのである。二行に亘ってはまるっきり駄目になるからである。」等、草野氏自らが「春殖」について語っている。
・『詩の本 第2巻』(筑摩書房 1967年)89~90コマ ※図書館・個人送信限定
(https://dl.ndl.go.jp/pid/1344647 )
・『近代文学鑑賞講座 第20巻』(角川書店 1959年)110~111コマ ※同上
(https://dl.ndl.go.jp/pid/1344393 )
・『現代日本詩人全集(全詩集大成 第12巻)』(創元社 1954年)13コマ ※同上
(https://dl.ndl.go.jp/pid/1356373 )
インターネットのリンク確認日:2023年10月5日
- 事前調査事項
- NDC
-
- 詩歌 (911 10版)
- 参考資料
-
- 日本詩人全集 24 金子光晴 草野心平
- 日本の詩歌 21 金子光晴.吉田一穂.村野四郎.草野心平
- 草野心平詩集
- 草野心平研究序説
- 草野心平の世界
- 少年少女のための日本名詩選集 10 草野心平
- 日本語を味わう名詩入門 12 草野心平
- 日本文学綜覧シリーズ 8-[1] 詩歌全集・作品名綜覧 上
- キーワード
-
- 詩(日本)‐詩集
- 詩歌
- 春殖
- 生殖 Ⅰ
- 第百階級
- 草野 心平
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介
- 内容種別
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000292594