レファレンス事例詳細
- 事例作成日
- 2021年2月2日
- 登録日時
- 2021/03/16 15:35
- 更新日時
- 2021/09/18 11:45
- 管理番号
- 中央-1-0021475
- 質問
-
解決
「見損なう」という動詞の語義のうち、他者の評価を誤る、という用法について。
この用法は、それまでの低い評価が誤っていた→高く評価を改める、という意味で用いるのが正しいのか、それまでの高い評価が誤っていた→低く評価を改める、という意味で用いるのが正しいのか、それとも両方の意味で用いることができるのか知りたい。
- 回答
-
(1)大半の国語辞典には「評価をあやまる」と書かれており、それ以上の詳しい語義は説明されていない。
(2)(1)の国語辞典のうち、用例から「高い評価が誤っていた・低い評価が誤っていた」の両方の意味で使われると読み取れるものもある。
(3)「悪いものを、いいと見あやまる」とはっきり書かれている資料もある。
という結果になった。
- 回答プロセス
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「見損なう」について、複数の国語辞典で調べた。調査した資料とその説明文は以下の通りである。
・『広辞苑 [2] 第7版 た-ん』新村出/編 岩波書店 2018年
P.2812 2.評価をあやまる。
・『大辞泉 下巻 第2版 せ-ん』松村明/監修 小学館大辞泉編集部/編集 小学館 2012年
P.3487 2.評価をあやまる。
・『学研国語大辞典』金田一春彦/編 池田弥三郎/編 学研 1988年
P.1875 3.評価をあやまる。
・『日本国語大辞典 第12巻 第2版 ほうほ-もんけ』小学館国語辞典編集部/編集小学館 2001年
P.711 2.評価をあやまる。みそこねる。
・『大きな活字の新明解国語辞典 第7版』山田忠雄/[ほか]編 三省堂 2012年
P.1451 3.評価を誤る。
・『日本語大辞典 カラー版』講談社 1990年
P.1890 2.実力を見誤る。
・『大辞林 第4版』松村明/編 三省堂編修所/編 三省堂 2019年
P.2632 3.評価をあやまる。
このように、大半の国語辞典には「評価をあやまる」といった説明のみで、どのように評価を改めることなのかについての記述はなかった。
ただし、上記3番目の『学研国語大辞典』では、「評価をあやまる」の説明のあとに、以下の2つの用例が紹介されていた。
「それなのに、こんな、今夜のような情ねえ事をし出かしてくれる。先生、私は見損ないましたよ」(太宰治『ヴィヨンの妻』)
「へんな話だが、ぼくは君を見損なっていましたよ」と少してれくさげな表情でつぶやいた」(開高健『パニック』)
両方とも出典の小説を確認したところ、前後の文脈より、
前者は「高い評価が誤っていた→低く評価を改める」
後者は「低い評価が誤っていた→高く評価を改める」
という意味で使われているようだ。
このことから、『学研国語大辞典』では、意味としては「評価をあやまる」としか書かれていないが、両方の意味での使い方ができると考えられていることが読み取れる。
その一方、評価をどう改めることなのかについてはっきりとした説明がある辞典も一つ見つかった。
『三省堂国語辞典 第7版』見坊豪紀/[ほか]編 三省堂 2014年
P.1484 ③悪いものを、いいと見あやまる。「あいつを見損なったよ」
この辞典では「見損なう」について、「それまでの高い評価が誤っていて、評価を低いものに改める」ときに使う言葉だと説明している。
- 事前調査事項
- NDC
-
- 日本語 (810 10版)
- 参考資料
- キーワード
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- 見損なう
- 照会先
- 寄与者
- 備考
- 調査種別
- 文献紹介 事実調査
- 内容種別
- 言葉
- 質問者区分
- 社会人
- 登録番号
- 1000295283